第15話 亀山城
まだ和平が成立していないこともあり多度山城の改修作業を家臣達と楽しくやっていました。妙椿を討ってから一月以上も経ってようやく使者がきた。
「羽津徳寿丸様にはご機嫌うるわしく」
「うるわしくないわ! 一体何ケ月待たせるつもりか」
「何分当家も混乱しておりまして」
「それは仕方ないわな、何しろ妙椿が死んだのだ混乱もするだろう」
「はい、妙椿殿達の首を速やかにお返しいただきありがとうございます」
「取っておいても邪魔になるだけだし」
「それで和平の条件ですが」
「今後十年間の美濃と伊勢の相互不可侵だ」
「相互不可侵でございますか」
「うむ、これ以上は認めん」
「分かりました誓詞に交わしましょう」
「出来れば成頼殿の署名も欲しいが」
「分かりました。それでは一旦美濃に戻り改めて戻ってまいります」
「こちらもそれでいい」
「それでは失礼いたします」
「条件は相互不可侵だけでよかったのですか?」
「どうせ十年ももたん、暫く多度山城や長島方面が静かならよい。来年こそは戦が無く内政に専念できる年になるといいな」
「そういう訳にはございませぬ」
「それでは困ります!」
と唐突に長門と丹波が現れた。
「若には亀山城を取っていただかなければ困ります」
「伊賀か」
「はい、その上で若のご考案の分担式工法を勧めていただ
かなければ」
「亀山か、取れるか?」
多度山城には清水守房を置き、築城中の長嶋城には桑山宗矩に入ってもらって中上城には岩成具永を入れ城主不在になってた桑名城には浦義光を入れて来年の年貢は減免とした。
そして本隊を二千として亀山城に向かったのだけど、そもそも二千で落とせる城なんだろうか。てか関氏って五万石はあるんだよね、そう考えると少なくとも三千以上、農兵達への動員を大きくかけていたら五千以上はいそう。無敗記録おわったかなー
「長門、唆されてのこのこやってきたが勝てんだろこれ」
「城攻めこそは忍びの本領が発揮される場、若に忍びの力を見せつけましょう」
「というか野戦になりそうな気もするが」
「野戦ならそれこそ若の得意分野でございましょう」
「まあやってみるか」
若は自身の才を未だにご存知ない、若自身は胡蝶の夢のお陰だと思っているようだが胡蝶の夢で見たのが名将の夢だったというのなら兎も角歴史を少しかじった程度だという。それならここまで勝ち続けるのは不可能だ。圧倒的な戦力差でも斎藤妙椿にあっさり勝ったのもまぐれだと思っているようだし、若には自信をもってもらいたいものだ。
「若」
「うん、関は加佐登か?」
「は、ご明察です」
「平野での戦いか小細工がしにくいな」
「勝機は?」
「長門が持ってきた戦だろうに、まあ勝つよ。 聞け! 関勢は加佐登で我らを待ち構えているとのことだ、数が多いにも関わらずに討ってくることもせず領内に閉じこもっているらしい。余程に私が怖いらしい」
そこで各所で笑いが起こりました。
「生を必するものは死し、死を必するものは生く、運は天にあり、鎧は胸にあり、手柄は足にあり。何時も敵を我が掌中に入れて合戦すべし。関を叩き潰せ!」
『おおお!』
「これで勝てるだろう」
「何か奇策はないので」
「長門は武士では無いからわからんかもしれんが、すでに勝っている、士気というのはそれほど重要なのだよ」
「それは知っていますが」
「頭で理解しているだけさ、さて加佐登に向かうぞ」
加佐登には長野勢五千がすでに陣を組み終わっていました。
「鶴翼かならば受けてたとう、虎義こちらは魚鱗だ」
「はは!」
「かかれ、一気に敵陣を貫くぞ!」
「この数を見ても魚鱗で来るか、余程に自信があるか馬鹿と見える」
「誠に」
士気を上げようと言ってみたがそれに対する阿諛追従も力がない、更には儂の手もかすかに震えている、こんな姿を見せるわけにはいかない故必死にこらえてはいるが、まさに歴戦の猛将に率いられた軍に見える。城を出たのは失敗だったかもしれない。
両軍がぶつかり合った当初は数の有利もあり関勢が優勢に見えたが士気が違い過ぎた上、最前線にいる加藤孝吉(最近は首狩り加藤の名前で恐れられている)の破壊力が凄まじく物理的に敵が飛んで行っている。
「長門」
「は」
「そなたは孝吉みたいなことできるか?」
「あれは人間業ではありません」
「なんなんだろうなあれ」
そうこう言っている間に加藤孝吉率いる前衛が敵の鶴翼の中心を突き抜けた。
「なるほど、若が言っていた意味がわかりましたぞ」
「分かってない、あれは孝吉が変なだけだ」
その後の論功で孝吉に
「古の猛将にもそなたの様なものはいなかっただろう。以後は羽津の飛将軍を名乗るがいい」
と言ったらまた泣いた。すぐ泣くー
「では城攻めだが頼っていいのだな? というか亀山を完全に抑えるには十二は城を落とさねばならないが」
