第11話:笠間総理と首相補佐官

 全世界でのホログラム投影演説が終了してから四日が経過したがそれまでに日本国自衛隊は陸海空一体で先島諸島に上陸してC国軍殲滅に成功する。


 この一連の行動は東京にも送られて首相を始めとする各省大臣が参加する日本国会議中に知ることになる。


「お聞きになりましたか? 我が国が誇る自衛隊がC国軍を殲滅して占領されていた各島を全て制圧だとの事です」


 会議室全体が拍手に包まれて流石自衛隊だと皆が褒め称える中、笠間総理は亡くなった島民達の復興援助や戦死した自衛隊員の遺族に支払う予算獲得について財務省大臣に尋ねる。


「総理、予算の事は何も心配ありません! 長年、歴代内閣を始めとする各省が国民から必要以上に税金の名の元に徴収した資金がありますのでそれを当てます」


「それで結構です、遺族には手厚い補償をするべきです! それと……沖縄を始めとする諸島をC国に売り渡そうとした売国奴を捕縛したという事ですが国家公安委員長に尋ねますが一人残さずですね?」


 総理の厳しい表情に国家公安委員長は背筋が震えたがキビキビとした言葉で間違いなく46名を拘束しましたと言う。


「その中の首謀者数名の者は外患誘致罪で絞首刑にしなさい! 形だけの裁判は必要でしょうが? そして国内外に発表しましょう」


 淡々とした表情と口調で会議を進めていた笠間総理であったが会議の終盤時間になり改めて言葉に出す。


「一週間後、自衛隊総力を以て北海道奪還作戦を実施します! 降伏勧告を一切、受入れることはないようですので遠慮はいりません」


 総理の言葉に直木防衛省大臣が立ちあがりC国軍は道民を盾にしていますのでこちらとしてもやりにくい事を言うと総理も頷いてそこは考えがありますと言い、それを言う。


「恐らく被害が出ると思いますが全てが終わった後、三年間の間、無税にします! 消費税0は勿論、所得税・住民税・厚生年金等給料全支給額から引かれている全ての税金を0にします、車に掛けられている全ての税金もね? 但し、保険等のサービスはそのまま続行させます」


 総理の言葉に出席者達は驚愕するが財務大臣は通常の表情であった為、これは根回しが終わっているのだなと皆が思う。


「流石は総理ですね? 仁徳天皇の三年間無税に倣ったのですね? しかしこの政策で経済復興に繋がり活気が戻るでしょう」


 官房長官の言葉に総理は仁徳天皇と比べられても困りますと言うとこの案に賛成しますか? 聞くと全員が一致する。


 一連の会議は終了したが誰もが席を立たずに総理の方を向いていて彼らが気にするただ一つの事を知りたいと言う表情であった。


 その表情を見て笠間総理はそれもそうねと心の中で頷いていう事にする。


「貴方達が知りたいのは数日前の全世界中の空中に展開されたホログラムの事ですね? 全て本当の事です。既に御承知の方もおられると思いますが一年前の竹島奪回にも係わっていました。現在、我が国が展開している防衛網はあの伊400潜水艦の『日下敏夫』少将から頂いた技術です。あの艦がこの世界に出現したからこそ私は一年前までの腐った政治にメスを入れることが出来たのです。我が国の恩人です!」


 熱意が篭った首相の言葉に出席者達も感動して是非、日下艦長に直々にお会いしてお礼をしたいと言うが総理はそれは難しいですと言うがその言葉を彼達に伝えますと言う。


「しかし……平行世界ですか! この世界と違う世界で生きている私はどうしているのでしょうかね?」


 誰かがその言葉を言うと他の者達もそうだなと言い暫くの間、その会話で持ちきりになるが笠間総理が手を叩いて本日の会議はここまでと言い、明後日の同時刻に再び会議を実施すると伝えると他の大臣たちを始めとする出席者達が出ていく。


 最後まで残ったのは笠間総理と首相補佐官と防衛省大臣の三名であったが総理は直木大臣と大切な話がありますので席を外してくださいと命令すると補佐官はお辞儀をして部屋を出ていくがスーツの内ポケットからイヤホンマイクを取りだして耳に着けると会議室内の話が聞こえたのでそれを録音する。


 その内容は彼も吃驚仰天するが直ぐにそれを米国に報告する事にしたのである。


笠間と直木が話している内容は伊400が数々の平行世界を旅しているが唯一、全ての平行世界に繋がっているある場所の事であった。


「……靖国神社が絡んでいるかと思っていたけどまさか伊勢神宮だったとは……しかも皇族も立ち入り禁止と言う内宮奥か……。これは相当、貴重な情報だぞ!」


 それから二人が話している内容は普通なら到底、信じられない情報で内容は伊400に関する結構、詳しい内容であった。


「直木大臣、今した話は忘れて下さいね? これは富下二等海佐から聞いた話ですが一切、他言無用です」


「はい? 総理、何の話ですか? 私は一向に何も聞いていませんが?」


 総理は満足そうに頷くと会議室を出ると直木大臣に声を掛けると首相補佐官は直ぐにその場を離れる。


 部屋から出た二人であったが直木大臣がふと何かを思いついて総理に尋ねる。


「それはそうとあの会議室もそうですが各部屋の盗聴の備えはきちんとしているのですか?」


 直木の問いに総理は笑みを浮かべてそこは心配ないと告げる。


「首相補佐官がとても優秀なので彼に全てを一任していますので何の心配もありませんから」


 その言葉を聞いていた補佐官は苦笑いをしながら心の中で呟く。


「米国の利益に関する事は包み隠さず報告しますが私も日本人です、米国以外の事なら全力で日本の為に働きますがね?」

 

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