第40話:日下の決断
金門島陥落の報は日本を始めとする大東亜連邦の各諸国にも衝撃を以て知らされて連盟盟主である日本に問い合わせが続出する。
「大丈夫ですか? もし、奴らが攻めてきても助けてくれるのですね?」
殆どがそういう確認だったが笠間総理は自信をもって決して貴方達の主権を侵攻させませんのでどうか安心して下さいと言いひとまずの混乱は終了する。
第一艦隊が戦闘配置をかけて準備をしている同時刻、伊400でも日下達が会議をしていて紛糾していたのである。
「艦長、私としては米国艦隊の動向を探ると共に行動を起こした時、直ぐに対処できるようにこの近辺にいるべきです」
「いや、先に第一艦隊を助けたほうがいいのでは? ロシア潜水艦がウジャウジャいるのを確認していますし日本も勿論、探知しているでしょうが?」
「先手必勝で“晴嵐”三機でC国大陸本土の基地を爆撃したらいいのでは?」
日下も色々と考えているが中々纏まらないのと迷っていてどちらを優先するか色々と頭の中でシュミレーションしていたが通信室からの報告で一気に考えがまとまる。
「い、一大事です! グアム方面から第七艦隊出撃しました! それと……第三艦隊と第五艦隊もそれぞれ基地から出港した模様です!」
「なんだって!!??」
司令塔にいた全員が素っ頓狂な叫び声を発するが誰もそれを気にすることなく全員が日下の方へ顔を向ける。
「おいおい……野郎の顔を向けられても嬉しくもないぞ? ……まあそれはおいといてだ! 兼ねてから決めていた米国艦隊を阻止する行動を執る! これより洋上航行に切り替えて全速力でグアム方面へ向かう。そこでロボス司令に再度、確認してあくまで敵対するという事になれば……」
日下の言葉はここで途切れたが皆が何を言っているか全員が感じる。
そして、伊400は目立つように海上航行に切り替える為に浮上する。
独特のフォルムを持つ艦橋が現れると共に巨大な船体が海面に出て艦橋ハッチが開いて日下と橋本が艦橋甲板に出る。
双眼鏡を取り出して周囲を見たが勿論、何も見えず、日下は双眼鏡を降ろすと橋本にこのままグアム方面に向かう事を言う。
「武御雷神の矛を使用するおつもりですか?」
「……そうだな、時間をかけるわけにはいかないからな」
「…………」
「……晴嵐を出撃させよう! 三機全てだ」
「了解しました! 直ちに」
橋本は備えつけの耐水マイクに晴嵐射出命令を艦長から受命した事を伝えると航空科から了解との報告が入る。
数分後、格納庫扉が開いて晴嵐が運び出されて数分後、轟音を上げて飛び立ちそれを三回繰り返すと再び格納庫扉が閉まっていく。
日下達は三機の晴嵐を見上げながら敬礼をして見送ると晴嵐も伊400艦橋真上を数回旋回すると一気に加速して水平線に消えていく。
「……このまま洋上航行続ければ直ぐに衛星でキャッチされるだろうね?」
橋本は無言で頷くと水平線の方を見る。
日下も一緒の行動をして眺める。
♦♦
その頃、グアムを出撃した米国海軍第七艦隊は威風堂々と日本本土へ向けて出撃する。
「最終目標は東京湾か、そこで日本国に対して無条件降伏を突き付けるという事だな? だが、そうやすやすといけないと思うが? 彼等にはあの白鯨がついているのだからな? まさかワシントンはその存在を忘れているのでは?」
超空母“リンカーン”艦橋にて司令官ロボス大将が眉を潜めながら言う。
大統領が暗殺されて日系人副大統領がそのまま自動的に臨時大統領になる予定だったが何故かK国系上院議員長『ウイリアム・キム』が大統領に選出されて彼は日本国に対して国連敵対条項を改めて適用すると発表して第七艦隊に日本制圧を大統領令を以て発動したのである。
「まあ、彼の目的は荒廃したK国復興を目指しているのだろうな。それと米国内のK国系やC国系が日系人を集団で襲ってリンチや略奪等をしているというが政府は何も対策はしないと言う。一体、我が国はいつから訳が分からない何処の馬ともしれない東洋人がこの米国の舵を取っているのだ?」
ロボスの言う事に他の者達も頷くが我々はあくまでも星条旗に忠誠を誓う誇りある米国海軍軍人であるために粛々と行動しなければいけない事は全員が認知している。
「今回、米国の技術の粋を集めた兵器を持ち出していますのでこれがあれば装甲が固いあの白鯨をも粉々に出来ます」
ロボス達が外を見ると戦艦“ミズーリー”“ニュージャージー”の二隻が随伴している。
記念館として展示していたのを急遽、改造して再び前線に戻したのである。
「あの戦艦の特徴は、41センチ砲三連装三基9門のレールガンを搭載しています。最も莫大な電力が必要なのでたった一斉射のみですが合計18発のレールガンを以てあの白鯨の装甲を貫通させて撃沈するとのことです」
「ほう……レールガンで放たれる41センチ砲弾の威力は凄まじいだろうね? うむ、あの白鯨もこの世界で終焉を迎える事になるのだな?」
皆が頼もしそうに歴戦の老齢艦を眺めていたがロボスのみ得体の知れない不安が消えていなかったのである。
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