第13話 朝明川合戦
確か史実では梅津城に立て籠もって、二週間弱で落としているのだったな。??? 所で梅津城ってどこだろう? まあ梅津城で戦わないといけないことは無かろう、第一負ける場所だ運気が悪い。
こちらは全軍合わせても頑張っても三千しか出せない、その上斎藤方は利国が先鋒としてまずくる五千くらい出して来るだろう。その後の斎藤妙椿が問題だねこいつが数万騎つれてくるというじゃないか。更に後詰として石丸利光が来るとなると気が遠くなるね。
こうなると兵は正道なんて言ってられないから奇策を繰り返して始末をつけるか、だが長野が呼びこんだとなると後方の安全の確保も難しくなるが、その辺は北畠に丸投げしてしまおう。
そうこう考えている間に小国虎義から話しかけられた、ちなみに父以来の重臣に虎を冠する人が多いのは父上の忠虎から名前をとっているからです。
「うむ、全員揃ったか」
そう言うと善斎御坊が
「何が揃ったかだ、そなたが唸っている間に一刻は待たされたぞ!」
「それは申し訳ないことをした、重要な事を思い出したので重臣達と御坊達に集まっていただいた」
「この面子ということは本当に当家の重大事なのだな」
集まっていただいたのは祖父様こと祥月入道忠永、一門の重鎮開源寺善斎、我が大叔父朝倉幽玄入道忠盛、とその嫡子芳菊丸、更に藤林長門守忠保に百地丹波守正西、更に小国虎義に佐藤虎政、更には
「儂はまだ謹慎期間なのですが」
「うっさい私が良いと言えばいいのだ」
桑山宗矩に私を加えた十人です。
「して何の集まりなので?」
「宗矩には胡蝶の夢の話をしていなかったか?」
「噂程度には」
「まあその辺は念入りに調べているだろうし敢えて言う必要は、芳菊丸が知らないか」
「まあ簡単に説明すると」
と簡単に説明すると
「なるほど殿は神に選ばれた人なのですね」
なぜそうなる
「まあ息子には後で伝えておきます」
「まあ空気が抜けて丁度いいわ。私もすっかり忘れていたのだが十月になると長野救援の為に斎藤利国が伊勢に攻めてくる。詳しい数は書かれている書物を見たことないが五千は出して来るとみていい」
「五千はちと厳しいですね」
「恥を我慢して領内を通行させては?」
「辞を低くし領内で略奪はしないと起請文に誓うのであれば通してもいい」
「兵力を考えると辞を低くするなどありえんじゃろうな」
「更に問題はその十日後に斎藤妙椿が数万騎で向かってきます。ついでに言いますとその更に後には石丸利光を大将とした後詰がくる。合計を考えれば二万以上だな」
「戦うのですか? 辞を低くし後日を待つという手もあると思いますが」
「それをやると伊勢統一が十年は遅くなる、やるぞ!」
「徳寿よ具体的にはどう戦うのだ」
「今回の我々が絶対的な優位な点が一つあります」
重臣たちが悩んでいる所に芳菊丸が
「敵が三隊に別れていることですね」
「流石は幽玄の嫡男よ勘所がよい、数万の敵と戦うと思うから勝ち目がないと落ち込むのだ、三千と五千なら勝てないことはない。しかもこちらは名将揃いぞ負けるなどあり得ん」
「策はお決まりなのですね」
「十面埋伏をやる。ははは、宗矩見本を見せてやる故学ぶがよい」
「ふぁふぁふぁ、しっかりと勉強させていただきましょう」
「地形はどこを」
「蒔田城の北東で
「正直反対したいですが、足軽大将はどうなされますか?」
「正面の百を私が直接率いて副将として清水守房をつける、他には左から順番に加藤清吉、石黒智安、小島棟員、速水吉光とする。今回は私が総指揮を執るゆえ虎義は埋伏の方に入れ」
「後二月ほどありますが?」
「地形を徹底的に調べろ。埋伏していたけど間に合いまえんでしたではすまさんぞ! それと惜しいが今年は刈り入れを急ぐようにいたせ」
「本来なら大豊作になりそうでしたが」
「敵にやる米などない!」
「刈り入れが終わり次第領民たちは私財をもち羽津に籠らせろ広さだけは自信のある城だから数万人収容できるぞ」
「他の豪族達には教えなくていいので?」
「近年来の拡張主義の影響で豪族共は当家に警戒しているからな。教えたところで無駄だが、妻の実家とかがあるなら知らせてもいいし羽津に匿ってもいいが、その際は丸腰になってもらうぞ」
「は、ありがとうございます」
「長門、火縄はもっと集まらんか?」
「丹波と共に里の物の尻を叩いてますが新規に出来た二百が限界です。これ以上やらせると鍛冶師が死んでしまいます」
「それについてなのだが、今すぐは無理だしそんなことやってる暇はないのだが火縄を部品に分けてそれを領内で作らせて出来た部品を藤林と百地の里で作るのはどうかね」
「まさに目の鱗がおちるようです。そのような画期的な方法があるとは、もっと早く教えて頂ければ」
「忍びが少量ずつ運ぶのではないのだぞ、関を倒さないと通してくれまい」
「関が邪魔ですな」
「関が死ねばいいというわけでもない、当家が亀山を取らねばいかんのだ」
