第56話 大岩に塞がれているとは思わないよね!?
やっと見つけたのは次の階層への入り口だった。
いいや、らしきものだった。
「な、何だよコレ……」
botは目を丸くしていた。
トボトボと近付き、目の前の大岩に触れた。
押しても引いてもびくともしなかった。
そんなの当たり前だと、ナナシーは元も子もないことをする前から思ってしまった。
「くそっ。びくともしねぇ!」
「当たり前だ」
ナナシーは非常に冷たくてドライだった。
その対応がいつも通りなのは分かっていたが、妙にムカムカしたbotは、拳を作っていた。
「んなこと分かってんだよ!」
「だったら如何するべきかも分かっているはずだ」
「それは……」
如何して塞がれているのか考えることが先決だった。
ナナシーの判断は正しく、botもすぐに冷静になった。
目の前には大きな岩があった。
最初からここにハマっていたわけではなさそうだ。
その証拠に大きさがあっていなかった。
壁面にくっ付いているわけでもなく、単純に後からここにハマってしまったようだ。
「何処から来たんだろ?」
「さあな」
「さあなって、何か糸口は無いのかよ」
「無い」
ナナシーはカエデとbotの質問に無関心だった。
そもそもこの辺りは傾斜になっていて、この辺りの方が低かった。
それもそのはずで、この洞窟は下の階層に行くタイプだ。
つまり第二階層から第三階層へは階段に使って下に行くことになった。
つまりここで下までの安全ルートが使えなくなったのだ。
やることは一つ、帰還しかなかった。
「とりあえず戻るか」
「おいおいここまで来て戻るのかよ!」
botが怒鳴った。
しかし無理もなかった。ここまで安全に来られたのも、マリーがヘトヘトになるまで頑張ってくれたからだ。
その辺りを鑑みれば、ナナシーも痛かった。
第三階層に行くことができれば、そこでポータルを起動できた。
ポータルさえ動けば楽に帰還できた。
しかし第三階層に行けないとなると話は別になってしまった。
「このままここにいても埒が明かないだろ」
「そうは言ってよ。何とかして下に行けば……」
「うーん。マリーちゃん、如何かな?」
カエデがナナシーとbotの口論を聞きながら、マリーに尋ねた。
完全に話の蚊帳の外にいたからこそ、如何するべきか意見を聞きたかったのだ。
するとマリーは大岩に近付いた。
下へと続く洞穴をピッタシ通行止めしていたが、自分の能力で掻い潜れないか試してみたかった。
「ちょっとやってみる」
マリーは血液を使って物差しを作った。
それは大きな物差しで、隙間に通した。
まさかとは思ったが、マリーはてこの原理で大岩を動かせないか挑戦したようだ。
「流石にそれは無理だろ」
「マリー……」
マリーの無謀な挑戦は続いた。
とは言え大岩が動くことはなく、マリーの挑戦をカエデが無理やり終わらせた。
「はいはい。マリーちゃんは良くやってるよ!」
「カエデ……」
ちょっとだけ落ち込んでいた。
ここさえ通れれば地上まで一瞬で帰れるのだ。
「もっと血液があれば動かせた」
「アルキメデスの原理的な?」
「何だよそれ」
「さあ?」
名前だけは聞いたことがあった。
確か水流に対しての物体にはたらく浮力的な何かだったと記憶していた。
とは言えそれを血液でやろうとするのは流石に無謀すぎた。
マリーも懲りたのか、使った血液が再び体内に戻った。
マリーの体内に血液が戻る瞬間、除菌がされるそうだ。
だからマリーは血液的には無事なのだが、戻る際の逆流が邪魔をしてまた苦しそうになった。
「それで如何するんだよ?」
「如何するとは?」
「こっから先。戻るにしても、こんな大岩がいつまでもあると迷惑だろ!」
そんなことをbotは言うが、ナナシーに聞かれても分かるはずもなかった。
そこで何かないかと思い視線を配ると、カエデが何かをジッと見ていた。
そこには木の看板が立っていた。
カエデ指を指して答えた。
「ねえ、コレじゃないかな?」
「何かあるのか」
「うん。お知らせだって」
カエデは看板に書かれていた内容を口にした。
それは以下の通りだった。
「えっとね、第二階層に生息しているボスモンスターによって大岩が第三階層への入り口を封鎖してしまいました。後日ダンジョン調査課が撤去作業をするため、しばらくの間通行止めとさせて致します。だって……」
「そ、そうか」
これは納得するしかなかった。
そもそもこの現状をダンジョン調査課が知っているのだとしたら、他に手立てはなかった。
こんなものドリル重機でしか壊せなかった。
ナナシーは諦めることにしたが、一つ疑問が残った。
如何してこのことを教えてくれなかったのか。
陰謀論説を少しだけ脳裏に通り過ぎさせたが、それは違う。
「ここ見てよ。看板の設置が昨日になってるよ!」
「あっ、そう言うことか」
如何やら情報が古かった。
昨日設置だとすると今日行かないと情報は仕入れられなかった。
微妙に間が悪いことに気が付いた。
これにて完全に手詰まりとなり、ナナシー達は選択肢を限られた。
このまま帰るか、第二階層を探索するか。
その二択になった瞬間、botは口にした。
「第二階層を探索しようぜ!」
とりあえずモンスターのレベルはこちらとも釣り合っていた。
ナナシーも納得はしたものの、この大岩を破壊した敵が何か気になった。
とは言え答えは出ていた。
多分霊龍の泉域だけにアレだと認識したが、一旦頭の中から排除した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます