第38話 大筒
高屋城は大した城では無いですが、道明寺の戦いで敗走した畠山、細川、本願寺の勢力が籠っているだけに城内には三万から四万が籠っているようです、ちなみにそれ以外の四万程の敵は討ち死にしたか逃げ出したかのどちらかになります。
「評定を始める」
「殿、敵の数が多すぎます、力攻めは避け包囲一択です」
「付城を作ってはいかがか?」
色々意見が出る中私は
「長門」
「は」
「ガレオン船に搭載予定の大筒を二十門もってまいれ」
「大筒で城を落とすのですな」
「今後の城作りの参考にもなるだろう、大筒の力をよく見ておくがいい」
「はは」
「大筒が届くまでは時間が掛かる、それまでは、普通に火矢を使い火攻めだ」
それから十日程火矢による火攻めを行いましたが守兵が多いこともあり効果がありませんでした、そこにガレオン船に搭載する予定であった施条式大筒が到着しました。
「撃て」
私のその声と共に雷鳴の如き発射音が響き渡り高屋城を突き破っていきました。
「ちと近すぎたか」
「なんでございましょうか?」
「ちと近かったかというておる!」
「千歳誓いあったでございますか?」
「誰じゃ千歳」
あまりに近くで発射したため耳が正常になるまで暫くかかりました。
「近くで撃ち過ぎたので砲弾が城を突き抜けてしもうた、少し陣を下げてもう少し斜め上に向かって撃ってみよう」
「またあの轟音をきくのですか?」
「私も詳しくないが耳を塞いで口を開けるといいらしいぞ」
「では二射目じゃ、撃て」
私も耳を塞ぎ口を開けた状態にしましたところ先ほどよりは衝撃が和らいだ気がします。
今度は曲線を描き高屋城の本丸に突き刺さりました。
「おお、うまくいったの」
「綺麗に落ちましたな」
「高屋城から逃げ出そうとする者が出てくるはずだそこを狙い火縄と弓で狙い撃つぞ」
「はは」
「これは一体何なのだ」
「義豊様、義豊様」
「声を掛けても無駄に決まってるだろう、あの大きな鉄の球に頭が潰されたのだ」
「成之様どうなさりますか」
「城に籠っても無駄だ、逃げるぞ」
「はは」
「畠山や、本願寺には気付かれないようにせよ」
「はは」
「こんな戦に付き合ってはいらねぬわ」
「準備ができました」
「よし、逃げるぞ」
夜になり細川成之率いる阿波細川家は退却をしようとしたところ、激しい銃撃に合い体に数か所の銃創を浴び命を落としました。
「伊賀と甲賀がいる当家の裏を掛けるとでも思っているのか」
「ありがたく」
「褒めていない、これくらいの事は出来るという事実を言っているだけだ」
「成之どうしますか?」
「放っておけ」
「家臣が回収に来たらどうしますか?」
「そのものの忠に免じて見逃してやろう」
「承知いたしました」
「翌朝になったら再び砲撃を開始する」
「もう力攻めでも落ちるのでは?」
「本願寺がいるからな、念のためだ」
「承知」
「実如を捕らえた者若しくは首を落とした者には一万石の報酬を与える」
「伝えておきまする」
「うむ」
畠山義豊と細川成之が死に、残っている大物は本願寺実如だけという状態にまで追い詰めた、これで畠山の直系は絶えたことになり、もはや大した抵抗もできまい、細川は未だに誰が京兆家の当主になるかで纏っていない、明日に再び大筒による攻撃をして、明後日に強攻をかけて一気に本願寺実如の首を上げて本願寺を壊滅させるかな。
翌日も、激しく砲撃を加え城門も砕け散り城壁にも穴が開いている状況になりました。
その翌日に強攻を掛けたところあっさりと落とせました。
「大筒恐るべきだな」
「まことに」
「ガレオン船とフリゲート船を何隻か堺に移動させておけ」
「脅しに使われるので?」
「まさか、滅ぼすのに使うのよ」
「御意」
「実如の首は?」
「これに」
「ふむ、適当な墓地にでもいれておけ」
「承知いたしました」
「これで本願寺の抵抗がやむか、それとも強くなるか、どちらかな」
「蓮如、実如と連続して法主を殺されています、より強い抵抗を見せるかもしれません」
「腐れ坊主共め平和の為に協力しようと思わんのか、まあ坊主共は今はいい、軍を分けるぞ」
「は」
「摂津に四万、和泉に三万、紀伊に三万だ私は和泉に行く、それぞれ励め」
「はは!」
細川方の城を大筒を使い落としつつ、のんびり堺に向かっています。
我が艦隊が堺を閉鎖する間を狙って堺に行くつもりです。さてさて堺の人々はどう出るのか今から楽しみですね。
最初は羽津家の脅しを鼻で笑っていた、細川と畠山が連合を組めば無位無官の田舎者に負けるわけがないとおもっていたからだ、だが野戦であっさりと連合軍が敗れたと聞き会合衆も焦り始めた、中には素早く羽津家に献金しようとするものもいたが、羽津家の要求が会合衆の解散及び自治権のはく奪なのだから妥協点を見出すことも出来なかった。
