第43話 棺の中に少女が居るこの状況?
ギギギィ!
棺の上蓋を開けた。
すると中に入っていたものに名梨は驚いた。
「はあっ!?」
ある程度は予測していた。
しかしこうも
「少女?」
名梨は驚いた。
棺の中にいたのは少女だった。
肌は白く、髪の色も白かった。
格好は黒いブラウスを着ていた。
死んでいるのか、それとも生きているのか、そもそもどのくらいの時間この中にいたのか、名梨は様々な思考が
「これは一体……」
ゴクリと喉を鳴らした。
別に欲情した訳ではなく、無性に恐怖を感じた。
誰だって思うはずだ。棺の中、しかもダンジョンの中に人がいるなんて驚くのも無理はなかった。
「とりあえず脈を測って……えっ!?」
名梨は飛び跳ねそうになった。
とはならなかったが、とりあえず一歩身を引いた。
驚いたのも無理はなかった。
指先がひんやりとしたのだ。
ゴクリと喉を鳴らした。
少女の首筋に指先が触れた瞬間、全身に悪寒が走った。
「し、死んでるのか?」
流石にドライになりきれなかった。
足が震えたが、それでもすぐに立ち直った。
「まあいいか。とりあえず……閉めるか」
名梨は極端な結果を出した。
棺に近付くと頑張って棺の上蓋を閉めようとした。
すると突然カッと手が動いた。
もちろん名梨の手ではなく、棺の中から伸びた。
「閉めない」
名梨は腕を掴まれた。
右腕を押さえ付けられ、瞬時に振り払おうとしたがパワーが圧倒的に違った。
「な、何だ!?」
冷静さを欠いた。
ドライなはずの名梨の感情が一瞬にして驚きに支配された。
「これは一体……」
「それは私の台詞。如何して急に閉めるの?」
棺の中で横たわっていた少女は急に手を動かした。
しかも冷たいと思ったはずが、妙に温かかった。
先程感じた冷たさは間違いだったのかと、口にした。
「冷たくない?」
「当然。私は死んでないから」
「えっ!?」
完全に死んでいると思っていた。
棺の中と言うこともあり、頭の中では確定させていた。
棺が突然動いたのも、ダンジョンが成長しているせいだと勝手に
「死んでないのか。なら何でそんなところに」
「眠っていただけ」
「はぁ?」
変わった趣味だなと思った。
とは言えこの感じはこの世界の人では無いなと名梨は悟った。
別に不思議な話ではあるが驚きはしなかった。
ダンジョン調査課で聞いた話だったが、ダンジョン内で知的生命体を発見した例もあった。
その人達のおかげで円滑にダンジョン探索ができていた。
お互いにwin-winな関係を築き上げることで、今の探索者は成り立っていた。
(とは言え少女か……)
棺の中で眠っていた話も異常だが、少女がダンジョンの中で眠っていたところからおかしな話は広がっていた。
何か事情があるのかもしれないと、名梨はデリカリーの欠片も無く尋ねた。
「如何してダンジョンの中に?」
「ダンジョン? ここのこと」
「如何見てもそうだろ」
少女は名梨の身振り手振りを見て、周囲を見回した。
すると「本当だ」と短く呟いた。
もしかして、本当に知らなかったのかもしれない。
「知らなかったのか?」
「うん。
なるほど千年間眠っていたのか。
それはこの世界の人間ではないこと確定だと、改めて情報を手に入れた。
しかし少女は棺の中のから這い出ると、ペタッと裸足でダンジョンの中に立った。
危なく無いのかと思ったのも束の間、少女はプルプルと足が震えた。
「あっ……」
如何やらしばらく歩いていなかったので、足の筋肉が鈍っていた。
見かねた名梨は溜息と一緒に少女に近付いた。
「立てないのか?」
「ごめん」
「謝るな。しかも初対面の人間だぞ」
「人間? そう、人間なの」
すると少女は名梨に噛み付こうとした。
鋭い犬歯をチラつかせ、名梨の首筋に迫った。
しかし名梨は少女の顔を近寄らせず押さえ込んだ。
「止めろ」
「何で?」
「馬鹿かお前は。人に噛まれるなんて最悪だろ」
「そう? 人は噛んじゃ駄目?」
「当たり前だろ」
名梨は睨み付けた。
すると「分かった」とペタンと座ってしまった。
全身から力が抜けた。
手足が余計に白くなって見えた。
血行がとてつもなく悪かった。
これは何だ。貧血だろうかと、名梨は勝手に思い込んだ。
「血が足りないのか?」
「うん。血があればすぐにでも歩ける」
「そうか」
「……何型?」
「俺のは飲むな」
「私も人の血液を飲むのは最終手段。だから仕方ない……アレを飲む」
ヨロヨロと少女は立ち上がろうとした。
しかし体に力が入らなかった。
名梨は支えになってあげた。流石に見過ごせなかった。
「ありがとう」
「これくらいは別に構わない。が、その前にお前は何者だ」
名梨は肩を貸した。
妙に軽い気がしたが気のせいだろうと割り切った。
けれど少女は割り切らなかった。
「私の正体? そんなの決まってる」
「モンスターか」
「それだけは違う。もちろん敵系統でも無い」
「じゃあ何だ」
名梨は答えを急かした。
間延びさせようとしていたからだ。
そう言うのはこの間botに付き合わされてやった、耐久配信だけで良かった。
「私は吸血鬼」
「はい?」
「私はヴァイパイア」
「何故違う言葉で言った」
やっぱりとは思った。
とは言えこう初めて会ってみたが、普通だなとも思った。
それ以上何も感じなかった。
ドライな性格だからだろうかと、期待値の薄さに少女も首を捻った。
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