第18話:新たなる脅威の序曲の始まり

 伊400では日下以下橋本・西島・在塚の大佐三名と会議をしていた。


「とんでもない事になったな? まさか……第三次世界大戦が始まる寸前だ」


「C国の脅威から日本が解放されればここまで酷い状況に成らない筈だが想定外の事が起きたという事だ」


「キエフに核爆弾が投下されるという通常ではありえない出来事が発生した為、大きく軌道が変わったのだろうな?」


「これは……裏世界を牛耳る組織の陰謀だろうな。その正体は、俺達が知っている組織だな」


「ああ、“破壊の先駆者ベルフェゴール”! 俺達と同じく平行世界を転移しながらその世界を滅ぼすための秘密組織」


 日下達が数々の平行世界を転移した時、50%の確率で遭遇する。


 伊400と同様の力を持った数々の兵器を所有しており日下達に死を覚悟させたこともある組織であった。


 勿論、日下達が敗北してその世界が週末を迎えて滅んでいく様を目にしたこともありそれは日本だけではなく世界が崩壊して人類絶滅を迎えるのである。


「このまま行けば……全世界規模で先ずは紛争や民族同士の激突が起こり、それからエスカレートして世界大戦になる……と言う訳か」


「艦長、私達はどうなるのでしょうか? 本来なら再び転移する筈ですがそんな気配もありません」


 橋本の問いに日下は暫く考えていたが一旦、伊勢神宮へ行って祭主様にお伺いを立ててみるかと言い、彼らもそれに賛成して艦を伊勢神宮に向かうように命令しようとすると航海科偵察班から緊急連絡が入る。


「伊勢神宮が……伊勢神宮が……燃えています!!!」


♦♦


 時間軸を少し戻る……。

 深夜二時、都内の廃墟ビルの一角にて一人の青年が誰かを待っていると待ち合わせしている人物がやってくる。


「遅かったではありませんか! 約束の物は持ってきていますか?」


 彼の問いにその人物は懐から細長い封筒を取り出すと先にこちらが知りたい情報を寄こせと言ったので彼はA4サイズの封筒をその人物に手渡す。


 人物から封筒を受け取った青年は中身を確認する為に中身を見るが直ぐに怪訝そうな表情を見せて怒る。


「約束が違う…………」


 彼の意識はそこで途絶えてしまったのである。

 謎の人物が一瞬の速さで彼の頭を脇に挟んで物凄い力で頭を180度回転させる。

 ボキボキボキと首の骨が砕けた音がして彼は即死したのである。


 動かなくなった青年の身体を床に放り投げるとその人物が冷酷な笑みを浮かべて返事がない只の屍に言う。


「金に目が眩んだ愚か者の末路だな、切れ者と言われている笠間総理も見抜けなかったとはな! まあ、どっちみち生きていれば外患誘致罪で処刑されていたがな」


 笠間総理が信頼する主席首相補佐官の青年であったのである。

 謎の人物は封筒の中身を確認するとほう……と唸る。


「成程……靖国神社が関係していると思っていたが……伊勢神宮だとはな? 予想もしなかったが成程な、高天原女王天照女神を祭っている所だからな」


 独り言を言うとその人物はゆっくりと廃ビルから出て行き闇の中に消えて行った。


 翌朝、彼の変死体が発見されて官邸は大騒ぎになり警察の調べで何と彼は米国のスパイとして数々の日本の行動を流していたことが発覚する。


 ショックを隠し切れない総理に野党の面々が国家機密漏洩に気が付かなかった責任を問う声の大合唱になったのである。


 この時の野党は、親C国・親K国や反日の野党ではなく愛国心を持つ純粋な人達であったのであるが政権欲は変わらない。


 首相官邸では、笠間総理と直木防衛大臣・官房長官『佐部信三』の三人が額を寄せて会話していた。


「……しかし総理、正に飼い犬に手を噛まれたと言う事ですな?」


 佐部の言葉に笠間は無言で頷くが疲労が溜まった表情でありいつもの元気さがなく直木もそれを心配していた。


「まさか米国のスパイだったとは……私も予想していなかったですね。同盟国がまさかと思っていましたが……」


「直木大臣、米国は今でも日本と言う国を潜在的に恐れているのですよ? 100年前にアジア開放を掲げて大東亜戦争を戦った日本の底力を今でも戦勝国の上層部は恐れているのです。あの神風特攻隊も西洋人からしたら得体の知れない事だったと聞いています」


 直木は佐部の言葉に頷くと疑問に思ったことを総理に尋ねる。


「総理、彼は伊400関連の事を米国に流していたようですが……総理は何を知っているのですか? ここまでの事態になったのです! 私達で共用していた方がいいかと思います」


 総理の話によるとこれは富下二等海佐から聞いた話でこの内容は総理だけならいいですよと日下艦長からも許可を得ていたものだと話す。


「日下艦長達の平行世界転移は伊勢神宮に関係しているとの事でその中でも内宮がある区画のみが数々の平行世界と繋がっている聖域という事です。その区画が無くなれば日下艦長達はこの世界から弾き飛ばされると聞いています」


 最もこの内容は間違っているのだが補佐官を殺害して極秘秘密を手に入れた組織はそれを信じたのである。


 その日から二日後、首相官邸に急報が飛び込んできたのである。

「伊勢神宮が何者かにより放火されて内宮が大火災に包まれています!」

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