第46話 高城の戦い

 弓倉孝行が高城を落としたとの伝令がきた、即座に北上をさせようとしたが、高城に留まるように命令を下した上で籠城するだけの必要物資を運び込むように命令を下し、日向を北上しようとしていた、神童孝守にも北上を停止し高城に入らせることにした。

 他の諸将には限界まで薩摩と大隅の攻略をするように命令を出し大友、大内、少弐の連合軍が集まるのをまった。


「殿、あらかた情報を集めてきました」

「長門かご苦労だったな」

「戦場はすでに決められたようで」

「後は敵が乗って来るかだな」

「連合軍としても殿を倒さなければ勝ち目はないとわかっているはずですから乗って来るでしょう」

「後は将兵を戻す機を間違えないことだな」

「己を囮にするのは出来れば止めていただきたいものですが」

「その為に高城に孝行と孝守を置いている」

「殿、悪報がございます」

「菊池が向こうについたか?」

「その通りですが、よくお分かりで」

「阿蘇に北肥後を安堵した時点でこうなるのは分かっていたからな、大人しくしていれば筑後は安堵してやったのに愚かなやつだ」

「阿蘇は使われるので?」

「領地を守っていればいい」

「一応そのように命令を出された方がよいかと」

「勝手に動くのか?」

「と言いますか、動かないとお叱りがあると思って当然かと」

「ならば動かなくていいことを伝えておくか」

「それがよろしいかと」



 それから数週間後、こちらの想定よりも圧倒的に早く、豊後府内に十一万の軍勢が集まり、南下を始めたと長門や阿蘇家から連絡があった。

 各地に諸将を送っているので、早々に攻略対象を落とし戻ってきた小国孝義と佐藤孝政が率いる一万と同じく早々に攻略を終えた八徳の石黒智安が率いる五千に親衛隊が一万五千に鉄砲足軽が五千の三万五千と、高城にて籠城態勢を整えている弓倉孝行と神童孝守率いる一万しかいない状態です。

 薩摩と大隅を攻略中の諸将に戻るように指示を出し帰還を待ちます。

 諸将を待つ間にも連合軍十一万が高城にとりついたとの報告がありましたが、この時点で斎木孝綱、中島孝久、高城孝康と稲葉景兼、加藤孝吉しか戻っていなかったので籠城軍にはもう少し頑張ってもらうことにしました。

 しかし十一倍の相手には衆寡敵せず籠城から二十日程で落城寸前になってしまいました。


「我慢も限界だ動くぞ!」

「まだ六万しかおりませんが」

「待っていたら、孝行と孝守が死んでしまうわ! 夜のうちに小丸川を渡り敵の背後に出る、敵を背水にして一気に壊滅させるぞ」

「おお!」


 夜になるのを待ち一気に小丸川を渡り敵の背後に回りこみ、そのまま夜襲を仕掛ける、竜騎兵と鉄砲隊で一斉射をして混乱に陥った所に、全軍突撃をすると城中からも呼応して孝行と孝守が打って出てきたため、敵の混乱は収束することなく加速していきます。


