第35話 七尾城

 七尾城を包囲し始めてから七月が経過した、あまりに落とせないので私は増山城に入り叔父上達と北陸の政治を行っておりました。


「しっかし酷い状態じゃのう」

「一向宗と守護と国人を踏みつぶしていきましたからな」

「復興に数年はかかりそうじゃな、潰した寺社の代わりに禅宗を放り込んでおけ」

「殿が禅宗を贔屓していると思われますが?」

「実際しているからな、私は曹洞宗だぞ」

「しかし贔屓はあまりよくないのではないでしょうか」

「諸宗寺院法度に積極的に協力的な態度を取っているのが禅宗だからな、それもあって贔屓している、他の宗派も協力的になればまた違うだろうが」

「それにしても七尾がおちませぬな」

「見た目の通りの堅城というのもあるが、内部に一向宗が入り込んでるから降伏をいいだせないのであろう」

「降伏を言い出せば一向宗に殺されかねないと?」

「そして一向宗も強硬的な態度を取り続けた結果、降伏できないと、まさに悪循環だな」


 そろそろ美濃勢と近江勢を帰還させないと今年の収穫に障るか、親衛隊と八徳衆だけで包囲といくかな。

 

 越後を警戒していたが長尾重景が不穏な動きをしているが、私に対してというより、上杉房定への反抗っぽいので放置しておいていいかな、忠臣のイメージだったけど乱世の空気に飲まれたかな。


 七尾城を厳しく見張っていた所、遂に待っていたことが起きました、疫病です

 

 堅城ではあるものの、それほどの数を収容することが想定されていなかったところに越中の神保家、椎名家などの畠山尾州家の家臣、加賀、越中、能登の一向一揆、更に元々の能登畠山が集まり三万程が籠城していた。

 刈り入れに間に合ったので食料は何とかなるが糞尿の排泄が思うようにいかずに、疫病が発生し城主である畠山義統も死亡するようになり、降伏論も出てくるが一向宗が反対する為話し合いが進まないという地獄の様な様相を呈しています。 

 攻めれば落ちそうだが、もう少し締め上げてやるか、城内で仲間割れを起こすのもそう先のことではなかろうて。

 

 その間に美濃から越中まで続く馬車軌道を設置し、越中から越前経由で近江に続く馬車軌道を設置、占領地区には楽市楽座を実施することによって羽津がどういった政治をするのかを、民達に見せつけ敦賀港を整のえてガレオン船を停泊できるようにし、日本海航路を作ると同時に羽津水軍の強大さを見せつけることに成功しました。


