第36話:極秘事項

千島列島奪回作戦二日前、首相官邸執務室にて笠間総理と真崎大将に国家公安警察長官『河野宗純』の三名が座っていた。


「河野長官、少し気になる情報が入って来たのですがあの伊400乗員の……副長である橋本大佐を尾行したらしいですね? 日下少将から抗議の連絡が入りましたがこれは貴方の指示ですか?」


 珍しく険しい表情をしながら笠間総理の言葉に河野は首を横に振ってそんな命令はしていませんと言う。


「では独断だということですね? それが本当ならそれなりの処分をしなければいけませんね? 上の指示なく勝手に行動する組織は暴走するわよ、時には?」


「は……はい、申し訳ありません! 直ちに彼を査問会にかけて今後、気を付けるように釘を刺しておきます」


 蛇に睨まれたカエルのように河野は頭を下げると真崎が言葉を引き継ぐ。


「貴方も見たでしょう? C国の核弾頭迎撃やSFでしか見たこともない荷電粒子砲の破壊力を? あれはこの時代の存在ではなく別次元の潜水艦です。乗員も同じ日本人ですが全く違う別次元の世界からきたのですからね、今後、気を付けてもらえばよろしいです。彼らの機嫌を損なえば今の日本を取り巻く状況が一気に悪化してこの国そのものが消滅するかもしれない瀬戸際ですので」


 河野長官は頭を下げながら総理執務室を退出していきドアが閉まると笠間総理は溜息を吐いて椅子にもたれかかる。


「まあ、最も彼らにとっては何の障害にもならないでしょうね? 所で真崎大将に確認しますが軍の展開は順調なのですね?」


 総理の言葉に真崎が頷いて各部隊の出撃及び燃料補給等の手配は順調に進んでいて予定通りに展開している事の事を話す。


「そう、分かりました。軍の事は全てお任せしますね? そうそう、今朝方に在日米軍から連絡があり日本全国に展開している在日米軍基地兵力全てを引き揚げてグアムまで撤退するとの事を通知して来たわ? 一応は国連による敵対条項が発令されていますが各国の足並みは全然、揃っていません。C国主席も地団太踏んでいるでしょう」


 笠間総理の言葉に真崎も頷くと現在、それ以上の脅威が発生しようとしていて下手すれば第三次世界大戦勃発の危機があるとの事を話す。


「ええ、先日……エルサレムの岩のドームが破壊されたようですね? イスラエル軍に。イスラム各国はジハードを起こすべきと激怒していてイスラエル大使館が襲われて大使たちが犠牲になったわね? 間違いなく中東で戦争がおきます」


「総理の懸念は間違いなく起きるかと? しかし……相変わらず我が国は平和ボケというか呑気ですね? まあ、K国との戦いからは多少変わりましたが?」


「……それでいいと思いますわ? 国民が生と死の瀬戸際を常に気にしなければいけないよりはね? そうならないために自衛隊から正式に軍隊に昇格させたのですから国民の為に命を掛けるのは当たり前です」


 真崎は頷くとやはり貴女は傑物で私達が忠誠を尽くすに相応しい総理ですと言うと総理は嬉しそうな表情は一切なく皮肉をいう。


「まあ、最も私と貴方の考えが平行線になれば私もどうなるか分かりませんね?」


「……そういう仮定の話はよしましょう。それよりも例の作戦を実施する時に恐らく世界中に影響が出るであろう例の件の対応を宜しくお願いします」


「ええ、決してその原因が我が国であると悟られないように実施します。それとその責任をC国にとってもらおうと思っています。既に手を打っていますのでお楽しみを」


 二人の会話が終わり総理は真崎を官邸の外まで見送ると真崎は敬礼をして迎えの車に乗って市ヶ谷方面に向かって行く。


「……さて、明日はフィリピンと台湾首脳と会談ね」


♦♦


 その頃、伊400司令塔内では伊勢神宮からの知らせで議論がなされていたのである。


「……祭主様によると南極点の特異点が歪み始めたとの事だが……これの意味はあまり歓迎したくないものだな?」


 日下が険しい表情をしながら南極方面の海底地図を見ながら橋本に言うと彼も困惑の表情を見せながら頷く。


「この地球上には4つの特異点があり、そこの地点で別世界と繋がっている場所ですがありますが……そのうちの一つである南極での異常ですか……? 間違ってもガイエス帝国の潜水艦とかは勘弁してもらいたいですね?」


「まあ、確かにそうだな? この伊400をもう少しで撃沈させらせそうになったのだからな……。あの時は死を覚悟したよ」


「しかしその歪みが最大まで達するまで未だ半年はありますのでそれまでにこの騒動を終わらせないといけませんね?」


 橋本の言葉に皆が頷く。

 日下も深く頷くと、吉田の方へ顔を向けて日本が千島列島奪回作戦実施時にする世界規模の混乱を起こす内容を言うと吉田は少しだけ考えて頷く。


「驚きましたがこの世界の日本では気象変換衛星が打ち上げられていたのですね? そして作戦実施時の当日に地球上の電離層を無茶苦茶に攪乱して世界規模の通信障害を起こす作戦ですか、いやはやスケールがでかいですね? 最も私達には何の影響もありませんが?」


「……その真崎大将か、本当に一度はあってみたいものだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る