「さっき言った工法は伊賀で試してみてくれ」
「御意!」
さてブロック工法の先駆けになるのかな、うまくいくといいね
遂に十月十一日に斎藤利国が伊勢に向けて出陣したという報が入った。取り敢えず当家の家臣には英気を取らせるとして忍び衆はこき使っていく。
「長門、丹波」
『は』
「斎藤側の動きが細かく知りたい、実際の兵力,士気はどれほどなのか、兵糧はどれだけ持ってきているのか、何でもいいから調べてくれ。それと伊勢に行くと無敗の羽津が手ぐすね引いて待ち受けていると噂を流せ」
「挑発になりますが大丈夫でしょうか」
「むしろ挑発して進軍を早めて、後に出陣する妙椿との距離を離したい。既に情報戦という名の戦が始まっていると思え、そしてそれを制するのが藤林家と百地家の力だ。期待している」
長門と丹波は歩きつつ先ほどの会話を思い出していた。
「若も持ち上げるのが上手くなったものだの」
「というよりそこまで全力を出さねば勝てぬ相手ということだろう」
「情報戦か確かに我らの得意分野だな」
「偽伝令で遅らせる経験はあるが、早めるとはな」
「急いで到着すればそれだけ兵馬は疲れるというのもあるのやもな」
「では急いで動くとするか」
「負けぬぞ!」
「こちらこそ!」
そして二人の忍びは姿を消していきました。
それから数日たった頃に茶の給仕に来た静が
「伊勢に入りました」
まずは頭を落ち着かせるために茶を飲みほしてから
「陣触をだせ! 敵は卑怯にも他国に攻め込んできた斎藤家だ。その傲慢な思い込みを叩き潰すぞ!」
そう言って一気に朝明川まで家臣の馬に相乗りさせてもらって向かった。こいつがわざとのんびりするせいで気勢がそがれたわ。気分は桶狭間に向かう信長の気分だったというのにのんびり進み寄ってからに、っということで到着したのは最後だったのでちょっと恥ずかしかったです。
「足軽隊長を集めよ」
顔と声をはっきり見て聞いて思い出したこいつ、当家で一番馬の扱いに長けてる使い番の稲葉景兼じゃん。お前なら私乗せても一番乗り出来たんじゃないん?
「重臣方から若は最後尾にしろと言われておりまして」
「ぐぬぬ」
「ははは、若お早いおつきでしたな」
と爽やかに笑ったのが速水吉光
「稲葉が悪い!」
「稲葉殿に文句を言われても仕様がないのでは?」
正論が好きなのが小島棟員
「若、我が娘はいかがですか?」
「女中見習いと会うことがあるわけなかろう」
自分の娘を私の側室に入れたがっているのが石黒智安
そして
「若様此度はお早い到着恐悦至極に存じます」
我が軍最強の武人加藤清吉
「なんか色々変だけどもういいや、私がそち達に求めるのは武功のみ、おおざっぱな修正はこちらでする故好きに戦え、だが敵はこちらの十倍はあり我らは背水の陣だ、怖気づいた者はおるか?」
「つまり十人倒せばいいんですね?」
「別に三十人倒してもいいんだぞ、数える必要もないくらい討ってしまえ」
「それならわかりやすいですじゃ、流石は殿様は頭がいいですな」
「これが我が軍最強の武人か」
「悔しければ清吉に勝ってみよ」
『よし、やるぞ、おお!』
「頃合いだな矢合からだな」
「先に軍使ですな」
「何を言おうというのか」
「我らは関家の要請に応じて参っただけで羽津家と戦う気などないのです」
「私の代わりに声の大きい物に答えさえろ、良いか私の言葉に従うのだ」
「ははは! 関の要請に応じただけだというのなら背後にある国人豪族の死体はなにか! 礼もなく義理も無く徳もなし、そのような者の言葉を聞くと思うなよ」
「ここまでの侮辱を受けたわ初めてだ、矢合はいい五百程度の敵なぞ踏みつぶしてしまえ」
「しかし作法が」
「そんなものどうでもいい、さっさと踏みつぶせ!」
「我らの方に斎藤勢が向かってきます」
「おや、矢合はしないのかな?」
「怒らせ過ぎたようですな」
「そうとう怒らせたようですね」
「そろそろ接敵するか足軽たちに槍衾を組ませろ」
「槍衾を組め! と言いますか弓も来ませんでしたな」
「あれだけ陣形乱れてたらな。仲間に当たりかねないし撃てないだろ」
「しかし敵の動きが悪いですな」
「一割程度の敵など適当に突撃すれば勝てるとでも思っているのかね。こんな頭の悪い奴に付き合ってやる通りはない。埋伏している部隊を突撃させろ」
「まだ嵌っていませんが」
「こんな頭の悪い戦術でじりじり戦力を削られる方が馬鹿らしい、一気に終わらせる。狼煙を上げさせろ」
「承知いたしました」
背水の陣に参加した将兵と埋伏していた各将の活躍もありあっさりと斎藤利国は側近連中を犠牲に逃げて行きました。ですが背後には斎藤妙椿率いる斎藤軍の本隊があり前哨戦にしかすぎません。
しっかし二万弱の敵ってどうやって倒すんだろう。また頭を抱える日々が始まります。
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