それでもどこか奢っていたのであろう、自分たちは津島とは違う、日本一の商業港を津島の様な扱いはしないだろうと、その思いが変わったのは堺の港を埋め尽くすほどの羽津の家紋である丸に違い鷹の羽を付けた巨大な船達が堺に入港しようとしている船を手当たり次第に攻撃し始めた頃から、自分たちは特別ではないのだと気付かされたのだ。
海には羽津の大艦隊、陸からは三万の大軍に迫られて、堺は会合衆の解散と自治権を放棄し羽津家に仕えることにしました。
その時代表として羽津様にご挨拶に行った時に羽津様は
「なんだ、つまらんな」
とおっしゃった、つまり我らを脅すために艦隊でも兵達でもなく実際に我らを焼くために集めた兵力だとわかり恐怖に震えました。
なんか震えてるけど堺についてはこれで終わりだな、奉公衆を誰か代官として置いておけばいいだろう、続けて攻めるは岸和田城だが、ここは海から近いので折角集めた艦隊と利用しようと艦隊で攻撃したら簡単に落ちた。
艦隊には熊野水軍を滅ぼさせた後に帰還させた。
その後摂津と紀伊も制圧が終わったので今回の遠征は終わりにして羽津までいき解散した。
「これで、摂津、河内、和泉、紀伊、大和、伊賀、近江、伊勢、志摩、尾張、美濃、三河、越前、加賀、能登、越中、飛騨の十七国の太守か、たいしたもんじゃ」
「後五十一州もあるのか」
「それと悪い知らせ、いやそなたにはいい知らせかな」
「なんでしょう」
「古河公方と関東管領側和睦をしたようじゃ」
「なるほど対羽津ということですな」
「更に遠江の斯波と駿河の今川も同盟に参加するようじゃな」
「次の稲狩りが終わったら諸将の首も狩りに行くと羽津が言っていたと流してくれ、そうすれば受け身になって稲刈りまりまで待つ可能性がありそうじゃ」
「ありそうではあるが、敵の兵も増えそうではあるぞ」
「いくらいても構わん、打ち破るまでだ」
「奢っておるのではないか?」
「むしろこれでも控えめなくらいですね、長門」
「は」
「噂を流しておいてくれ稲狩りが終わったら、遠江に出陣するつもりだと」
「分かりました」
「私の計算通りいけば、敵を壊滅出来るはず」
「自信がおありで」
「うむ、あそこにはいい地形があるのでな」
「では流言を流してまいります」
「基本は敵が集まる前に各個撃破なのだがな」
「それぐらいは存じておりますが、纏めてしまった方が楽な場合もあるのですよ」
「まあ、無敗のそなたが言うのであればそうなのだろうがな」
そうして御坊や幽玄(忠盛隠居して入道した名前)と共に内務に励みつつ桜といちゃいちゃしていたり舟木虎永からの進捗をきいていたりしたら十一歳になりました。
「暇じゃ」
「桜姫の事も含めて、毎日忙しくすごしているではないか」
「幽玄、越前はどんな感じじゃ」
「内政的には安定していますね」
「よし、若狭に攻める」
「また、唐突に」
「今回は私の部隊と朝倉家だけでいく、中々孝盛に会う機会もないしな」
「それでは合せて四万といったところか」
「うむ」
「若狭などそれだけあれば簡単に落ちよう、念の為にフリゲート船を敦賀に回しておいてくれ」
「分かりました」
「うむ、陣触をだせ!」
陣触の太鼓の音を聞くや、さえない顔から一変して戦人の顔に変わり槍だけを持ち鎧も身に着けずに素早く城内に飛び込んでいく人間が十人いた、八徳の石黒智安、小島棟員、速水吉光、稲葉景兼、菅谷義継、成田秀元、日高広胤そして加藤孝吉と鉄砲頭新井田大介、親衛隊の六郷虎恭の十人の頭にあるのは陣触が鳴ったらまずは城に行くであり、その辺が来るのが遅い連中との将としての質の差なのかもしれない。
「流石に八徳や親衛隊長や鉄砲頭は来るのが早いな、ああいいうのを見ると気分も上がるな」
「そういうものなのか?」
「そりゃああいう姿勢を見ると全てを投げうって働いてくれそうだと思うものよ、そしてそういう人間に仕事を任せたいと思う」
「確かに分からないでは無いですな」
「そしてそういうもの程期待に応えてくれるというものだ」
「八徳はなるべくしてなったということですな」
「日頃の仕事への取り組みこそが彼らを引き上げた要因よ、相変わらず領地はみてないようだが」
「それはよろしいので?」
「親族などに押し付けてしまうのもやり方よ、特に彼らは自分に掛けられている期待が領地経営では無いことを分かっているからな」
「万石以上の領地持ちがそれでいいのでしょうか」
「より重要な仕事というものがあるという事さ、さて流石は我が精鋭、話している間に集まってきたな」
「確かに早いですな」
「では、私は戦に行ってまいるので、後は頼みます」
「うむ」
「お気をつけて」
忠孝がいなくなった執務室で
「正直戦に行くが、遊びに行くに聞こえました」
「幼少から戦に馴染んでしまいすぎたからな、内政にも才があるのが、まあ救いよな」
多分すぐ終わる若狭攻めです。
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