第43話 皇帝
蠣崎を滅ぼしたとはいえ、蠣崎が支配しているのは渡島半島しか支配していない、これで終わっては片手落ちもいい所なのでアイヌ民族を支配下に置くためにアイヌの集落に向かうことにしますが。
「足元が悪いな」
「ここで襲われたら危険ですな」
「斥候をいつもより多めにだしておけ」
「はは」
正直船で行けばよかったかな、まあ出発してしまった者は仕様がない、雪が解けてこれだから、雪が解けて無かったら最悪だったな。
そんなこんなで苦労しつつアイヌの集落に到着しました、曽於の集落の族長が現れて交渉開始です。
「イランカラプテ」
「我らの言葉が分かるのは知っておるぞ」
「何用だ」
「我らに従え」
「流石に乱暴なのでは?」
「蠣崎は滅ぼした、悪いようにはせぬゆえ降伏するのだ」
「条件は?」
「今のところはないな」
「は?」
「公正な価格で取引をしてくれればいい」
「それはこちらも望むところだが、我らを支配する必要はあるのか?」
「我が国の領土だと主張しておかなければ海外の国に領有権を主張されかねん」
「なるほど」
「それと、そのうち学校というものをサッ・ポロ・ペッ辺りに建てようと思っている、そこに若者を寄こして欲しい」
「人質か?」
「というより教育だな、支配していくにあたりアイヌは文字が無いから支配しにくいからな」
「分かりました」
「そのうち税をとるかもしれないが、今のところは取るものが無いから暫くは無税とする」
「ありがとうございます」
「他の集落も支配する協力せよ」
「はい」
最初の集落を簡単に幸先よく支配することが成功しました、この調子で進めたいですね。
流石に六万の軍勢で進むと抵抗する気も起きないようで次々と降伏していきました、あっという間に蝦夷地の征服が成功しました。稚内で船団と合流して五万を樺太い、一万を千島列島に派遣した結果一月立たずに目的を達成したので江戸に帰還しました。
「意外と早かったな」
「六万で進みましたからね、自分たちの人口以上の兵力で来られると、どうにもならんでしょう」
「村落の住民以上の兵力が来たら確かにどうしようもありませんな」
「しかし、色々甘いのではないか?」
「正直文字文化がないので税を取るのは大変なのですよ」
「文字が無いとは不便そうですな」
「彼らにとっては、それが文化なのだろう、無理に文化侵略はするべきではない」
「でもするのじゃろう?」
「徐々にですね、五十年を目途に考えております」
「五十年か長いな」
「一つの民族の文化を変えるのです、時間もかかりますよ」
「蝦夷地への入植者と学校建設が必要ですかな」
「そうなるな、まだ関東への入植者もたりないというのに」
「まあ蝦夷地を外国にとられるよりはよかろう」
「今後の予定は西進に変わりはないですか?」
「うむ稲狩りが終わり次第、陣触を出して中国と四国に向かう、そうだ、今のうちにフリゲート艦隊を堺に集めておけ」
「承知した」
「畏まりました」
「申し訳ございました」
「ふむ」
目の前には土下座をする古湊虎則がいます。
事の次第はパナマに到着した虎則の部隊が現地国家の部隊と言葉も通じなかったこともあり衝突、現地国家軍を追いやることには成功しましたが、和を以て貴しとなすとする我々の戦略を乱してしまったことに対して謝罪をしているのです。
正直和を大切にはしていますが、それ以上に家臣を大切にしているので責めるつもりはありません、それにいつかは武力衝突する可能性は考えていました。
「で、今現地はどうなっている?」
「はい、運が予定地の少し南側に城を作りながら敵の様子を伺っています」
「現地軍との衝突はいずれ起こるとは思っていたことだ虎則が謝罪することではない気にするな、足軽五千と十分な兵糧を送るから現在地を確保せよ」
「はは」
「下がってよいぞ、腹は切るなよ」
「は」
「あれは切るつもりだったな」
「責任感が強い男だからな」
「この程度の事で腹を切られては家臣がいくらいても足りないわ」
「こうなるのを予測していたようだな」
「部族相手ではこういうことは起きないでしょうが相手が国家となるとこういうこともあるでしょう」
「伝えておくべきだったな」
「そうかもしれませんが、原住民や現地国家を滅ぼせばいいと思われても困ります」
「虎則殿や虎永殿も馬鹿ではないです、きちんと説明をすればよい話では」
「ふむ、そうだな私の失敗だな」
「しかし言葉が通じない現地国家ということを考えたら武力衝突は当然かもしれんな」
「何かいい方法はないものか」
「言葉が通じないというのが困った所ですな」
「それより、朝廷との関係について話す必要がそろそろ出て来たな、飛鳥井を呼べ」
「朝廷が断ったらどうするつもりだ?」
「今はなにも、日の本を統一した後で全国の兵を京にあつめるだけですよ」
「京を焼かれるのですか?」
