第22話:激動の幕開け?

 クーデター翌日、国会議事堂前の広場には世界各国のマスコミがスタンバイしていて一時間後に開始される会見を今か今かと待ち構えていたのである。


 どんな内容が語られるかについて各国は独自に考えていたが各国、バラバラであったので熱気は凄まじかった。


 そして一時間後……今回のクーデター首謀者と中心的役割を果たした4名の一尉が姿を現して用意されている椅子に座ると各々の自己紹介から始まる。


「今日、この会見にお越しの皆さまに私達の自己紹介をしたいと思います。私は『真崎純一郎』三等陸佐で右から『野中郁美』『山縣有久』『中島隆二』『片山信夫』全員が一尉の階級です。それではこれよりこれからの事を話したいと思います。


 会見は一時間程度で終了したが内容は凄く濃い内容で会見の途中でも記者達はリアルタイムでノートパソコンやSNSを使って本社に報告していた。


1. 徴兵制はこれからも一切、実施する予定なし。(やる気ない者がいれば邪魔)

2. 新政権は軍事政権ではなく引き続き笠間総理にこの国を導いてもらう。

3. 今年の4月1日付けで自衛隊を正式に日本国防軍と名を変えて階級も世界と同じ名称にする。

4. 米国との関係は従来通りで米軍指揮下の元、運用される。(本音は完全独立)

5. 新たに横須賀鎮守府・呉鎮守府・佐世保鎮守府・舞鶴鎮守府を設ける。


 上記の話が終わり各国の新聞社たちがそろそろ終わるのかな? と思った時に真崎が立ちあがって真剣な表情になり前を見据える。


 何を喋るのだろうと記者達が思った時、真崎が発した内容に会場のみならず全世界が唖然とした。


「混沌とした世界を安寧に収める為、本日ここに“大東亜共栄圏”の設立を宣言して現時点で賛同してくれている国々を発表します」


 彼の言葉は一瞬、何を言っているか分からない人が沢山いたが時間が経つにつれて驚愕する。


「中華台湾国・フィリピン・インドネシア・パラオ共和国・ナウル共和国・ミクロネシア連邦・スリランカです」


 真崎の宣言が終わった時、参加表明した国々の大統領等がTV画面に登場して海洋国家日本と共に太平洋の安寧及びASEANを超える強い組織を目指す事を宣言する。


「皆様も御存じの通り、米国はデフコン1を発動して核戦争準備に入りましたが現時点では通常兵器のみの使用段階です。現在、R国と協議を重ねて戦争に突入しないように努力していますがもし、決裂して世界核戦争に突入する事になった時、第三の勢力が彼らの間に入って戦争を回避しなければいけません! その為の第一歩が大東亜共栄圏です。尚、我々が最終的に目指しているのは大東亜連邦共和国で国境の廃止及び経済貨幣等の統一、そして大東亜連邦軍として垣根を取り払い一つの連邦軍として運用を目指しています。そこまで行く過程は相当、難しく最悪、画塀の餅となるかもしれませんが最後まで我々の命を掛けて目指します」


 真崎たちがTVカメラの前で深々とお辞儀をした後、退出していくが凄まじいフラッシュと共に怒涛の質問が飛び交うが真崎は紙面に質問を書いて提出してくださいと言う。


 全員の質問に対して真摯に答えていきますと。

 伊400では、日下以下乗員全員が予想を遥か斜めを超えた内容で唖然としたり茫然としていたが順次、我に返っていく。


「……大東亜共栄圏……久しぶりに聞いたな? あの真崎三等陸佐の内容って……俺達が日本本土決戦に勝利して別の世界に飛び立った後の日本が目指した筈」


「しかし、賛同した大統領等はいつ、接触したのだ? いきなり賛同するか?」


「艦長、もしかしたら……彼らも別世界で生きていた時の記憶を持っているのかも? そうなれば説明もつきます」


「成程! そう考えれば確かに……。するとだぞ? あの真崎という人物も何処かの平行世界での記憶を持っているのかもしれないな」


「こうなれば早めに彼らと接触した方がいいかもしれませんね? 私達の事を知っているかもしれませんし?」


 その時、“うりゅう”からTV通話呼び出しコールが鳴り、日下がTV通話モニターに出ると興奮した表情で答える。


「大東亜共栄圏で大東亜連邦ですか! 響はとてもいいですね? しかし、世界がこんな事を黙っている訳はありません。特にC国は相当、反発どころか国連の敵対条項を持ち出して攻撃してくるかもしれません」


「そうですね……。所で富下さんはお気づきになりましたか? 賛同した国々は全て大陸の国ではありません。ベトナムやタイ・カンボジア等のアジア各国はどうするのでしょうかね? しかしあの真崎という人物は只者ではないという事です。まだまだ隠し玉や決め手となる札も持っているかと? まあ、C国の海軍力は壊滅していますし核ミサイル戦力も破壊しましたから米国海軍以外は脅威ではないですね? 最も……米国がどう出て来るかによりますが?」


「日下艦長? もし……もし……米国が敵対した時にはどうするのですか?」


「……その時は……日本国に害するならば、米国海軍とはいえ、全てを葬ります。その気になれば半日で米海軍の存在は消滅です。まあ、米国海軍……特に第七艦隊司令官『ロボス』大将とは別世界で酒を酌み交わした仲なので近い内に接触を試みるつもりです」


 日下の言葉に改めて富下は絶句するのだがこの大東亜共栄圏構想を抱いた真崎という人物は正に伊400潜水艦を意識していると思ったのである。

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