 そんな中待ちに待った出来事が起きました、七尾城の本願寺一派が他の籠城している降伏を唱えだした仲間を皆殺しにしました。


「今城内にいるのは本願寺一派とそれに同調するものどもだ、城を焼き払ってしまえ」


 疫病の影響もあり碌な見張りもいない状態の七尾城に密かに近づき火を放つのは簡単な事でした。


「城から逃げ出してきたものは火縄を撃ちこめ」

「はは」


「生き残りの敵が必死に突っ込んできます」

「ふむ、下がるぞ」

「はは」

「敵の陣列が伸び切った所を八徳に突かせよ」

「は!」


 こちらの作戦に掛かった本願寺勢はそう長い時間も掛けずに全滅をしました。

 時間はかかりましたがこれにて七尾城攻略終了です。


 これで北陸は越後以外は統一した訳ですが、戦後の論功に悩みます。

 ちなみに三河攻撃は三河に入った途端に蜂の巣をつついたような状態になったのでさっさと引き上げています。


 何時ものように逆立ちをしつつ悩んでいると御坊が話しかけてきました。


「何をなやんでいる?」

「論功をどうしたものかと」

「朝倉を越前に加増転封でいいのではないか?」

「四十万石くらいですかね、後敦賀は直轄にしたいかな」

「後は七衆の内一人を越中に入れるといい」

「長門はどうしましょうね」

「朝倉の空き分をそのままくれてやれ」

「では七衆で越前、伊賀、大和、近江、越中、美濃と一人たらんな」

「余った家を加賀にでも置いておくがよい」

「後は空いた隙間に家臣たちを詰めて置けばよいですね」

「それでよかろうよ」

「そういえばハワイに行ってみたいですね」

「何を馬鹿な事を」

「未来記憶だと有名な観光地なのですよ」

「今は港すら完成していない場所だが」

「そうか今はなにもないのか」

「それより虎永と虎則の報告書に目を通しておけ」

「虎永はだいぶ南下に成功したようですね」

「ソロモン諸島、サンタクルーズ諸島、ニューヘブリディーズ諸島と南下はうまく行っているな」

「では寄港地を作ってから今度は東に向かってほしいですね」

「伝えておこう」

「虎則は新航法を完全に物にしハワイの港を完成させたか、ハワイの港も水城にしてしまった方がいいかな?」

「現地民が信用できんか?」

「征服をしましたからね、反発があるのは当然です、それにハワイは太平洋艦隊の司令部を置きたいので城が欲しい所です」

「ではメキシコは少し遅らせるか?」

「そうします、その代わりハワイを固めようと思います」

「何故急に考えを変えた?」

「一向一揆を見ていると、重要拠点であるハワイも原住民を警戒して固める必要性を感じました」

「まあいつもの思い付きじゃないのならよかろう」

「取り敢えずは北陸が落ち着かないと動けませんな」

「お前が火を付けた三河はひどいことになっているがな」

「敵がいるから協力出来たのに、敵がいなくなれば揉めるのは目に見えていますからね」

「どうする?」

「良い感じに煮あがったら食べに行こうかと」

「今度は大軍を連れて行け、お前の単騎掛けなど恐ろしくて出陣させられん」

「あれは、あの瞬間が好機だったので」

「結果を見れば確かにそうなのかもしれないが、皆がお前と同じ視点にいると思うな」

「それに英傑にはある程度の神話性が必要なのですよ」

「それもわからんでは無いがな」

「まあ今後は守られながら戦いますよ、私とて早死にしたい訳では無いですからね」

「そちが死ぬと羽津は終わる、それだけは理解しておけ」

「それは十分に、それより足軽を増やしましょう」

「十分増やしていると思うが?」

「増やしている分が全部海外に行ってしまっているので」

「確かにそうだな、増やすのは親衛隊と八徳衆か?」

「親衛隊を八千、八徳衆はそれぞれ二千にします」

「倍に増やすのか、財源に余裕はあるが」

「じゃあ早速に」

「分かった手配をしよう」


 正月です、つい先日九歳になったと思ったら十歳になりました。

 七尾で手こずった為時間の感覚がおかしいのでしょう、きっとそうです。

 これまでも政務の空き時間に愛洲久忠から剣術を教わっていたのですが、これが怖い怖い、ということで袋竹刀を開発させて使うことにしたが、それでも痛いっということで


「久忠、私から攻撃するという時点で我が方は負けということだ、そこで敵からの攻撃を防ぐことに特化した王者の剣を学びたい」


 というと頃っと引っかかって感激しながらそうします、って言ったはいいももの


「久忠痛い痛いぞ!」

「殿が敵の攻撃を防げていないということです、我らの為にも防ぐ力を極めて下さい」


 そんな日々が続いたんだけど、なんか急に久忠の剣を見切って防ぐことが出来るようになってきた、もちろん攻撃はしない。

 息も上がらず久忠の攻撃を防ぎきることが出来るようになった頃に


「殿、お見事です王者の剣を極めたと言っていいでしょう」

「うむ、久忠の教授のお陰だ、以降は愛洲移香斎久忠を名乗り陰から当家を支える陰流を名乗るがよい」

「殿! この陰流の愛洲移香斎久忠生涯の忠誠を誓います」

「うむ」


 これで愛洲移香斎になったし陰流も生まれたので、めでたし、めでたしですね

 それよりこの体思っていた以上に性能がいいな、二人分の能力があるからかな? 一条兼定と今川氏真の組み合わせじゃなくてよかったわ。

 でも加藤孝吉とかには、ひっくり返っても勝てそうにないからそこまで能力が高い物どうしの合体では無さそう、某遊戯風に考えると武力八十二くらいかな? 結構強いやん。

 

 自分が結構強いことに酔ってたら、絶対勝てない人が部屋の中にいた


「長門何用か?」

「殿も十歳になり誠にめでたいことと思います」

「うん? ありがとう」

「そこで、かねてよりの約定通り曾孫を嫁にしていただきたく」

「え、桜は何歳だったか?」

「婚約者の年齢すら覚えてらっしゃらないのですか?」

「そういうのはいいから何歳だ?」

「七つです」

「流石に無理ない?」

「しかしとてもいい子なのですよ」

「知ってる」

「儂の肩を揉んでくれたり」

「知ってる」

「儂の着物を仕立て直してくれたり」

「知ってる」

「七つにして既に料理が旨いのです」

「知ってる」

「筒井が攻めてきたときには女中たちを指揮し食事の支度をしてみせました」

「それはかなりの人が知ってる」

「それでは殿は何がご不満なのですか」

「だから年齢だって言ってんだろ! 七つで親元から離すのは可哀そうだろ」

「忍びならそのくらいの年齢には親と離れております」

「忍びならそうかもしれないが、そちの曾孫が成るのは忍び頭ではなく私の正室なわけだ、忍びの常識に染められても困るぞ」

「なればこそ早く迎えていただきたく」

「母上の意見を聞く、奥の事は母上の声の方が強い」


「という訳なのです母上」

「ふむ、妻を早く娶って家中の紐帯を強くするのは悪くはありませんが」

「母上?」

「そうでしょうとも、それに某も良い歳です、死ぬ前に玄孫を見たく思います」

「しかし徳寿丸は忙しい身、津に来たからとはいえ毎日一緒にはいれないでしょう、その辺はどうお考えで?」

「殿がご年齢を重ねれば暇が増えるというわけではございません、今の内から慣らしておく必要もあるのではと」

「なるほど、長門殿がそうお考えでしたら母としては止めは致しません、徳寿丸、出来るだけ優しくして差し上げるのですよ」

「ハイワカリマシタ」


 徳寿丸十歳で結婚することになりました。

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