第14話:絶体絶命?

 笠間総理達を伊400に案内しようとした時、信じられない報告を聞いた日下は直ちに司令塔に事の次第を把握しろとの命令を出す。


 総理も血相を変えて日下に申し訳ありませんが今から全閣僚を集めて緊急会議を開きますので失礼させてもらいますといい、LCACに戻るが総理が思いだしたように日下に伝える。


「今、キエフにはR国大統領とU国大統領が講和条約締結の為にいる筈ですが……この惨状を誰が引き起こしたかによっては……!」


 総理の言いたい言葉を日下は頷く。

 総理達を乗せたLCACが伊400から離れて行き速度を上げて去って行く。


 それを見届けた日下は直ぐに司令塔に滑り込むように入ると西島航海長が息を切らせながら報告してくる。


「艦長! 間違いなく首都“キエフ”に核爆弾が落されました。威力は広島原爆10倍と推定しますが大統領官邸上空で爆発したので……」


 日下はじっと考え込んでいたが直ぐに命令を出す。


 それは首相官邸と連絡を密としてこのまま北海道奪回作戦を続行するのか? それとも延期するのか? 等を。


「艦長……やはりこれは……」


「……そうだな、完全な陰謀だ! 第三次世界大戦を引き起こしたい闇の存在がいるのだろうな! だとすると……犯人として米国を生贄とするか……そうに違いない」


 日下は“晴嵐”出撃が近く必要になると考えてルーデル達にいつでも飛び立てるように命令を出す。


♦♦


 一夜明けたその日の朝は世界中が騒然となっていたのである。

 伊400よりも最も現実的な事を。


 首相官邸では総理を始めとする各省の責任者が勢揃いして会議を始めていて実に四時間が過ぎようとしていた。


「今しがた入った情報によりますと“キエフ”を攻撃した爆撃機はクリミア半島沖で撃墜されたようですが機体には★マークが施されていました。私は米国の仕業ではないと断言できますがR国では米国許すまじとの大合唱が沸き起こっているとの事ですが外務大臣に尋ねます。在日R大使館からの連絡はありましたか?」


 総理の問いに外務大臣が立ちあがり何度もコンタクトを取りましたが大使を始めとする全員がそれどころではない混乱が生じていますというと総理も確かにと頷く。


「幕僚長に尋ねますが北海道を不法占拠しているC国はどうしていますか? 私としてはこのまま北海道を予定していた時間は無理ですが半日後に開始しようと思っていますがいかがでしょうか?」


 幕僚総監が立ちあがって現在のC国軍の士気は崩壊寸前になっていて先日の日下艦長のホログラム放送が切っ掛けとなったようですと言う。


「分かりました、皆さんに私の考えを言います。足元に爆弾を抱えている時です! 可及速やかに北海道を取り戻して売国奴達を極刑にすると共に防衛を固めないといけません。引き続き米国と連絡を密として情報収集してください」


 その時、ドタドタと廊下を走る音が聞こえたかと思うと首相補佐官が真っ青な表情かつ息を切らせながら扉を乱暴に開けて会議室に飛び込んでくる。


「はあ、はあ、はあ、総理!! 一大事です!」


 ゼエゼエ息を吐く彼の姿に総理はとんでもない事が起きたと判断してこのままでいいから言いなさいと言うと彼は姿勢を正して内容を言うが皆が驚愕する。


「C国から……ICBM弾道弾が発射されようとしていると? それは本当の事ですか!?」


「は……はい! 横須賀米軍基地から緊急電が入りましてC国内にある地下サイロが開放されて燃料注入が開始されて間もなく終了との事です!」


「何てこと……」


 笠間総理が椅子に崩れ落ちるように座り込むと頭を抱え込むが直に顔を上げて弾道弾迎撃用のF35Aの出撃を命じるが主力は全て北海道方面に向かわせたので残っているのがF15のみで弾道弾迎撃ミサイルはようやく生産軌道に乗せる段取りが決定して配備は半年後になると言うことを聞くと総理は目を瞑って観念しようとしたがふとあることを思い出して補佐官に、ここにあるTV通信モニターを指差して今言う番号にかけるように言うと補佐官は頷いて急いで言われた番号にかけると直ぐに相手が出る。


「笠間総理、こちらでも既に感知していますが間に合わないのですね?」


「ええ、残念ながら全てが軌道に乗るのは半年後です。申し訳ありませんが日下艦長にしか頼めないのですが……」


 総理がそこまで言うと日下はこれ以上は言わなくても分かりますよと言うと伊400の全攻撃能力を使って迎撃しますと笑みを浮かべて確約する。


 総理以下皆の者は頭を下げてお願いすると補佐官も頭を下げる。


 その時既に伊400では前部格納庫扉が開放されて“晴嵐”が引き出されている所であった。


 射出地点迄運び出された“晴嵐”が翼を展開していきその間にルーデル閣下とガーデルマンが乗り込む。


「ガーデルマン! 久しぶりの実戦しかも失敗は許されないぞ?」

「分かっていますよ! ルーデル、さっさと終わらせましょう」


 間も無く射出が行われる信号に変わるとルーデルは酸素マスク等をつける。

 信号が青になったと同時に轟音を上げて“晴嵐”が射出される。

 引き続いて岩本機・岸本機が次々と射出されていく。


 それと同時に遂にC国のICBM弾道弾(東風)が煙を吐きながら地下サイロから発射される。

 総本数200本が一斉に吐き出されたのである。

 着弾まで僅か10分しかない!

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