第41話 甲信越制覇
財政に大分余裕ができてきたため、銭で雇う兵を増やしました。
親衛隊が一万、八徳衆が四千を八隊、これが全員竜騎兵なのでそれを補助する足軽が五万で私が単独で動かせる兵が九万強になりました。
更に破却していない関東の要地にある城にも各五千程入れました。
兵力の増強と同時に訓練をしないといけませんのでしばらくは動けそうにありませんね。
そんな中舟木虎永が帰還しました。
「久しいな虎永」
「はは、久しぶりにお顔を拝見出来て嬉しく思います」
「こちらでも戦続きだったからな」
「砲艦外交の結果サライゴメス島まで占領することに成功しました」
「では次はポトシ銀山を狙う為にアントファガスタに港と城を作り上げろ」
「はは」
「暫く休んだ上で必要な資材を持ち出立せよ」
「ありがたく」
「うむ、ご苦労だったな、下がって良いぞ」
「はは」
「このままいけば十年以内にポトシとポゴが手に入りそうだな」
「鉱山に財政を依存するのはよろしくは無いですが政権が安定するまではよろしいでしょう」
「その為には関東の開発が不可欠だな、川の付け替えや治水を急いだうえで丁寧にせねばならん」
「しかし江戸は水利があまりよくないぞ」
「上水の整備が必要でしょうな、街が出来ていないうちに上水の整備もしてしまう方がいいでしょう」
「江戸の六上水というのが未来知識ではありますね」
「では六つも上水を作るのか?」
「しかし使われたのは神田上水と玉川上水だけですね」
「他が使われなかった理由は何故でしょう」
「費用対効果が悪かったようだな」
「なるほどな、それでは神田と玉川だけ取り敢えず作れば良かろう、不足したら新たに作ればよい」
「では文官に命じて置きます」
「うむ、頼んだぞ」
執務をしつつ桜と遊びながら暫く過ごしていたら、刈り入れの季節も終わりました。
「よし、伊勢、美濃、尾張、飛騨、三河、遠江、駿河に陣触を出せ、遠江と駿河は駿府で合流した後に甲斐に向かえ、他の部隊は岩村で合流して信濃に入れ!」
「承知いたしました」
「私の部隊と七徳衆は三国峠を越えて越後に入るぞ」
「忠孝」
「なんです? 御坊」
「奥州の諸大名が同盟を結んだそうだ」
「ふむ、越後に攻めるのは私の部隊だけにする、七徳衆は江戸に詰めて奥州勢を睨んでおけ」
「兵力が大分減るがよいのか?」
「越後だけなら問題はないが、念のために越中勢と能登勢を越後にむかわせよう」
「では、出陣する」
三国峠を越えて坂戸城に迫った所に上杉房定自身が越後の国人衆を率いて二万弱の兵力で待ち受けていました、羽津勢五万対上杉勢二万の戦いが始まります。
親衛隊長六郷虎恭と相談をします。
「戦力では勝ってはいるが大軍を展開しにくいな」
「削り合いをしますか?」
「せっかく鍛えた兵を無駄に死なせたくはないな」
「取り敢えず睨み合いますか、越中と能登勢が動けば向こうもにも動きがでましょう」
「地形もわからん場所で動き回りたくないしな、暫くは睨み合うとするか、驟雨でも降ればいいのだが」
睨み合いを続けて十日余りで上杉勢に動揺が見られた、越中・能登勢が恐らく越後に入った影響かな?
それから数日たっても動揺が収まっていない状況で驟雨が降ってきました。
「驟雨がきた」
「攻めますか」
「当然だ、驟雨に駆けろ、一気にいくぞ」
「この驟雨が好機です、今のうちに後退するべきです」
「しかし眼前の羽津勢はどうするのだ」
「坂戸城に任せればよろしい、それよりも春日山を抜かれた一気に抜かれていきますぞ」
「お待ちを坂戸城だけで羽津勢を止められませぬ」
「ではどうするというのだ!」
「敵襲! 敵襲!」
「なんだと!」
「迂闊なり上杉」
「殿お下がりを」
「私が下がるのではなくそなたらが前に行けばいい」
「くっ、親衛隊前進だ」
「一気に乗り崩せ!」
「おお!」
「御屋形様ここはもうだめです、撤退を」
「撤退されたら坂戸城はどうなる、踏み止まっていただきたい」
「無茶を言うなもう我が陣は壊滅しているのだぞ、御屋形様の無事が第一だ」
「くっ」
「退却するぞ、儂の護衛をつけろ」
「退却だ!」
「うむ? 上杉房定逃げたか」
「どうしますか」
「坂戸を落とす」
「承知いたしました」
「房定め、取り逃したわ」
「城を落としながら追っていきましょう」
「そうだな、越後は広い、まだ入ったばかりだからな」
「さっさと落としてしまいましょう」
「うむ」
越中から侵攻した部隊勝山城、金山城を落とし現在は春日山城を包囲していたため、上杉房定は中越まで敗走していった。
坂戸城は数日で落城して城主は切腹して開城しました、その後は部隊を三つにわけて進軍して笹沢、浦佐、大井田を落城させ、そのまま北条城と琵琶島城を攻略、さくさくと攻略することに成功していったのですが、正直城攻めばかりで飽きた、野戦をやりたいな。
