第6話:総理の決断!

 ここは横須賀第七艦隊総旗艦原子力空母“リンカーン”艦橋内。


「して、貴官は潜水艦“トレス”からの報告を眉唾物としてこの電文を無視したのだな? 狂っているのは貴官の頭の中身だ!」


 くしゃくしゃに丸められてもう少しでシュレッダー逝きの所、偶然にも第七艦隊司令官『ロボス』大将に見咎められたのである。


 大将も初めはただの廃棄書類と思っていて気軽に声を掛けたのだが担当官が数時間前に受信した内容を軽く話した時に大将の第六感に引っ掛かったのである。


「も、申し訳ありません! あまりにも……馬鹿馬鹿しい内容だったの……」


 次の言葉を言う前にロボスの怒声が彼の頭に堕ちたのである。

 身体が硬直したまま、謝罪する。


「考えてみろ! 潜水艦20隻が何の前兆もなくほぼ同時に爆発轟沈することが異常だとは思わないのか? それとだ、我が海軍の潜水艦艦長は冗談でも馬鹿な事は言わないのだ! もういい、貴官は持ち場に戻れ!」


 ロボスの叱責に担当官は颯爽と逃げるように持ち場に戻っていった。

 溜息をつくとロボスは一年前に起きた竹島奪回時において摩訶不思議な存在を同期である横田基地司令官『アーノルド・サザン』大将から聞いていたのである。


「ふむ……アーノルドは二か月前に本国に帰還したが今はペンタゴンで勤務しているな。そして“トレス”の水中カメラが捉えたという350ノットの高速で進む魚雷も凄い気になる……な」


 数十秒後、ロボスは駆け足で艦長室に行くとペンタゴン直通の非常時回線電話の受話器を取り交換手にペンタゴン国家情報機関に繋いでもらえるように依頼する。


「アーノルドに統合作戦本部を経由して大統領に偵察衛星の軌道変更許可を得てもらって全ての衛星を台湾方面に展開してもらわなければいけない。長年の勘だが……とんでもない存在のベールが剝がされる気がする」


♦♦


 その頃、東京首相官邸内の会議室内にて総理を入れて六名の者が席に座って緊急会議をしていた。


「米国から今回の一連の仕業がC国であるとの証拠状況を教えてくれたとの事ですか? 鳩村外務大臣」


 笠間総理の問いに内閣史上最年少である35歳の『鳩村利樹』が立ちあがってここ数時間の間に発生した出来事を説明する。


「総理、この情報は完全に正しいと思います! すぐさま、世界中に発表して我が国の正統な攻撃を示して自衛隊の総力を挙げて占領軍を追い出さなければいけません」


「既にC国の艦艇及び航空機・潜水艦の位置を把握していますので」


 幕僚総監『出光十郎』が言葉を発すると海上幕僚長『飯田道隆』が立ちあがってそのC国の潜水艦ですが数時間前に20隻の潜水艦が突如爆発して轟沈した事を話すと笠間総理と直木防衛省大臣はお互いに顔を見合わせると頷く。


「貴方達も御存じの通り、昨年の竹島奪回時に協力して頂いたX潜水艦の攻撃ね、しかもその潜水艦艦長から富下二等海佐を通じて光学迷彩スーツ20着を貸与してもらいました。既に我が自衛隊最強の特殊部隊に渡したので本日の深夜に4名5グループに分かれて各島に上陸して暴れてもらいます」


 笠間総理の言葉に他の出席者達は感心したりそのX潜水艦に多大なお礼をしなければいけませんね等の意見が出ていた。


「さて、この会議はこれで閉幕しますが直ちに今回の残酷で卑劣な事をしたC国を激しく非難する声明を出します! 今から一時間後に発表します」


 厳しい表情をしながら笠間総理は閣僚達を見渡す。

 全員が真剣な表情をしていて総理は満足そうに頷いて解散となる。


「分かっていると思いますがこの各自に配った資料は直ちにシュレッダーにかけて破断するように! これは厳命です」


 笠間総理が出ていくと他の閣僚達も出ていく。


 会議室を出た所にシュレッダーが設置していて参加者が次々と投入していく中、首相補佐官の一人が一瞬で素早く白紙の束と交換してそれをシュレッダーに投入したのだが誰もが分からなかったのである。


「……重要かどうかわからないが渡さないといけないな」


 そう、彼こそが日本国籍を持ち、純日本人でありながら莫大な給料で米国のスカウトを受けた敏腕スパイで国防省の命令を受けて日本を監視している一人であった。


「総理も甘いな、米国を始めとする西側諸国もお互い監視し合っているのだが総理は米国がそんなことをするわけがないと思っていらっしゃる」


 彼が手に持っている極秘資料は光学迷彩スーツの簡単な性能表であった。


 それから一時間後、官邸内に設置された舞台に笠間総理が登壇すると一斉に新聞社や雑誌の記者たちによるフラッシュの光の洪水が浴びせられる。


 笠間総理が発する内容は開幕から衝撃的な内容で現在、起きている先島諸島での悲劇や自衛隊員の全滅、そしてそれを背後から誘導したC国の陰謀の証拠を次々と示しだす。


 国内は激怒の嵐で国民達は報復を叫ぶ。


 笠間総理は今回の事は決して許すことは出来なくC国に謝罪と巨額な賠償を示しそれが受けいれなければ国交断絶を実施すると答える。


「この国は一年前の国とは違います! 我が国の国民を不当に殺害し、領土を掠め取ろうとする卑怯な国とは付き合うことは出来ません! そして今回の背後にはC国に媚びを売る売国奴が確認されています! 既に捕縛命令を出していますので捕縛すれば包み隠さず国民に発表する次第であります」


 その時、直木防衛省大臣が大慌てでやってきて総理の耳に何やら言うと笠間総理は吃驚した表情になるが直にマイクに向かって言葉を発する。


「突然ですがこれで会見を強制終了しますがマスコミの皆様に伝えます。現在、台湾沖に我が国の危機を救う者達が出現しました。私の話よりもそっちのほうが記事になるでしょう」


 そう、今現在時刻にて台湾沖海上に巨大潜水艦が浮上してきたのである。

 艦橋に“伊400”と……。

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