第40話 江戸移転
箱根で敗走した連合軍は信濃の小笠原氏と甲斐の武田氏に援軍を要請、更に関東全域から更なる徴兵を行い兵力だけを見ると再び二十万まで回復させていた、更に天然の要害である多摩川を利用すべく分倍河原に着陣していました。
「分倍河原で二十万か多摩川が邪魔だな」
「ここで時間を掛けると春の農事に差し障りがあります」
「攻めとった関東の城を維持するのは無理だな」
「箱根で完全に道が閉ざされますな」
「よし、引き上げるぞ! 遠、駿を取ったことを持って勝ちとする」
「は」
「はは、流石は成氏よ、よい粘り腰だったわ、戦術的勝利をいくら重ねても戦略的勝利を得られないという良い例になりそうな戦だったわ」
「殿、それでは敗戦したかのようでございます」
「それもそうだな、遠、駿を取ったことを持って勝ちとするのだったな、次は信濃と甲斐だな」
「引いたか、無理をするより来年を見据えたか」
「しかし来年にはまた来そうですが」
「関東には来ないだろう」
「としますと?」
「信濃と甲斐に向かうであろうな」
「三河、遠江、駿河に横やりを入れられないようにですか?」
「その上こちらに味方をしたからな、攻撃する理由はいくらでもある」
「取り敢えずは一段落だな、関東の奪われた城を奪還するぞ」
「はは」
二十万と言っても張り子の虎にしか過ぎない軍勢を率いていた成氏は緊張のあまり疲れ切ってしまい、判断力が落ちていたため、軍勢を解散してしまった。
羽津勢が戻って来る可能性なぞ考えてもいなかったのである。
箱根を越えたあたりで忠孝が軍を止めた、諸将が戸惑いつつ忠孝の元に集まると
「ここまでくれば油断しているはずだ反転して成氏勢を一気に叩き潰すぞ」
「来年の米はどうなりましょう」
「安い所から買えばいい」
「冬になれば箱根が封じられますが」
「船で必要な物を運ばせる、いくぞ!」
『はは!』
不幸にも城を奪還した城主達が最初に忠孝達に踏みつぶされることになっていった。
援軍要請など出す暇も無く、取り返したばかりなので防備も無かった為、一日も持ちこたえられず落城していった。
そして羽津勢はそのままの勢いで多摩川を越えて江戸城を攻撃し、数日のうちに落城させた。
江戸城を物資集積地として使い一万の兵を守備兵を置いておくことにしました。
その後は放射線状に城を落としていき古河を目前としたところで和平の使者が来ました。
「さて何を言ってくるか」
「古河公方家にて奏者を務めております簗田持助と申します」
「うむ、羽津忠孝だ」
「この度は両家の和平について話に来ました」
「だめだな」
「は?」
「降伏なら話を聞くだけ聞いてやろうとも思ったが、和平などありえん、そもそも享徳の乱をおこし民を疲弊させた成氏と和平を結ぶ気はない」
「では、どうしろと」
「足利は族滅する、乱を拡大させた梁田も殺す、以上だ」
「和平どころか、降伏も許さぬと」
「そもそも信用できん、降伏してもまた反乱を起こすであろう? 鎌倉公方とはそんな家だ、ならば後顧の憂いを断つために滅ぼしておくのが一番ではないか、道灌は潔かったぞ、潔く腹を切れば梁田の族滅は避けてやろう」
「くっ、公方様はお助け下さいませんので?」
「無理だな、謀反癖のある一族などいらん」
「お子様達だけでも」
「くどい、足利は族滅だ、そういえば伊豆にいた堀越公方を名乗る者達も族滅しておいたぞ、足利は例外はないということだ、これ以上話すことはあるまい、成氏に死の覚悟をさせておくんだな、義政の様な見苦しい死に方をされるとこちらも萎える」
「何卒、何卒」
「お客がお帰りだお連れせよ」
馬鹿を追い返した後に古河御所を包囲しました、古河公方の居城とはいえ御所なので守りは堅くありません。
「力攻めで一気に落とせ!」
『おお!』
力攻めで攻めた結果早々に落城し、足利成氏とその一族を捕らえることに成功しました。
「くっ、さっさと斬れ」
「そうさせてもらおう」
「全員斬り捨てろ」
「は!」
「後は関東管領だな」
「討ちますか?」
「討つ」
「了解しました」
「平井城に向かえ」
平井城に到着しましたが守りの準備も出来ておらず、あっさりと落城しました。
「私は手勢を率いて江戸に入る、虎義らは戻り農兵達を解散させよ、まだ農作業にまにあうであろう」
「畏まりました」
「しばらくは江戸にいるつもりだ、御坊と幽玄のどちらかをこちらに寄越せ」
「は」
「では解散だ」
「殿拠点を江戸に移されるので?」
「関東が治まってないからな、暫くは関東で内治に励む」
十二歳になり、暫くして幽玄が江戸城に来たので本格的に内務に励みます。
「ふむ」
「どうしましたか?」
「やはり川が問題だな」
「治水ということですか?」
「江戸を本拠にしようかと思うのだが水利が悪すぎる」
「川を動かすと」
