第37話:千島列島奪回戦①
ある日の朝……突然、世界中で大規模な通信障害が発生して民間及び軍事関係はもとより全てにおいての通信等が麻痺になる。
世界中で大混乱が起きて全世界の空港も航空機が飛び立てない状況になり閉鎖が相次ぐ。
勿論、TV・ラジオといったいかなる通信手段が出来ず、レーダー関係も不通になり前代未聞の大パニックが起きる。
間も無くこの原因が電離層と呼ばれる帯が何かの原因で無茶苦茶になった事が分かるがそれを各国で共有することは出来なかったのである。
完全復旧まで一週間前後だという事が計算されて各国はその間においての対策が取られていくなか、千島列島北方に向けて日章旗と旭日旗を掲げた日本艦隊が航行していたのである。
ヘリコプター搭載護衛艦“DDH199ふそう”艦橋で司令官である田端少将が口をへの字に海面を眺めている。
「……よくもまあ、こんな作戦を思いつくな? 全世界規模での通信障害を発生させて全てにおける電波関係を使用不能にするとは」
「全くです、国防省の考える事には驚きですな? あらかじめ我々は知っていたので対策は取れていますが」
この一連の世界規模での通信障害は千島列島奪回作戦において人工衛星による艦隊の位置を知らされないようにすることであった。
「まあ、そのお陰で明日には占守島沖合に達する事が出来るという事だ! いよいよ我が国の進撃が始まる時だな」
田端は副官の山口に笑みを浮かべると外の方を見る。
結構な霧が出ていて各艦は灯火を頼りに航行しているのである。
今回の千島列島奪回作戦参加艦艇はヘリ空母“ふそう”イージス艦“ながと”“むつ”対艦ミサイル搭載護衛艦“きくつき”“はるつき”“なつかぜ”“ふゆかぜ”“ろっこう”潜水艦“かんりゅう”“どくりゅう”“かりゅう”の11隻が戦闘艦艇である。
そして後方に最新鋭4万トンを誇る輸送艦LST5001“さがみ”に同じく4万トン補給艦AOE567“みかわ”が参加している。
その他にLCU輸送艇10隻・LCACエアクッション艇20隻も付随しているのである。
そして輸送艦“さがみ”に搭載されているのは50両の74式戦車を始めとする各種戦闘補給偵察車両を50両載せていて人員も5000名が搭乗している。
勿論、空軍(旧航空自衛隊)も参加している。
「今回は、択捉島・国後島・色丹島・幌筵(パラムシル)島・占守島の5島を完全占領して駐留部隊として各1000名を駐屯させるとの事だな。千島列島を制圧した後、第二陣として対空兵器等の配備をする手筈となっている。勿論、他の島々にも少数ながらの兵士を配置する予定との事だ」
田端の言葉に艦橋の皆が頷く。
その時、艦橋に警報音が鳴り響く。
「どうした?」
「し……し……司令!! 前方2万7千メートルにてロシア艦隊を発見しました! 巡洋艦クラスを含む約11隻規模です」
「何!? レーダーは何をしていた? ……ああ、そうだな、使えなかったのだな。総員戦闘配置だ! 急げ」
他の艦艇でも総員戦闘配置のベルが鳴り響く。
「お前達、急げ!! これは訓練ではないぞ! 実戦だ!」
流石は訓練を積んだ乗員達であった為、直ぐに全艦艇にて戦闘配置が終わり“ふそう”から対潜ヘリが離陸する。
「艦長! 対艦ミサイルが使用できませんので各艦に搭載されている単装速射砲による砲撃のみです! 最も敵も一緒ですが」
「……むう、21世紀に100年前の砲撃戦での戦いになるとは……な、各艦に通達だ! レーダー射撃は出来ないが日本伝統の砲撃を露助に見せてやれ!」
田端の言葉におおっ! と歓声が沸く。
各護衛艦が各々目測と併用して砲塔を旋回させていく。
「撃ち~方~始め!」
「撃ち~方~始め!」
各護衛艦からドンドンドンと単装砲から砲弾が吐き出されてロシア艦艇に向かって行くが命中せずに海面に落ちて派手な水柱が立つが命中していなかったのである。
皆が唖然としていたがそれ以上にロシア艦隊は大混乱に落ちていたのである。
数時間前に突如発生した電波障害で本国を始めとする味方基地との通信が出来ないのでウラジオストック港へ針路を向けて航行していたが突如、日本艦隊を発見してどうすればいいか分からなかったのである。
この艦隊は北海道に上陸する為に南下していたが晴嵐による攻撃で空母が撃沈されて反転してここまで来ていたのである。
「ヤポンスキーめ! 俺達をバルチック艦隊と一緒にするつもりか!」
「艦長、こちらも砲撃戦をしましょう!」
日本艦隊の初撃が終わった数分後、ロシア艦艇からも砲撃が行われるがレーダー射撃に慣れていたので見当違いの所におちる。
暫くの間、無駄撃ち合戦が行われていたが徐々に日本軍艦艇の砲撃精度が上がりやっと命中して敵艦から黒煙を噴き出す。
大歓声に沸くが砲撃戦で止めを刺す事が出来なかったがT字戦法を取れていたので正に下手な鉄砲、数打ち当たるで命中していく艦艇が増えていく。
ロシア艦艇が次々と炎上するが沈めるまでの威力がないため、決定打が取れない状況であった。
「何とかここで全艦を撃沈しないと後方にいる上陸艦艇に被害が生じるぞ!」
“ふそう”艦橋で仁王立ちになっている田端が戦況ボードを見ながら横にいる山口に言うと彼も苦い表情をしながら頷く。
「レーダー射撃や対艦ミサイル撃つための位置情報のインプットが出来ないなんて何て不便なのだ。100年前の大東亜戦争は凄かったとしかいいようがありません」
その時、ロシア艦艇が次々と海面から一瞬、浮き上がったかと思うと、凄まじい轟音と共に艦が真っ二つに割れてハの字になって次々と轟沈していく。
最後に旗艦であろうと思われる大型巡洋艦も轟音と共に船体から火柱を上げて真っ二つに折れて沈んでいったのである。
「……ロシア艦隊、全滅です……。何が起きたのですか?」
狐に化かされたような表情をする乗員達であった。
田端は直ぐに例のスーパー潜水艦の仕業だと思ったが詳細は後で皆に報告しようかと思い全艦艇に引き続き哨戒を兼ねて北上していく事を命令する。
「……敵ではなくてよかったのかな?」
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