第21話:令和維新の内容

 その日、2月26日の朝刊は全国規模で配達されなかったが各地で号外が発行されて一時は日本全国が騒然となったが自分達の日常を壊されない限り国民の大多数は無関心で混乱も無かった。


 だが、SNS界隈ではすさまじい勢いでこのクーデターの事について飛び交っていて色々な意見が投稿されていた。


 その最中、26日正午に日本国民及び世界に向けたメッセージ放送を流すとTV電波やラジオ周波数によって拡散される。


 この一連の内容を室戸岬沖水深70メートルの地点で聞いていた日下達は予想だにしなかった事について唖然としていたのである。


「まさか……2・26事件が令和の時代で起こるとは……想像もつかなかった」


「昭和維新を思い出しますね? 艦長や私は一介の士官で海の底で勤務していましたからね? 知った時は驚きました」


 日下と橋本は頷きあっていたがこれからどうなるのかという事について話をし始めたが通信士から今回の首謀者を始めとする者達の演説が始まりますとの連絡を受けて発令所に行く。


 発令所の壁に据え付けられているモニターを見ると国営放送局のステージが映っていたのである。


「一体、首謀者は誰だろう? そして彼らの目的は? 米国との関係は? 無謀すぎると思うのだが……?」


「ええ、昭和の青年団の亡霊が彼らに乗り移ったのでしょうかね? まあ、今の平和ボケしている国民は深く考えていないと思いますね?」


「ああ、それにしても総理や防衛大臣の安否が分からないな?」


 日下が本気で両名の安否を気にしていた時、富下から通信が来る。

 TVモニターに映った富下の表情は憔悴していてボヤキながら現状を説明してもらうがあまりにも事に沈黙状態であった。


「自衛隊の半数が賛同……で警察官も参加か! 今回のクーデターは昭和とは違うな」

「艦長、放送が始まります!」


 西島の言葉に日下はモニターに目を移すと陸上自衛隊三等陸佐の階級を付けた青年が登壇する。


「若いな、だが鋭い眼光を持っている。こんな平和ボケをしている日本人とは全然違うし気骨があると見える。生まれた時代が間違っていたな、石原莞爾さんとは馬が合うような気がする」


 そうこう言っている内、三等陸佐の青年が演説を始めるがその内容を聞いていくうちに日下達は眉を潜めていき1時間もの演説が終わるまで終止無言だった。


「……思い切った事を言いましたね?」

「ああ、確かに。だが、共感できない国民は反対するだろうね?」


1.日本国憲法の第9条を廃止する。

2.政権が安定するまで“緊急事態条項”の導入。

3.非核三原則を撤廃して核兵器の保有を正式に認める。

4.自衛隊の称号を廃止して正式に国防軍として日本空軍・日本陸軍・日本海軍の名 称を使用する。

5.教育勅諭を復活させて義務教育に組み込むと共に国歌・国旗を敬うように指導すると共にそれを拒否した者は国籍・住民票を剥奪して不法移民として扱う。

6.スパイ防止法を更に強化した法律を近日に発令する。死刑か強制労働刑の二つ。

7.公安警察の権限を強化して反日を唱えた者や行動を犯した者の逮捕状無しの逮捕権を認める。

8.現在、乱立している政党を全て解散して二大政党のみにする。

9.労働基準法の強化を図り、ブラック企業と言われている会社は有効期限内にホワイト企業と呼ばれるようにすること! 出来ない場合は国家反逆罪を適用する事を決定。


「まあ、上記の内容は日本以外の国にとっては当たり前の事だな? 第9項目は飴と鞭で言う飴の部分だな。さてさて、どうなるのだろうか? 世界が黙っているとは思えないがね?」


 その時、富下から緊急無線が入りTVモニターに切り替えると笠間総理と直木防衛大臣の安否がわかったとの事で総理は無事で危害も加えられなく官邸の一室に軟禁されていて直木防衛大臣は強引に職を解かれて郷里に追放されたとの事。


 日下は二人の安否がわかり安堵したが富下に先の内容をどう思うのかと尋ねた所、彼が思っている事を聞くことが出来た。


「私も概ね賛成ですが政府の舵取りは誰がするのでしょうか? まあ、本来ならあの三等陸佐がトップに立つでしょうが彼は自ら政権運営はしないと思います。笠間総理に引き続きトップに立ってもらうつもりだと私は考えますが?」


「私も富下さんと同じ考えですね。軍事政権は流石に印象悪いので国民に人気がある笠間総理を選ぶと思いますが笠間総理はうんと言いますかな?」


「……まあ、総理も強い日本国を目指していましたから案外、素直に引き受けるかと思いますね?」


 そこまで話し終えた時、富下が何かを思いついたようで表情を変えて日下に言う。


「日下艦長、今思いだしたのですが国連には、敵国条項というのがありましてかつての連合国の敵に適用されていて現在は死文化していますがもしそれを持ち出されたら日本は全世界から敵として認定されて四方八方から攻撃を受ける事になります」


「それは私も承知していますがそんなことはさせません! 日本に危害を加える存在はこの伊400の全武力を以て阻止します! 最も国内の事には干渉しないつもりです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る