「うむ、川を動かして江戸を大都市にする」
「となると残った関東諸侯を叩く必要がありますね」
「それが面倒じゃ」
「数が多いですからね」
「八徳に討伐に行かせているが時間が掛かっているな」
「稲刈りが終わったら動員をかけるので?」
「うむ、信濃と甲斐を取らせる」
「関東は」
「八徳に任せる」
「時間がかかりますぞ」
「構わんさ早すぎても、正直手が回らん」
「それはありますな」
会話はしつつも手は止めずに膨大な書類を処理していく。
「桜は元気であろうか?」
「殿に会えなくて寂しくしております」
「そうか」
「嬉しそうですな」
「気にしないでいるよりは嬉しいだろう」
「そうでしょうな」
「ところで」
「はい」
「何故いる、長門」
「殿の護衛として」
「伊賀太守の仕事はどうした」
「倅に」
「まあよい」
「桜殿をこちらに呼びますか?」
「いや、関東はまだ治まっていない呼ぶわけにはいかん」
「さようですか」
学院を卒業した文官と武官が新規雇用の足軽と共に江戸城にやってきた、早速文官たちを使い利根川や荒川の付け替え普請をやらせ関東各地に運河や堤防を作る作業を行わせた、更に武官と足軽を八徳に付けて残る関東の諸大名を討伐させた。
江戸の開発を進めていると古湊虎則がアンカレジ城が出来上がったと報告してきた。
「ご苦労であった、大変だろうが続いてパナマを頼む」
「お任せあれ」
これでアラスカ支配への第一歩が進んだ、後はフェアバンクスを作りポゴ鉱山の開削か、冬の開削は死と隣り合わせなので夏だけになりそうだな、十年以上かかりそうだ。
可愛そうだが奉公衆を一人送るとするとしようか、だれをおくるかな。
「アラスカに奉公衆から一人送りたい、辛い仕事も真面目にこなし横領などもしないのは誰だ?」
「そういう条件であれば高島勝恭がよろしいかと」
「分かった、高島勝恭を呼べ」
と言っても津ではないのですぐに来るのは不可能なので数週間後に到着しました。
「遅ればせながら高島勝恭参りました」
「津とは違い遠い上に馬車軌道も繋がっていないから時間が掛かるのはしょうがない、気にするな」
「はは、ありがとうございます」
「これから命じるのは辛く苦しい命令じゃ断ってくれても構わん」
「何なりと」
「うむ、アラスカはわかるな?」
「殿が見つけられた新大陸ですな」
「まあ、見つけたわけではないが、それはいい、そこには金銀が眠る鉱山が眠っている」
「はい」
「アンカレジという場所に港と城を作らせた」
「つまり鉱山を開削するということですな」
「そうなのだが、簡単な事では無くてな」
「遠いのですか?」
「それもあるのだが周辺が富士の山より高い山に囲まれている上にとても気温が低い場所なのだ、作業が出来るのが夏だけかもしれないな」
「それは時間がかかりそうですな」
「それで実直なそなたに頼みたいのだが、どうか?」
「命とあらば、どこで何でもしましょう」
「それでは頼んだぞ」
三隻のガレオン船に五千人以上の人夫を率いてアラスカに向け高島勝恭は旅立って行きました。
それと同時期に最後まで抵抗していた佐竹家が滅びて関東を掃除することに成功しました。
それと同時に関東で不必要な城を破却していきました、八徳や親衛隊などの領地は一時的に駿河として甲斐や信濃、会津等が取れたら関東を囲むように移していこうと思います。
江戸城も未来人の記憶に残っている以上の大きさに作り始めました、完成は五年後くらいですかね。
それ以外には桜と母上と姉妹と御坊を津から呼び寄せました。姉上は孝盛との祝言が来年に迫っているので新居城から送り出すために呼び寄せました、妹は長門の曾孫と結婚することが決まっていますので、姉上の後になります。
私は桜が来たのでいちゃいちゃしながら政務にも励んでいます。
「次は何処を狙うのだ?」
「まずは信濃と甲斐ですね」
「それは分かっておる」
「その次は越後です、私の手勢と越中と能登の軍勢で攻め込みます」
「その次は?」
「会津ですね」
「その次は?」
「だあ、しつこいですね、奥州をまず制覇しますよ」
「ふむ」
「関東に諸将を配置した方がいいのでは?」
「関東は一円羽津領とする」
「なるほどな」
「越後には一国は朝倉にやる、佐渡はやらんがな」
「大幅な加増ですな」
「今後は加増が有っても越中くらいだと思っておけ」
「越中も加えると百万石を越えますが」
「七衆の筆頭なのだからそれでよかろう」
「藤林家は不満に思いませんか?」
「藤林には伊勢をやる」
「伊勢を、よろしいのですか」
「構わんよ、伊勢くらいくれてやるさ」
そろそろ天下を取った後の諸将の配置を考える時期に迫ってきました。
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