第20話:令和××年2月26日……歴史は再び!

 令和××年2月26日午前2時……関東一帯は季節外れの大雪であり東京も又、数センチの雪が積もっていて交通が大いに乱れていた。


 その為、都民も早く帰宅して睡眠を貪っていたが例外なのは警察・消防、そして自衛隊は緊急出動が発令する事に備えていた。


 だが市ヶ谷基地では異様な雰囲気が辺りを支配しており続々と自衛隊員が集まっていたのである。


 名目上は災害派遣要請が出た時の為だとの事だがそれにしては戦車や装甲車が運び込まれていた。

「よし、同志達が東京の発電所を爆破したら東京中が停電になる。それを合図に出動する!」


 陸上自衛隊一等陸尉の階級章を付けた青年が横にいる一等陸尉の人物に声を掛けると頷き0230時、日本全国の基地で同志達が立ちあがるとの事を言うと彼は満足そうに頷く。


「都内基地及び全国合わせて総勢4500名が決起して首相官邸を始めとする四大新聞社・警視庁・国営放送局・財務省・外務省・防衛省を占拠する! それと皇居に通じる各門は封鎖して誰も出入りさせてはいけないぞ? 例え皇族の方でも」


「ああ、かつて昭和初期にあった2・26事件とは全く違う! 海上自衛隊・航空自衛隊の半数が賛同してくれた。しかも最新鋭の兵器も一緒だ」


「警察組織も賛同してくれて全国で3000名程だが共に決起してくれる。目標は各県警本部だな」


 二人の会話中に二人の自衛隊員がやってきて敬礼をしてお互いに挨拶する。

 海上自衛隊一等海尉と航空自衛隊一等空尉の二名であった。


「俺が乗船している空母“いずも”の9割が決起に賛成してくれている。艦長は呑気に鼾をかいて熟睡しているとの事だ。パワハラ野郎だからどんな目に逢うか知らないがな?」


「まあ、上官に対してはそれでいいがそれ以外は決して死傷者は出すな! 政治家の殺害は厳禁だぞ? それは徹底させているが」


「二年前なら先ず反日共を始末したが笠間総理の剛腕によって殆ど粛清された。優れた方達だ! 尊敬に値するから決して総理と防衛大臣には危害を加えるなよ? 我らの思想に賛同してもらわないといけないからな」


「所で米軍基地の方は大丈夫なのだろうな?」


「ああ、その方面はあの方にお任せしていてこちらには一切、手を出させないという事だから安心して欲しい」


「今こそ、日本が主導となり真の大東亜共栄圏を設立せねばならない! C国もK国も大打撃を受けているからこの日本に手を出す余裕がない!」


 その時、三等陸佐の階級を付けた若い青年がやってくると4名の青年は敬礼をする。

 彼も又、敬礼を返す。


「山縣・中島・野中・片山! 間も無く決起の時間だ! 今日より新たな日本の歴史の始まりだ!」


「はい! 閣下のおっしゃる通り真の日本国の幕開けです」


 そして……0230時、東京中が停電になる。

「全軍、進め!!」


♦♦


 その頃、首相官邸にて笠間総理と直木防衛大臣に佐部官房長官の三人が熱い緑茶と饅頭を美味しく味わっていた。


「総理、この一時の間ぐらいは全て忘れて寛ぐのがよいと思いますぞ?」


「その通りです、夜が明ければ忙しくなりますからね?」


 笠間総理は二人の言葉に笑みを浮かべながら頷くがふと、伊400や日下の事についての話題になる。


「本当にあの方達はもうこの世界にいないのかしら? 私の感はよく当たるとの評判ですがまだこの世界に留まっているとしか思えないのですが……」


「……ふむ、まあこの騒動は総理もそうだがわしも彼の正体を見抜けなかった。まさか米国に機密を渡していたとはな? 本当にわしも耄碌したよ、だが……あの潜水艦の存在は一つ間違えば我が国に対して全世界が敵に回る可能性もあるという訳じゃ」


 そこまで彼が言った時、突然、停電となるが直に非常灯が付く筈であったが一向にも点かないので不審に思い護衛官を呼ぼうとした時にLED電灯を持った警備員が駆け付けてきて急報を告げる。


「ク……ク……クーデターです! 自衛隊によるクーデターが発生しました!」


 笠間総理達は一瞬、自分の耳を疑ったが直に行動に移す。

 すると小銃を持った十数名の自衛官が雪崩れ込んできて三人に銃を突き付けて身柄を拘束しますと言う。


「貴方達は何をしたのか分かっているのですか!? 今の時代にクーデター!? 気違いでもそんな馬鹿な事は考えないわ! 今すぐに武装を解いて降伏しなさい!」


 流石は女傑であり彼女の雰囲気に決起兵達はタジタジになるがそこに一人の青年が入ってくると三人に敬礼をして自己紹介する。


「初めまして、笠間総理閣下! 私は陸上自衛隊一等陸尉『野中郁美』です、これより閣下達を拘束しますが身柄の安全は保障しますのでご安心してください。しかし、これ以上騒げば手荒な事になるかもしれませんのでおとなしくして頂ければ幸いです」


 彼の言葉に総理は黙ると直木防衛大臣が代わりに猛抗議するが彼は一言だけ彼女に言う。


「餅は餅屋です! 自衛隊の事を何も知らない防衛大臣は速やかに退場して故郷でゆっくりとして頂きます」


 佐部は何も言わなかったが堂々とした態度で彼に年寄りだからきちんと三食出して暖かい布団で寝かしてくれよなと言うと彼は何も言わずに連れて行けと言う。


 日本全国での決起は大成功に終わり、お日様が昇り始めた時には目標全てを制圧したのである。

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