邪神 ヤマダサブロウ(♀)
ショートヘアに髪を切り揃えた三菜子に。
どうなっても構わないといった覚悟が、いともたやすく瓦解した。これから僕は、このまま女性として、第二の人生を歩まなければいけないのか?
『だから言ったじゃないか。どうなっても知らないよって』
「でも、女の身体になるなんて! 元に戻れないのか?」
『ワタシの理屈では、元に戻ってるんだけど? 髪が短くなっただけで』
そうか。この身体は元々、三菜子の物だったんだ。力を解放したら三菜子の身体が全盛期の頃に戻るのは道理、とも言える、のか?
「いやいやいや、おかしいだろ! 元の山田三郎に戻せ!」
『自分の意思か、力を使い果たせば戻るだろうね』
「だろうね、って、楽観的な。こっちは死活問題なんだぞ!」
迷わず自分の意思で、とも思ったが却下した。強くなった六角を相手に、変身を解くのは危険すぎる。
「どっちでも構わねえ。男だろうが女だろうが、あの世に送ってやる!」
六角の刃が、光を放つ。ギザギザの刃の形をした光が、まるでチェーンソーか糸ノコギリのように回転をはじめた。裏拳気味に、糸ノコギリ刃をぶつけてくる。
「ぐっ!」
ソードレイで、回転する光の刃を受け止めた。が、回転に巻き込まれて弾かれる。武器から手を放してしまいそうな勢いだ。
手を振って、武器を持ち直す。
『手強いね。こんな強い奴は、なかなか会えなかった』
確かに強い。全ての能力が戦闘に特化している。
こちらも相当、戦闘に振り切れたクラスだと思っていた。
が、アイツは三菜子以上に実戦的なシェーマだ。戦い方しか頭にない感じである。
「だったら、こっちだ。『黒の嘶き』!」
小型の黒雲を呼び出し、黒い稲妻を放った。
稲妻が槍となって、六角へまっすぐ突き進む。
「何い!?」
あろうことか、六角が僕の放った紫電を食った。
「霊磁力を使った技は、オレ様には通用しないぜ」
ふう、と一息ついて、六角は腹を叩く。何かを食べ終えたような仕草だと思うが。
『分からないの? アタシの属性は「死神」よ』
『はーん、なるほど。「捕食」の能力かの?』
「さっきから死神だの何だのと、何の話をしているんだ?」
シェーマ二体の会話に、僕はついていけない。
『そっか、教えてなかったっけ。シェーマには、それぞれ《属性》があるんだ』
シェーマは、支配者たる神が保有する属性、能力を持つという。中でも、奴は「死神」の配下。能力は「捕食」だという。相手の霊磁力を食うのだ。
『ここまで強い霊磁力を保有しているってことは、さてはマニフィカトを食ったね?』
「ああ。おかげでオレは、食うには困っていない」
シェーマが霊磁力を食えば、宿主の腹も同時に満たされる。それが、死神属性の特性だという。捕食能力があれば、人間のように食事の必要がないらしい。
『そういうアンタは、「邪神」ネクストブレイブよね? シェーマと言うより、シェーマを従える神そのもの』
ロクサーヌの腕だけが六角の腹から出てきて、こちらを指さす。
僕の中にいる三菜子が、わずかに動揺したのを感じる。
隙を突き、六角が回転蹴りを浴びせてきた。
反応が遅れ、僕はソードレイを落としてしまう。
『その姿を見て思い出したわ。かわいらしい見た目だったから、確証が持てなかったけど。神とは思えないほど、力を失ってるわね? 死んでたってのは、本当だったのね』
『邪神であれば、何だと?』
三菜子が尋ねると、ロクサーヌの声が弾む。
『アンタを食えば、アタシが邪神になれるってコトよ!』
人間離れした跳躍力で、六角は飛び上がる。
マサカリのような殺人カカト落としが、僕の脳天を襲う。
僕は、取り落としたソードレイを、雷を放って引きつける。
「テメエの雷は、そんな事もできんのか!」
「そうだ。くらえ!」
腕を振り上げ、胸元を切りつける。
確実に狙える角度だと思っていた。
しかし、六角は身体をのけぞらせて避ける。驚異の反射神経だ。
ソードレイが、パーカーの繊維に引っかかる。
パーカーの胸元が破け、六角の肌着が露わになった。
黄色いスポブラに包まれた、ボーイッシュな見た目に反した巨乳が全開に。
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