第62話 デカくて硬い何てチート
グリーンドラゴンをbotが連れて来た。
まさかこうも簡単にボスと戦う羽目になるとは誰も思っていなかった。
カメラドローンの画角がナナシー達に向いた。
ナナシーは剣を構え、ヴラドとカエデもそれぞれ斬撃系の武器を装備していた。
「ちょいマジだよな! よっしゃ、景気良く行っちまうか!」
botはニヤリと笑みを浮かべた。
グリーンドラゴンの鼻先目掛けて、拳を叩き込んだ。
“うおっ、マジか!?”
“ここで戦うのアツすぎ!”
“炎が効くのか?”
コメントは湧いていた。
しかし誰もスマホの画面を見る余裕はなく、botも画が良くなることを信じて攻撃したのだ。
しかし甘過ぎた。
グリーンドラゴンは口から炎を吐き、botを丸焦げにしようとした。
ブフォ!
口から炎が吐かれ、botは身構えた。
「マジかよ!」と形勢を簡単に逆転され、鼻先目掛けて振りかぶった拳を引き戻した。
「こりゃ無理だって!」
「そんなことはない」
botの耳に声が届いた。
両頬スレスレを何か赤い物が飛んでいた。
「はぁ?」
botの視線の先でマリーが何かを投げ付けた姿勢になった。
指から放たれたのは赤いナイフだった。
自分の血で作られたナイフは赤々としていた。
グリーンドラゴン目掛けて放たれると、硬い鱗に阻まれたが直撃はした。
とは言えダメージはほとんど無かった。
悔しくは無かったが、マリーは渋い表情になった。
「やっぱり効かない」
流石のマリーもマズいと思った。
再びナイフを生み出したが、先程よりも少し先が太かった。
「カエデ、歌って」
「うん。♪鮮血の切先が触れる、あの時の衝動、重なり合う曇天を突き破るように振え!♪」
「よく分からないけど。ほいっ!」
マリーは歌って貰うように頼んだのに、意味が分からないで片付けた。
ナナシーも同じことを思ったが、投げたナイフは先程よりも明らかに強くなっていた。
「届く」
「うおっ!?」
botは身を屈めてかわした。
しかしナイフは直撃し、微かにだがグリーンドラゴンにダメージを浴びせた。
カキーン!
しかし硬い鱗に弾かれてしまった。
とは言えグリーンドラゴンは怒りの力を露わにした。
「ギュギャーン!」
グリーンドラゴンはbotに噛み付こうとした。
そんなに記憶が欲しいのか、ナナシーは飛び出そうとした。
しかしbotは炎を使って攻撃を回避した。
熱波を起こして風圧で飛んだのだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! ぐはっ、痛ててててぇ」
botは転がり込んできた。
目の前までやって来たbotにナナシーは手を差し伸ばす。
「大丈夫か?」
「おう。何とかな」
ナナシーはbotを立ち上がらせると、剣とガントレットを武器に前線に出た。
カエデは二人にも歌を聴かせ、ポテンシャルを引き出した。
「♪二人ともポテンシャルを引き出して♪」
「それはフレーズだな」
「良い感じだな。んじゃ、このままやるぜ!」
ナナシーとbotは飛び出した。
しかしグリーンドラゴンは突っ込んできて、炎を吐き出した。
“また炎キタァ!”
“いや、流石にこの至近距離は…”
コメントが不穏なことを投げた。
しかしナナシーは御約束を守るわけがなく、軽くステップを踏んで、踵を返した。
「そらぁ!」
ノイズが走った。
周りの人の意識が閃光と共に掻き消され、ナナシーだけがはっきりとした記憶を持った。
「まあかよ!」
botは突然のことに叫んだ。
しかしナナシーは気にせずグリーンドラゴンを蹴り飛ばすも、ダメージがほとんど入らなかった。
(硬いな)
圧倒的な防御力。
そう思ったのはほんの一瞬でナナシーは表情を
「いや待て……そうか」
ダメージは確かに入っていなかった。
けれど龍の鱗に若干の
正面衝突で受け止めているだけで、完封されてはいなかった。
それだけ分かれば後は同じところに集中砲火を食らわせるだけだとニヤリと笑みを浮かべた。
(とは言え……)
今のは完全に奇襲のようなものだった。
もちろん何度も通じるとは思っていないが、ある程度はダメージソースになるだろうと、ナナシーは容易に想像した。
けれど問題点も浮き彫りとなった。
このままやっても切りが無いのだ。
(流石に俺の攻撃だけだと話にならないな。せめてもう少し
ナナシーはノイズが走り終わるのを待った。
するとグリーンドラゴンが目を覚まし、目の前にいたナナシーは食べようとした。
「危ねぇな!」
そこに飛び掛かったのはbotだ。
炎をメラメラと灯した拳でグリーンドラゴンの左頬を思いっきりぶん殴った。
グリーンドラゴンの顔が歪んだ。
しかしすぐにbotを視界に捉えると、尻尾を使って弾き飛ばした。
「うおっ! うわぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁ!」
botの体が壁に叩きつけられそうになった。
そこを助けたのはカエデの能力で、空気の膜を使って受け止めた。
「あ、あれ?」
「大丈夫bot君?」
カエデは手を差し伸べた。
botは嬉しそうに手を握ると、コメントが荒れた。
“コイツまさかやったんじゃ!”
“ズリいぞ”
“わざとやってんのか?”
“ウゼェ”
滅茶苦茶怒られていた。
しかしbotはすぐに気を取り直すと、「違えからな」と言い訳をした。
「何やってるの?」
そこに遅れて首を突っ込んだのはマリーだった。
しかし何も理解していないので話に乗れなかった。
「そんなことは如何でも良い。とにかく、今はコイツを倒さないことには始まらない」
ナナシーは戻って来た。
地面を擦り、砂埃が舞った。
しかし何も気にしていなかった。
スニーカーの靴裏が激しく擦れて滑り止めを駄目にした。
「そんなのは分かってるけどよ」
「相手が強すぎるよ」
「そんなこと百も承知だ。それに今この状況を打破するにはコイツを倒すしか無い。そして倒すための方法は……」
ナナシーは珍しくたくさん喋っていた。
それだけ緊迫しは場面なのは変わりないが、それでもナナシーは非常に冷静で、やるべきことを見据えていた。
「まずはと言うか、頼めるか」
ナナシーは珍しいことを口にした。
botとカエデは目の色を変えたが、それは以外だったからだ。
けれど二人とも嫌な顔はしなかった。
むしろいつもと違う様子のナナシーを見て、より一層緊張感に包まれてシャキッとした。
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