第23話:歴史の加速
真崎による大東亜共栄圏宣言は驚きの声を以て知られたが時間が経つにつれて海外は元より日本国内でも猛反対の意見が沸き起こる。
特に過去に起きた大東亜戦争の本質が分からず戦後、反戦教育を受けた老齢な人々や子供を持つ親等がデモを起こす。
「軍部による無謀な戦争で何十万人の若者が学徒動員や神風特攻隊で死んでいった愚行を再び起こすのか!」
勿論、真崎たちはこういう事を予想していた為、特に気に留めずに粛々と物事を進めていた。
「まあ、分からないでもないし放っておいても害はない! 笠間総理の英断で害ある反日の屑共達は粛清されているからね? 反対している者達は純粋な日本人であるから好きにさせておけばよい」
真崎はそう言うと四月一日に向けて準備をするのであった。
一方、曹主席が脳梗塞で急死した後、北京軍区の『趙春雷』大将が電撃的に北京中央を押さえたため、あまり混乱はなく国内を正常に導くが、どさくさに紛れて台湾が独立宣言をしてしまう出来事が起きたがC国には海軍力が潰滅して二度と立ち直れない痛手を被り台湾侵攻は最早、夢物語にしかならなかったが未だ人民解放軍100万の軍勢と航空戦力が健在でC国海軍壊滅後は、日本倒せ! のC国民一致団結となったのである。
趙主席は真崎が提唱した大東亜共栄圏の設立宣言を聞いた時から素早い行動に移す。
一路一帯を提唱していたC国はアジア大陸各国に“大中華連邦”の設立を呼び掛けてその見返りに各国に貸していた借款を全て帳消しにしてその上、C国の技術を無償提供する事を提案する。
“大中華連邦”に所属した各国は連邦軍として人民解放軍を頂点としてその配下として共に繁栄することである。
いわゆる半朝貢と一緒であるがC国による借款が全て帳消しになる上、チャイナマネーが無制限に入ると言う誘惑に勝てる国はなく次々と参加を宣言する。
“マレーシア”“シンガポール”“カンボジア”“ラオス”“ベトナム”“ミャンマー”がC国の傘下に入る。
唯一“タイ王国”は返事を保留とするが周囲を“大中華連邦”に包囲された感じになっているので答えを早くしなければならなかった。
ASEANは自然消滅及び解散になり僅か数日の間で歴史が加速していった。
尚、C国はアフリカを始めとする国々に貸し付けている借款を帳消しにしてチャイナマネーの無償投資を餌に連邦参加を呼び掛けていく。
次々と連邦に入る宣言をしていく国々に流石のアメリカを始めとする西側諸国及び日本は唖然として真崎もC国の底力を過小評価していたことを悔いる。
「C国は太平洋や東シナ海及び南シナ海の制海権を失ったが陸は健在どころか版図を広げてしまった……C国侮りがたし!」
この時点での世界情勢だがNKが南進した結果、K国は完全に呑み込まれて釜山まで制圧される。
K国は済州島に逃れてそこでK国健在を唱えるが世界からは何の興味も持たれていなく忘れ去られた存在になっていた。
ソウルが核の炎に包まれて邦人救出を懸命にしたが数万人の邦人が犠牲になったのである。
一方、米国とR国のトップ同士のホットラインで全面戦争は避ける事に同意して米国もデフコン2まで下げる。
これは米国もR国も自分の本土が犠牲になっていないためであったがあれから存在が確認されていない伊400の事がある故であった。
たった一隻でICBM弾道弾200発を全て迎撃するという現代では不可能なことを簡単にやれてしまったことである。
米国も日本が提唱した大東亜共栄圏についてはひとまず静観する事にしたのである。
何故なら日本を含む大東亜連邦に所属する国々がC国やR国の完全な防波堤になってくれるからである。
それに今更、米国と袂を分けても得にはならないと判断したからである。
闇の勢力にとって米国とR国が核戦争に発展して欲しかったがそれがご破算になったので新たな火種を撒くことを決める。
「やはり第三次世界大戦は中東から起こすのに限るか……!」
エルサレム神殿の丘に建立されている岩のドームをイスラエルに破壊させてイスラム諸国との宗教戦争を起こしてそれを切っ掛けに第三次世界大戦を起こす事を決定する。
そんな陰謀が決定されたことを知らない日下はこれからどのようにしてこの伊400を使って行こうかと思案していたのである。
「艦長、日本での大東亜連邦構想ですが国内でデモを起こしていた者達が矛を収めたようですね?」
「……ああ、やはりな? 笠間総理が向こう三年間は消費税を始めとする税金を免除するという英断のお陰だな? てっきり真崎三等陸佐が反対するだろうと思っていたが中々、匹夫の勇ではないな」
「しかし税金免除となるとかなり余裕ができますね? 何しろ、総支給の半分が税金に取られるとの事ですからね? これをきっかけに子供も増えるかもしれませんね?」
日下と橋本が会話している時に西島がやってきて今しがた横須賀から第七艦隊全隻がグアム方面に向けて出撃した事を報告してくる。
「そうか、なら……ロボス大将に挨拶するかな? 第七艦隊のど真ん中に浮上して歓迎してもらうとするかな?」
「ははは、この船なら可能ですな! ソナーにも見つからず堂々と浮上しましょう」
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