「何なのだあの勢いは、このままだと退却する城も無くなってしまうぞ」
「流石は常勝不敗の名将といったところですな」
「敵を褒めてなんとする、このままでは滅亡だぞ」
「降伏されてはいかがですか?」
「降伏だと?」
「越後は無理としても、それなりに遇してもらえるのではないでしょうか」
「ふむ、では重景出来るだけいい条件を引き出してまいれ」
「はは」
「あぁ、城攻めは退屈じゃのう、今なら城門を落とせるぞ」
「殿もっとやる気を」
「きちんと指揮はとっているであろう」
「確かに見事な指揮ではありますが」
「上杉家の長尾重景殿が降伏の使者として参りました」
「ふむ、会うとしよう」
「越後上杉家の長尾重景と申します」
「羽津忠孝だ」
「これ以上の交戦は難しく降伏したく存じます」
「転封が条件になるが?」
「構いませぬ」
「では能登一国とする」
「畏まりました」
「すぐに引っ越しの準備をするように」
「はは」
「下がってよい」
「能登一国も与えてよろしかったのですか?」
「構わん、能登に知行を与えている者を加増転封させよ」
「どちらにしますか」
「南信濃でよかろう、北は使うからだめじゃ」
「畏まりました」
「越中勢は越後北部に赴き奥州勢に備えよ、能登勢は解散し急ぎ引っ越しの準備をさせよ」
「分かりました」
「我々は一度江戸に戻る」
「は」
私が越後で戦っている間に甲斐では果敢に野戦を挑んできましたが粉砕し甲斐武田家は滅亡しました、御旗・楯無は若狭武田家に下賜しました。
同時期に信濃に攻め込んだ部隊は塩尻峠で小笠原勢を壊走させたことで抵抗力を無くさせ一気に部隊を分け各城を落とし小笠原長朝が腹を切り信濃小笠原氏は滅亡しました。
江戸に帰還した私は桜といちゃいちゃしつつ数日間の休日を楽しみつつと兵糧等の準備をして会津に向けて八徳衆も加えて出撃しました。
「羽津が動いただと」
「はい九万の兵だそうです」
「九万だと、同盟国に兵を出してもらうように使いをだせ」
「はい」
「さてと、暫くは宇都宮で待機だ」
「今なら集まる前の敵を攻撃できるのでは?」
「確かに出来るが壊滅させる前に後方から敵が来たらどうする?」
「なるほど」
「ということで、暫く待機だ」
「羽津は宇都宮で待機中だと?」
「こちらが集まるのを待っているのでは」
「舐めおって」
「不敗の将ですからね」
「こちらから打って出るか」
「お味方が集まるまでお待ちを!」
きっと、こういった感じなんだろうな、こちらとしては単純に一回の戦いで決定的な勝利を得たいだけなんだよな、ああそれが舐めてるっていうのか、しかし横槍を入れられる可能性がある以上敵が集まり切ってから戦いたいというのが本当のところなんだよね。
「殿、ある程度の敵が集まりました」
「集まった敵は?」
「多いですが、読み上げますか?」
「大物だけでいい」
「葦名、伊達、最上、大崎、葛西、斯波、大宝寺、相馬、二本松、田村、二階堂、戸沢、南部、安東、浪岡」
「もうよい、それで戦力はどの程度だ?」
「二十万以上かと」
「丁度いい兵力差だな」
「殿にとってはそうでしょうね」
「さてそれでは向かうか」
「どこで戦われるのですか?」
「それは相手次第よ、我々は白川から順に攻めていく、その途上に敵軍が現れれば討ち取るのみ」
「畏まりました」
「出陣だ!」
『おお!』
「羽津勢が白川城に攻め込んだようだな」
「このままでは我が居城が落とされてしまう、連合軍を動かして下され」
「しかし羽津による誘い込みの可能性もある、迂闊にうごくのはいかがなものか」
「それでは我が城が落ちてしまいます」
羽津を恐れるあまりに連合軍を集めたは良いが、明確な盟主がいなかった為動けなかった。
「攻めてきませんね」
「長門に調べさせたが盟主が定まっていないらしい、細川や畠山の時とおなじじゃな」
「それでよくも我らと戦おうと思ったものですな」
「盟主になると最終的な責任者になるからな、降伏しても切腹は免れなくなる、それを恐れているのさ」
「情けないものです」
「そう言ってやるな、一歩間違えれば家が無くなってしまうのだ慎重にもなるだろうよ、だが、流石に黒川城に近づけば覚悟も決まるだろうよ」
「だから街道沿いに攻めているのですね」
「声が小さい大名たちの城だ、出てくるのを恐れるだろう」
「越中勢が暇そうですな」
「うむ越中勢に大宝寺領に攻め込ませてみるか」
「揺さぶるのですね」
「どう動くか楽しみだ」
「越後にいた部隊が儂の領土に攻め込んでいる、兵を出してほしい」
「しかし忠孝の本隊がすぐそばにいるのだ、動かすわけにはいかん」
揺さぶり策は成功し、連合軍の結束にも罅が入ってきています、後は仕上げるのみです。
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