第2話:日本国分断の危機、そして……!?

 その日、総理大臣一行は靖国神社へ閣僚として正式に参拝する。


 この頃には表立って反対する者はいなくSNSや一部のTV報道で批判をしているだけでありそれもスパイ防止法に引っ掛からないギリギリを攻めている。


「つい、二年前までの時まで、今のようなことすればもう収支がつかないほど、大混乱していましたわね?」


 笠間総理はしみじみと防衛大臣の直木に話しかけると彼女も深く頷く。


「こうして堂々とここに参拝した今までの現役総理は数えるほどしかいません、総理の果断な政策及び勇気は後世の歴史にも記されると」


「何も出ないわよ? 誉めても」


 そして、一連の参拝が終わりの終盤、靖国神社の宮司が総理の傍にやってきて戸惑いの表情を見せながら何かを呟く。


 一瞬、吃驚した表情を見せた総理であったが直ぐに元の表情に戻ると総理官邸に戻るために車に乗り込む。


 直木防衛大臣も一緒に乗り込むと車列はゆっくりと進む。


「何か宮司様が総理に呟いていましたが? 何かあったのですか?」

 防衛大臣の質問に総理は一言だけ呟く。


「……靖国に眠る英霊達がこの国の危機を訴えていると……ね。そして、英霊達の意思を汲んで時の漂流者が流れつくと……」


「それって……もしや?」


「ええ、何かが起きるかのしれませんね、十中八九C国でしょうね? 潜水艦“うりゅう”に極秘連絡して富下二等海佐にこの件を伝えて頂戴」


 総理の命令に防衛大臣は頷くと先に防衛省まで行って欲しいと運転手に言う。

 総理もそれでいいわと言い車は防衛省に向かって行った。

それから数日後、日本国を揺れ動かす事態が発生した。


 先島諸島に所属する各島の沖合で数十隻単位の漁船が難破して保護を求めてきたが各島の長は沖縄県の県庁にどうすればいいかを尋ねると沖縄県知事『多摩川ゴロー』は漂流する漁船があれば全て救助するように連絡する。


 自衛隊が何か言ってきても人道的と言って無視してもいいと連絡する。


 その通りに各島で大量の漁船が保護を求めてきて全てを受け入れて漁船に積んでいた大きな箱を次々と荷揚げする。


 その夜、その箱の中から国籍不明の武装集団が大量に出現して一夜の内に先島諸島は陥落した。


 特に島内における子供老人を問わず男性は全て一箇所に集められて全員が虐殺される。


 これは戦える者を一人でもいなくさせるためであった。


 異変を察した陸上自衛隊だったが本格的な配置が一週間後であった為に完全武装で迎え撃つことが出来なかった。


「くそ! 奴らの武器は全てC国製だぞ!」

「んな事ぐらいは分かるぞ! C国の侵攻に間違いない」


 少数の自衛隊員は勇敢に戦ったが多勢に無勢でその日の夕刻、全員が戦死する。


 この凶報は直ちに東京に知らされると官邸で朝食を取っていた総理は緊急会議を開催するために各省の責任者に集合する様に伝える。


 三十分後には各省の責任者が官邸に集合する。


「全員揃ったようですね? 我が国存亡の危機です」


 総理が説明していくうちに、みるみる表情が変わり憤怒する。

「絶対、C国でしょう! 武装勢力も間違いなくC国ですが沖縄県の知事も絶対に一枚嚙んでいますね、何しろ大のC国大好きですから」


「ええ、後回しにしていたのが仇になったわね、この緊急事態を収束させたら沖縄県知事を【法定刑は死刑のみ】外患誘致罪で逮捕拘禁します! 我が国の大事な国民を残虐に殺したことを後悔させてやります、生かさず殺さずの拷問をして全て知っている事を吐き出させて公開処刑を以て処断します!」


 そして閣僚一致で陸海空自衛隊の総力を先島諸島へ派遣する事が決定して直ちにその命令が防衛大臣を通じて全国の軍港及び航空基地等に指示が出される。


 それから四日後、日本全国いや、世界が驚天動地な事案が発生する。


 北海道に駐留している世界最強の機甲師団の一つ“士魂”の名称を持つ陸上自衛隊第七機甲師団及び普通連隊が函館港から輸送艦“さがみ”“うらが”“はるかぜ”“むつ”の四隻に分乗して出港する。


 特に輸送艦“むつ”は四万トンを誇る輸送艦で、戦車を始めとする機動車両を運搬する役目を持つ。


 その輸送艦隊が佐世保に到達した時に北海道知事による北海道国独立宣言を全世界中に発表すると共に北海道知事『中国金治』が江戸時代から迫害されていたアイヌ人を保護して権利を守るために独立をすると宣言する。


 それと同時にC国とR国がこれを承認して独立したばかりの北海道人民社会共和国を守備する為に人民解放軍を駐留させると発表する。


 その瞬間、北海道に散らばっている工作員が一斉蜂起して北海道の大都市を始めとする各通信装置やケーブル、軍用レーダーサイト、鉄道網を次々と爆破していき北海道の状況が不明になる。


 日本海側の北海道の各海岸に人民解放軍を載せた空挺部隊や潜水艦やR国漁船に扮したC国の兵が続々と上陸する。


 完全に奇襲された状態でこの報告を聞いた笠間総理は流石に絶句して椅子に崩れ落ちたが直ぐに緊急閣僚会議及び国会を開設する。


 この事案にC国やR国そして、残存するK国贔屓の議員がこれ幸いと騒ぎ立てて総理の責任を追及して総辞職を求める。


「この騒動を素早く片付けないととんでもない事が起きるわね、直木防衛大臣に尋ねますが自衛隊の戦力を半分に分けて二正面攻撃は……無理よね?」


 直木総理も暇を見つけては軍事の事を勉強したので自衛隊の現有保有戦力では不可能だと思っていたが念のために尋ねると防衛大臣も不可能ですという。


「総理! 千歳空港が陥落しました! 幸いなことに自衛隊機の殆どは脱出に成功しました。後、残存する陸上自衛隊は五稜郭に立て籠もり抗戦しています」


 出席している数百人の議員やTV中継でこの国難を見ている日本国民の前で無様な姿は見せられないと総理は必死に余裕ある態度を見せていたが心の中は思考が作動していなかったのである。


 その大混乱の最中、那覇市沖を潜航航行している潜水艦“うりゅう”ではソナー員が独特の音紋を捉える。


「富下艦長!! この音紋は……! あの潜水艦伊400です」

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