「細工は流々仕上げを御覧じて下さいませ」
「まあいい、進むとするか」
「若は自分の名前の重さを分かっておりませぬ」
「うん?」
「若の名前と行動だけで落ちる城は多いということです」
「それなら楽でいいな」
「すでに神戸氏、鹿伏兎氏が降伏の意思を示しております」
「関の分家ばかりではないか」
「名を残したいのでしょう」
「関も降伏するなら、それでかまわないぞ」
「条件は?」
「当家への降伏だけだ」
「厳封はなしで?」
「うむ、北勢で思った以上に石高が稼げたしな」
「分かりました、接触してみます」
「降伏する気の家を利用しろ」
「はは!」
唐突に始まった中勢攻略もなんかあっさり終わりそうだね。北勢で残るは関の一部と神戸。中勢は長野工藤家と北畠の領地が残るくらいかな。これで伊賀までつながるのが大きいね。
取り敢えず軍を進めていたら周辺の国人と豪族がひっきりなしにくるね。やっぱり妙椿討伐を成したのが名を上げる結果になったのかな。応仁・文明の乱において和睦の反対派の大物だった妙椿が死んだことで和睦が早まる可能性があるかもしれないな。
一応幕府と朝廷に送り物はしているが感触は悪いんだよな、六角みたいに討伐対象になっている可能性があるのが怖いな。
討伐令が出れば美濃も不可侵を破棄しそうだし、そうなると美濃と尾張から攻められる長嶋が危険だな、宗矩と守房に城を堅固にするように伝えておかないとね。
伊賀の二木氏も来るだろうけどこれは雑魚なので気にしない。そうなると六角と北畠が最大の敵か、関達が裏切る可能性も十分あり得ることだしそっちに対する手当も長門達に命じておこう。
北畠はどっちにしろ潰すしまあいいや。六角がやっかいだなー。梅戸領を返せとかは言ってくるだろうしね。
「殿、お考えは終わりましたか?」
と虎義が聞いて来た
「当家の未来がまだまだ暗いことがはっきりした。来年はのんびり内政なんてしてる暇がないな」
「と仰いますと?」
「当家が討伐令の対象になる可能性がある。故に早めに北畠を潰す必要があるということだ。多度山と長島の築城を急がせろ。下手すれば援軍に行けない可能性もあるからな」
「尾張と美濃が敵になると?」
「なるだろうよ。ならないなら逆に北畠を倒した後に私が取りに行きたいところだ。濃尾平野は欲しいしな」
「ゆっくり休めるのはいつになるのでしょうね」
「自分の息子が楽をする為に今苦労をしているとでも思うのだな」
「なるほど、それならばやる気にはなりますか」
「そろそろ頃合いだ関に降伏勧告を出してみろ」
「受けますかね」
「受けないなら潰すまでだ」
「御意」
それから何度か使者を送ったが色よい返事が得られなかった。
「亀山を力攻めする」
「兵力的には我らと大差ありませんが」
「あのように旗色の悪い軍には負けん」
「大手門には孝吉を絡めて門には秀元を」
「は!」
流石に関氏の居城だけあり守りも硬い上に数で大きく勝っているわけではないから苦戦を強いられているが、こちらには伊賀の三上忍のうち二人が付いている。
「長門、丹波」
『はは!』
「火薬を使って城門と米蔵を爆破できんか?」
「試してみましょう」
「面白い策ですな」
それからしばらく、一番乗りをし、一番槍をし、一番首を上げるうちの飛将軍様の活躍の声を聞きながら待っていると城門と城内で巨大な爆発が起きました。
それに気を取られるものが多い中我が飛将軍はどんどん首を上げていきます
「味方の謀略だ気を取られるな、それより孝吉に後れを取るな!」
というとようやく味方が動き出し士気がどん底になっている敵兵をどんどん倒していきます。敵の指揮官は何しているんだ? っと思ったら孝吉に首を上げられてました。
もう一つ二つ策を弄しようかとも思いましたが、味方の士気が高いので止めておきました。
最後は関某の首を成田秀元が討ち取って見事勝利となりました。秀元も大概なんだけど孝吉に埋もれちゃってる感あるからその辺は気を遣わないといけないよね。
しかしこれまでの戦を考えて苦戦らしい苦戦をしたことがない。私自身もそうだけど我が軍も下手したら逆境に弱い可能性があるのが大変心配です。
でもあえて危険な状況を作る必要は無い上に危険な状況でも苦戦しないで勝ってしまうのでその辺を確かめられないのが怖いですね。
徳寿丸の心配はもっともであったが、いつも弱気な態度も見せずに堂々としている徳寿丸がいるので、何かあっても大丈夫だろうと家臣達が安心して戦えることで戦果を積み重ねていることは気付いていなかった。
これで亀山攻略終了です。伊賀との直接の連絡が出来るようになったので、三上忍最後の一人も動き出しそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます