第44話:決戦!

「第七艦隊の原潜全てを地獄に落とす!」


 日下の冷酷な言葉が司令塔に響き渡ると全員が無言で頷く。


 既に位置を把握しているため、魚雷管制室に情報を送ってインプットし終わった状態で待機していたのである。


「しかし、艦長! 第七艦隊が消滅すれば世界のパワーバランスが崩れるのではありませんか?」


「ああ、崩れるだろうな! だが、そこから新たなパワーバランスが構築されるだろう。それが日本を頂点とする大東亜連邦国だな」


 日下の言葉に乗員たちが成程と頷く。


 そして間もなく魚雷管制室から全て準備完了との連絡が入ると日下は橋本のほうを見て頷くと大声で指示する。


「三番・四番・七番・八番発射! 引き続き三番と四番に再度充填して発射だ!」


 CICで徳田がタッチパネルにて発射ボタンのマークをタッチしていく。

 赤色から緑色に変わった瞬間、魚雷射出口から四本の魚雷が勢いよく発射される。

 それから10秒後、再び二発の魚雷が放たれる。


 合計六本の必殺必中の魚雷はマッハ1の速度でそれぞれの米軍の攻撃潜水艦に爆走していく。


「命中まで8分40秒です! 距離にしておよそ177キロメートルです」


「……そうか、敵戦艦のレールガンはどのタイミングで撃ちだすのかな?」


「予想ですが100キロを切ったときに放ってくるかと? それが一番破壊力が増すといわれていますので」


「……成程、彼らはあのレールガンでこの伊400を粉々にできると考えているようだがそれが間違いだという事を思い知らせてやろう」


 日下がそこまで言ったときに通信室から緊急電が入りその内容を聞いた日下は眉を顰めるとともに険しい表情になる。


「艦長、悪い内容ですか?」


 日下は無言で頷くとその電文を橋本に渡すと彼もその内容を見ると同時に眉をひそめて日下に言う。


「潜水艦“うりゅう”が南シナ海にて通信途絶と同時に存在を示すビーコンも作動しなくなった……艦長!」


「……ああ、どうやら凄まじい戦闘が繰り広げられているようだな、東シナ海と南シナ海で。だが、あの付近の海底は潜水艦“うりゅう”の限界深度ギリギリの所だから僅かながらも可能性がないとも言えないが……」


 日下と橋本の会話の途中でCICから連絡が入る。


「後12秒後に米国潜水艦に命中です! カウントダウン」


 司令塔にいる乗員がモニターを凝視すると米国潜水艦を示す☆印6つに魚雷の形をした黒いシンボル6つが向かっていく。


 そして12秒後、☆印のマークが次々と消えると艦内で歓声が沸く。


「潜水艦6隻を撃沈しました。これで彼らの目を一つつぶすことに成功しましたな」


 吉田技術長の言葉に日下は頷くと建御雷神の矛を展開するように命じる。


 この命令は直ちに実行されて射出レールが収納されて代わりに建御雷神の矛がジャッキの力により上がってきて甲板上に設置される。


「このまま、直進だ!」


 日下はそう言うとタラップを上り艦橋甲板に出て行った。

 この伊400の行動は勿論、はるか上空にある軍事偵察衛星がキャッチしていて監視していたのである。


♦♦


 この10分前の出来事だが旗艦“リンカーン”艦橋でロボス提督をはじめとする参謀たちは偵察衛星から送られてきた映像を見ながらそれぞれ意見を述べていた。


「やはり白鯨自らお出ましか」


「太平洋方面は海上自衛隊……おっと、今は日本海軍でしたか。彼らは一切、展開していないという事だが?」


「Sit!! 我々を馬鹿にしているのか? たった一隻だぞ?」


 それぞれ言い合っている様子にロボスが間に入ろうとした時に突如、海中から水柱が立ち上がるとともに衝撃波が第七艦隊に襲い掛かりソナー員が耳を潰す最悪な事が次々と起こる。


「何があった!? 攻撃か」


「……海中にいた我が艦隊の原潜6隻が……一瞬で通信途絶しました! 水柱も6本確認です!」


「……まさか……全滅か?」


 ロボスは真っ青な表情になると共に椅子に崩れるように座り込むがすぐに命令を発動する。


「恐らくはあの白鯨の仕業だ! 全艦に通達! 対潜を厳とするとともに魚雷に気を付けるように命令だ!」


 ロボスの言葉が各艦艇に伝えられたが先ほどの攻撃でソナー員の殆どが耳を損傷して任務遂行が出来なくなっていたのである。


 悪いことに負傷したソナー員の殆どが何十年ものベテランであり彼らの代わりについたのが数年ぐらいの経験しかしていない者であった。


「司令! 衛星からの新たな画像が届きましたがこれを見てください!」


 参謀の一人が偵察衛星が捉えた鮮明に写っている伊400の真上の写真を渡すとロボスは眉をしかめるとともに背筋が震えてきたのを感じる。


「これは……荷電粒子砲だ! こんなもの食らったらリンカーンといえども塵一つ残さず溶解して何も残らないぞ!」


 荷電粒子砲と聞いた者達が真っ青な表情になる。

 勿論、この情報は各艦艇にも伝えらるとともに各艦長から一旦、引くのがいいのでは? と具申が来る。


 ロボスはじっと数十秒間考えていたが戦艦二隻のほうを見ると決意したかのように口を開く。


「“ニュージャージー”“とミズーリー”に連絡! レールガンをあの白鯨に向けて全弾発射だ!」


 ロボスの命令は直ちに二隻の戦艦に伝えられるとレールガンシステムの操作員達が準備に入る。


「発射まで3分です!」


 ロボスは頷くと艦橋にいる全員に聞こえるように独り言を言う。


「我が国の技術の粋を極めた最新鋭の兵器だ! 必ずやあの白鯨を粉々にするであろう!」


 そして三分後、二隻の戦艦から発射体制が整えられていつでも発射出来るとのことの連絡を聞いたロボスは頷く。


「ファイアーッ!! 白鯨を粉々にしろ!」


 第七艦隊全隻が震えるほどの凄まじい轟音が周辺の空気を震わせたかと思うと41センチ砲から合計18発の41センチ特殊砲弾がマッハ7で放たれる。

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