第9話:伊400の神髄
世界中の空中に日下が映し出されると全世界中の人間が空を見上げる。
「初めまして! 私はこの世界とは別の平行世界から来た大日本帝国海軍少将『日下敏夫』と言います! 諸君達も見ての通りこの世界では未だ実現できていない技術をこの船は持っている! その船の名は……伊400、この世界でも一世紀前に旧日本海軍が建造した伊401と同型艦に属する! まあ、私がいた世界ではこの伊400が最初の船であったが……」
日下の演説が始まったと同時に“リンカーン”では部下に旧日本海軍艦艇の図鑑を持ってくるように命令すると引き続き日下と名乗った人物の演説を聞く。
「私は諸君達の時間で言えば実に300年間もの数々の平行世界を旅している。全て共通するのは我が祖国、日本という四季に溢れ美しい自然を持ち誇りある武士の心を持つ日本国の危機の時に出現する存在である」
この日下の演説はそのまま二十分間程続き最後に締めの言葉が日下の口から出ると世界中の国のトップは戦慄する。
「世界のお歴々の方々に申し上げる! 我が祖国である日本を汚い土足で蹂躙するような行いをする国は……この伊400の全攻撃能力の洗礼が降り注ぐと思うが良い! それでは失礼する」
世界中の空中に展開しているホログラムが消えると甲板上にいた日下は司令塔の中に入って行く。
司令塔では乗員達が拍手を以て迎えてくれる。
「流石は艦長! お見事な演説ですな」
「今頃は世界中が仰天しているかと?」
「これからどうしますか? 恐らく私の予想ですが遥か上空から攻撃が来るかと思いますが?」
西島大佐の言葉に日下は少しだけ頷くとまあ、お手並み拝見とするかな? と言い艦長席に座る。
西島の言葉通り、ある国が宇宙空間に設置している攻撃衛星“ゼウス”から神の矢と言われるタングステンで出来た先端が鋭い巨大な棒が撃ちだされようとしている。
「この世界に存在してはいけない超ド級危険な代物だ! この神の矢であの潜水艦を沈める」
某所で衛星から映し出されている伊400を見ながら臍を噛む謎の人物が口を歪めながら呟く。
「閣下、あの潜水艦の装甲はかなりのものかと?」
「心配するな! この神の矢はかのエリア51に安置されているUFOからヒントを得て供与された物だ! いかなる物質も貫く物だ。4年前に起きた謎の爆発事故もこの神の矢だ」
「そうですね、某中東の国に設置された鋼鉄の塊で出来た要塞の厚さ5メートルの天蓋を地下100メートル直下でも木っ端微塵に破壊した代物ですからね?」
「マッハ15の速度で放たれる神の矢を迎撃できる存在は別世界の技術であろうと破壊は出来ない!」
そうこう話している内に攻撃衛星“ゼウス”にエネルギーが充填されていく。
このゼウスには4本の神の矢が装填されていて全てが伊400の甲板にロックオンして今か今かと発射を待っている。
「ふふふ、この神の矢で……この世界で終焉を迎えるが良い! 全弾発射!!」
宇宙空間から放たれた神の矢4本が成層圏に達すると一瞬でマッハ15まで加速して伊400に向かって行く。
一方、伊400ではその一連の行動を全て把握していて既に対弾道弾迎撃ドローンロケットが装填されていてレーダーでキャッチしたと同時に発射する。
4発の迎撃弾がピンポイントで神の矢に直撃したと同時に粉々に吹き飛ばしてしまったのである。
「よし、迎撃完了だが……あのような代物を放っておくわけにはいかないな? 後部超電磁砲(レールガン)にて破壊する!」
伊400の後部15センチ超電磁砲に特殊砲弾が装填される。
この砲弾は100年前に35世紀の別世界の日本から技術供与を受けて完成した砲弾でマッハ30という超音速で進む代物である。
凄まじい震動と轟音と共に特殊砲弾が放たれると一瞬で1000キロ上空に展開している攻撃衛星“ゼウス”に命中して木っ端微塵に破壊したのである。
「ば、馬鹿な!!?? ありえん!」
「…………閣下、信じられません!」
謎の人物は真っ赤な表情をしながら怒り狂った時、頭の血管が切れてしまい床をのた打ち回って口から血を吐いて絶命してしまう。
伊400司令塔で日下が満足そうに笑みを浮かべると橋本が傍に来てこれからどうしますか? と尋ねて来る。
「……そうだな。一旦、“うりゅう”と回線を繋いで欲しい」
一分後、モニターに富下二等海佐が映し出されたが彼の表情は信じられない物を見たという表情をしていた。
「……日下艦長、映像を拝見しましたが……何というか……その、絶対に貴官達を敵に回さないと誓いましたよ。SFやアニメで見た兵器を現実で見てしまいましたので今でも夢を見ているかと感じます」
富下の言葉に日下は困った表情をして静かな笑みを浮かべてまあ深く考えないでおきましょうと言う。
「先島諸島に展開しているC国軍も恐らくパニック状態に陥っているかと。日下さんから提供された光学迷彩スーツを着た特殊部隊が各島に上陸しましたので思いきり暴れてもらいます。明日には“おおすみ”“しもきた”による陸上自衛隊上陸が行われますので諸島奪還も視野に入りました」
日下は頷くと“おおすみ”“しもきた”の護衛をしましょうと言うと富下は敬礼を以てお礼の言葉をいい通信を終える。
日下はモニターの通信を切ると橋本の方に顔を向けると命令を下す。
「これより当艦は“おおすみ”“しもきた”の護衛に入る! 潜航開始!」
伊400はその場でゆっくりと沈降していくがその様子はばっちりと偵察衛星で監視されていたのである。
最も日下達はそれを承知の上であった。
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