第13話:惨劇の序曲の始まり?

 ユーラシア大陸西部ウラル山脈麓の廃墟となった飛行場滑走路に一機の爆撃機が今まさに離陸しようとしている。


 全体が漆黒の塗装をされているが主翼や胴体には米軍機を示す★のマークが不気味に光っている。


 少し離れた場所で一人の老齢の男性が立って離陸していくのを待っている。

「マスター、間もなく離陸時間です」


 傍にいるサングラスを掛けた漆黒のスーツに身を包んだ用心棒らしき男が老人に声をかけると老人はゆっくりと頷く。


 その時、爆撃機が動き出して滑走路に侵入する。


 アフターバーナーが点火されて轟音と共に滑走路を走っていき空中へ飛び出していくがそれは悪魔の鳥が飛んだ雰囲気をかもだしていた。


 爆撃機の喧騒が治まり再び沈黙が辺りを支配する中を老人は不気味な笑みを浮かべながら呟く。


「ふふふ、これより全世界は混沌の炎に巻き込まれるであろう! 異世界を旅する者達よ、これから起きる惨劇をどのように対応するか見せてもらおうか」


 そう言うと老人は廃墟の外に待たせてあるリムジンに乗り込み去って行く。


♦♦


 同時刻、伊400は佐世保を出港して鹿児島沖を通過して志布志湾沖合を洋上航行していた。


「……思いだすな、オリンピック作戦の時はこの付近で魚雷を放ったのだな」


 日本本土決戦を思い出しながら日下は艦橋甲板にて共に立っていた橋本先任将校に声を掛けると笑みを浮かべて答える。


「そうなのですね、確か高倉先任将校の時ですね? 私は伊58に乗っていましたね……。まさか、伊400に移る事は夢にも思わなかったです」


「人と人の出会いと別れか、正に一期一会だな。所で話は変わるが今現在、遥か上空には私達を監視している衛星がウジャウジャいるのだろうね?」


 日下は空を見上げると苦笑いしながら喋ると橋本も上を向いて笑いながらそうですねと言い、二人で豪快に笑う。


「室戸岬沖までこのまま洋上航行としよう。それから彼らに少しサービスしてあげようかな? だが、そこで光学迷彩シールドとステルスシールドを展開して潜航する」


「……伊勢神宮沖ですね? そこで武器弾薬を補充して北海道に直行ですか?」


 橋本の言葉に日下は首を横に振りながら東京湾に寄って笠間総理の訪問を受ける予定だよと言うと橋本はそうですかと言う。


「この一年で国内に巣食う売国奴や反日外国人を9割を排除したからね? 今まで誰もやれなかった事を断行した女傑だね。石原閣下とコンビを組めば面白いだろうね」


 日下と橋本は室戸岬沖に達するまで艦橋甲板で和やかな話をしていたが司令塔から室戸岬沖に到達した事を知らされるとハッチから司令塔の中に入って行く。


「よし、潜航準備にかかれ! 光学迷彩シールド及びステルスシールド展開!」


 艦内にベルが鳴り響くがそれは潜航開始二分前の合図であった。

 日下は艦長席に座ると命令する。


「メインタンクに注水! トリム作動!」


 再びベルが鳴り響くとメインタンクに海水が濁流となって入り込んでいく。

 伊400はそのまま潜航していく。


「深度500メートルまで潜航すれば艦を水平に戻し速度30ノットで伊勢神宮沖に向かうぞ」


「了解しました!」


 伊400が光学迷彩シールドを展開した直後、偵察衛星で逐一観察していたカメラがターゲットをロストして目標喪失のランプがつくと管制員が大声で上官に知らせる。


 彼の声に上官が駈足でやってくるがその後ろに科学者らしき人物がいた。


「博士、ターゲットがロストしましたがその前の映像です」


 上官の命令で今までの録画した映像を巻き戻して再生すると洋上航行をしていた伊400がゆっくりと消えていくのを確認した科学者はう~んと唸り声をあげながら画面を見つめていたがやはりそうかと言い説明してくれる。


「光学迷彩シールドであろう。だが……ここまで超高性能のシールドを見たことがないな。今の技術よりも数世紀は進んでいるな」


 溜息をついた科学者は眼鏡を外してレンズを拭きながら恐らく潜航したのであろうと言うと引き続き残念ながらステルス機能も備えているようだから発見は不可能だろうな。

次に現れるのを待つしかないと言うと周囲にいた人物達は溜息を吐く。


「この今までの映像はペンタゴンに転送しよう! もっと詳しい分析結果が出るかもしれないからな」


 この時、レーダースコープに高高度を飛行する航空機が映っていたが合衆国の共通周波数だったので係員も気にしなかったが今日はこのルートを使う予定は一切、なかったが新人である彼はそれを忘れていたのである。


 その航空機は漆黒に塗装された爆撃機であったのである。


♦♦


 伊勢神宮沖で平行世界の一つから補給を受けた伊400は再び潜航航行をしながら東京湾口から侵入して第二海堡要塞沖海底にて浮上予定時間まで過ごす。


 丑三刻になった時点で伊400はゆっくりと浮上してその巨体を海面に出現させると日下と橋本がハッチを開いて艦橋甲板に出ると数十メートル横に海上自衛隊エアクッション艇 (LCAC)が停止していてそこに笠間総理と直木防衛省大臣の二名が直立不動で立っていたのである。


 LCACがゆっくりと伊400甲板横まで来ると総理と大臣が甲板に飛び乗ってきてお互い挨拶を交わして握手しあう。


「日本国民を代表してお礼を言わせて頂きますが一年前の竹島奪回時には大変、お世話になりました」


 笠間と直木が頭を垂れてお礼を言うと日下は首を横に振りながら私も時代と世界は違えど同じ日本人ですので当たり前の事をしたまでですと言う。


 日下が二人を伊400艦内に案内しようとするとLCACの艇長が血相を変えて総理に呼び掛ける。


「総理! 一大事が起こったようです! U国首都“キエフ”に核爆発反応がキャッチされたと横須賀米軍から緊急電が入りました!」

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