 大友親治が必死に混乱を収めようとしますが、逆に目立つことになってしまい。


「大友親治とみたその首、この斎木孝綱がいただく」

「くっ、貴様の様な小僧にくれてやるほど軽い首ではないわ」

「口ほどには腕は立たんようだな、覚悟しろ」


 孝綱の槍によって腹を貫かれてしまい隙だらけになった所を、孝綱の槍によって首を刎ねられました


「大友親治、斎木孝綱が討ち取った!」


 これにより戦況が決定的となり、討ち取られるものが続出し羽津勢の勝利が確定しました。

 死傷者の確認にあたっていた長門が戻ってきたため報告を聞くこととします。


「連合軍の死傷者は二万三千といったところですな」

「一度の夜襲でこの戦果はすごいな」

「小丸川に逃げて溺れた者も多かったようですな」

「連合軍の動きはどうだ?」

「敗残兵を纏めて逃げるようですな」

「逃げるというより一旦態勢を立て直すといったところか」

「しかし倍近い相手にこの勝利は素晴らしいですな」

「私自身を手薄にして連合軍を日向奥深くまで進行させて、一気に叩くという作戦だったが」

「思っていた以上に上手く行ってしまいましたか」

「そのせいで各地に散らせていた諸将の集合が間に合わなかったからな」

「間に合わなかった諸将にはお叱りになるので?」

「いや、今回は私の見積もりが甘かったから遅参に対する叱責はなしとする」

「今後のご予定は?」

「中途半端になっている薩摩と大隅に南肥後の制圧を勧めさせる」

「私はこれまで通り都於郡にて執務に当たる、孝行と孝守もこれまで通り高城で防備に当たらせろ」

「敗残兵は追わないのですか?」

「敗残兵と言っても、現在集合中の我々よりまだ数では上だからな」

「では、もう一度決戦が必要になりそうですな」

「野戦は望むところよ、すぐには動き出さないであろうが連合軍の動きには注意しておけ」

「はは」


 高城の戦いに間に合わなかった面々に此度の遅参に対する叱責はしない旨と引き続き各地の平定を勧めさせることにしました。


 高城の戦いに敗れた連合軍側は大友親治は討ち取られてしまったこともあり指導者層が少弐政資一人になったことで連合軍を統合して少弐家の物としていった、それによって少弐家は豊前、豊後、筑前、筑後、肥前の五洲を治めることに成功し少弐家史上最大の版図を築きあげることに成功した。


「といった具合に少弐家はその権勢を強めております」

「ふん、少弐政資を討てばいいということになっただけではないか」

「少弐政資は我が世の春を謳歌しているようです」

「私という敵がすぐ南にいるのだがな」

「油断しているようですが」

「あれだけの大敗をしておいて油断出来るとは、少弐政資の思考回路は余程幸せに出来ているのだろうな、取り敢えず動かなそうなのは分かった、そろそろ各地の制圧も終わりそうなのに邪魔をされたくはないからな」

「制圧を完成した後は」

「うむ、北上する、まあ集まってからだな」


 それから数週間後に薩摩、大隅、南肥後の制圧が完了し、分割していた軍が、都於郡に集まってきました、ちなみに古湊孝則が宗家を滅ぼし対馬を押さえた後に、壱岐を押さえて博多の港湾を封鎖しました、舟木孝永は種子島、屋久島を制圧し吐噶喇列島と奄美群島を押さえた上で琉球攻略に当たらせました。


 そして軍勢が集まると同時に北上を開始し日向の諸郡を制圧しながら進みました。


「殿」

「長門か、少弐政資は動いたか?」

「兵を集めている最中といったところですな」

「遅すぎないか?」

「やはり急に少弐家に取り込んだことで混乱が多少あるようです、それと博多が封鎖された影響で兵糧がたりていないようです」

「ふむ、ならば取り敢えず豊後の府内まで進んでみるか、長門は引き続き少弐家の動きを探ってくれ」

「畏まりました」


 少弐の動きが鈍いのは先月の敗戦も関係しているのだろうな、被害を受けた国人が多すぎて動員に応じるのに躊躇しているのだろうが、一度裏切った国人を許す気はない。

 

 進軍が進み制圧しつつ豊後の府内まで到着したが、少弐勢が未だにやってこない、長門の調べによると兵糧が集まらなくて動けないようだ、前回は十一万もの兵を出してしまったこともあり、兵糧が足りないのは仕方ない、更に孝則によって博多が封鎖されているため、博多から兵糧を調達することも出来ないというのが現在の状況。

 正直日本統一の最後の大戦になるのかと思っていただけに残念このうえない、そんなことを言うと怒られるので、取り敢えず豊後を制圧してから進撃を続けていくこととした。


「長門」

「はは」

「少弐はまだ動けないのか?」

「兵糧の問題だけでは無く、裏切りに怯えているようです」

「ふむ」

「国人衆も殿に降伏従っていますが」

「現在の少弐領のほとんどを七衆に預けるつもりなので国人などいらん」

「なるほど」

「今の悩みは筑後に行くか豊前にいくかだな」

「筑後に行くには道が山がちで動きにくいですな」

「では国東半島を通って豊前に出るか」

「それがよろしいかと」

「では豊前に向けて動く」


 豊後は山がちな地形が多い為、国東半島に迂回して豊前に入りました、豊前に入っても少弐家の抵抗はなく、何の抵抗も無く豊前の制圧が終わり、筑前に入りました。


「少弐はどうしている?」

「立花山城に籠っております」

「兵糧もないのにか?」

「討って出てくるかもしれません」

「それならそれで、わかりやすくていいが」

「それでは立花山に?」

「うむ、立花山に向かうぞ!」


 立花山に向かい九州最後の決戦に臨みます。

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