「やっと復興したのに焼くはずがなかろう、ちょっと脅すだけよ」
それから十日程して飛鳥井内府雅康が江戸に来ました。
「遠く江戸まで来てくれて悪いな」
「いえ、鄙びていると聞いていましたがあちこちで工事がおこなわれておじゃりますな」
「第二の京にするつもりだからな、まあ京が文化的発信地ならば、こちらは政治、経済的な発信地にするつもりだがな」
「羽津様は帝をどうされるおつもりなのですか」
「お、踏み込んできたなそういうのは好きだぞ」
「羽津様!」
「まずは帝という呼称をやめさせる」
「な、なんと」
「天皇という呼称に統一させる」
「そして私は皇帝になる」
「そ、それは」
「内府よ地球儀を見てみよ」
「この広い領域を支配するには中途半端な称号ではだめなのだ」
「そうなのかもしれませんが」
「朝廷にはこれまで通り儀礼儀式に文化の継承更には戴冠式を行って貰う」
「では朝廷の方が立場は上なのですか?」
「立場は対等と思って貰いたい、第一私は朝臣を名乗ってはおるまい」
「確かに」
「それと朝廷には宗教も司ってもらいたい」
「諸宗寺院法度でございますか?」
「うむ」
「しかし一向宗と法華宗の問題がありますが」
「ゆえに朝廷に頼みたいのだ、法華宗は正面から敵対していないが一向宗が意固地になっているでな」
「しかし妻帯禁止がありますが」
「そんなもの追加として但し書きで宗派として妻帯を認めている場合は良しとするとか書き足せばよかろう」
「後朝廷にも法度を作るぞ」
「そ、それは」
「私自身法度に縛られているのだぞ、朝廷だけ法度無しとはいくまい、まあ禁秘抄の抜粋だな」
「禁秘抄の抜粋ならば納得がいくかもしれませんな」
「まあ納得いかなくても納得せざるをえまい」
「といいますと?」
「御坊今回の遠征に出す兵力を教えてやれ」
「うむ、奥羽は今回は免除とする、北陸で十二万、甲信で四万これは朝倉孝盛を総大将として山陰地方に向かう、東海で十五万この大将は花井忠誠とし山陽に向かう、機内で十五万大将は藤林長門これは四国に向かう、更に忠孝自身が率いる兵として鉄砲足軽五千、親衛隊一万五千、八徳衆四万、足軽五万、農兵が十五万の二十六万が山陽道に進む」
「な、七十万ですか」
「それを皆京の傍を通らせる」
「そ、それだけはご勘弁を」
「と言われても戦地に抜ける道を選ぶと自然と京近くを通ることになる」
「早速京に戻りたいと思います」
「うむ、お構いも出来ず、すまんな」
「いえ、失礼します」
「慌ててたな」
「流石に七十万が京の近くを通るとなると急いで戻らざるをえまい」
「皇帝の話を忘れていないといいが」
「朝廷を敵に回しかねませんが?」
「そこまで馬鹿なら潰してしまえ」
「流石に叡山や南都のようにはいかんが」
「私も最後まで粘ってはみるさ」
「国主ではまずいのですか?」
「権威が足りん」
「ふむ、まあやり過ぎんようにな」
「気を付けましょう」
「飛鳥井内府さん、こちらへ」
「一条関白様、わかりました」
「羽津さんの目的はわかりましたか?」
「羽津様は皇帝になるとのことです」
「帝を廃するということですかな」
「帝を天皇という呼称に統一して儀礼儀式に文化の継承更には戴冠式を行って貰うとのことです」
「戴冠式を朕が行うということは朕の方が立場は上ということか?」
「同格という事でした」
「ふむ」
「流石にそれはどうでおじゃりましょう」
「それについて羽津は?」
「地中義を示し、これほどの広さを支配するには皇帝の称号が必要だと」
「確かに地中義を見ると日の本は小さいからな」
「帝のお考えは?」
「朕はそれでいいと思っておる」
「他には禁秘抄を抜粋した禁中と公家と縛る法度をつくるそうです」
「武家と僧侶を縛っているのだ禁中を縛る法度を作るのもやむをえまい、禁秘抄を元にしているのならば、そんなにひどいことにはなるまい」
「しかし反対する公家は出てきましょう」
「羽津は西国攻撃に七十万の兵を出すそうです」
「な、七十万!」
「朝廷を脅しに来てるの」
「取り敢えずは朕は羽津の提案に賛成じゃ、皇統を残すことが大切だからな」
「あとは宗門の取り締まりを朝廷に任せたいと」
「条々の五が問題であろう」
「羽津様が但し書きで宗派として妻帯を認めている場合は良しとするとか書き足せばよかろうと申しておりました」
「延暦寺や南都に関しては何と」
「申し訳ありません、聞いておりませんでした」
「取り敢えず羽津本人が京の近くに来るのだ、その時に話してみればいいだろう」
「はは」
「朝廷内の工作も並行してやらねばいけませんね」
「声だけは大きい者が多いから困ったものだ」
天皇と謁見の予定が決まったみたいです。
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