第2話 見合途中
私たちは結構早く吉祥寺駅に降り立った。まったく日曜の午後にここに来るもんじゃない。ラッシュほどではないにしても、おっと! お子ちゃまが突然横切るからつんのめってしまったよ。
「大丈夫? 足元注意して下さい。何なら手を貸しましょうか」
おいおい! われを幾つだと思っとるのじゃ! 君と四つしか違わない! 無礼者! とは言いません。
「有難う! 今のは子ども避けたからつんのめっただけだから」
「いや~危ないから手を貸すよ」
何とも強引な奴だけど、一人でスタスタ行っちまうよりは、数段偉いかぁ。中央改札を出て階段を降りていると突然立ち止まった。
「危ない! 何? 如何したの?」
「間違ってしまった! 南口に行きたかった!」
どっちに出ても大して変わらないからね。焦るなや~若者よ!
「問題ないから。でっ、何時に予約?」
「17:30です」
「えっ……後二時間近くあるね」
「丸井でも行きますか」
「何故? それを言うなら井の頭公園でも歩きますかでしょ?」
「まあまあ……ですけど……あそこ面白いですか? それに混んでるし」
「確かに。それに別に面白くないもないけどさ。丸井だって面白く無いじゃない」
「パルコは?」
「はい? 次は東急なんで言わないでよ! 奥様方のデパート巡りしてんじゃないんだから。そうだ、新しい駅ビルの本屋さん行こうよ」
「良いですね! 行きましょう。ちょうど欲しい本あったし」
「何買うの?」
「銘菓の旅、お勧めのお取り寄せだったかな?」
「銘菓のお取り寄せねぇ……たまに見るわ」
「実際取り寄せます?」
「私はしないけど、親の世代ぐらいは結構買ってるみたい」
さて! 本屋に到着。じゃ別れて廻りましょう。
「集合は下りのエスカレーター前に五時ね!」
「一緒に見ないんですか?」
「なんで? だって見たい本違うのに? それに本屋さんは基本一人見るよね」
「あ~まあ~確かに……」
「では~後でね」
私は一礼すると目指す棚へGoー
彼はお取り寄せの本買ってる筈。
笹山和也三十三才かぁ……八十三回の見合いって。本当面白いわぁ
良縁に巡り会えないのは、引き寄せの法則が弱いのか? くっ! それ言ったら私もだ。四十路近いのにろくな恋愛してこなかった。
えっと、あったあった!
私はこれでもクラシックバレエを長く習っていた。だから今でも
本屋に立ち寄ると、童話でも写真集でも、バレエに関するものをてあたり次第見たくなるのだ。
私にとってそれは夢の世界の扉が開く感じで、ワクワク感が止まらなくなる。子どもの頃読んだ「夢のバレリーナ」を児童書のコーナーで探しながら、懐かしい本が並んでいると思わず引き込まれ触れたくなるのだ。
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