第6話 食事だって!嬉しい!
比嘉は翌日、それも午前中に新しい企画書を持って雪乃の元に現れた。
「リーダー、とあえず精査して下さい。訂正や足りない所など随時直して行きますから。今日は一日社内にいますので連絡くださればすぐに参上致します」
そう言って順子の分と二部置いて部屋を出て行った。
参上? あゝ助っ人だからね。雪乃は、笑いながら企画書に目を通し始めた。
暫くすると、比嘉からラインが入ってきた。打ち合わせの前倒しでクライアントと会うことになったので、問題点を纏めておいてほしい。多分15:00頃には帰社出来ると思うので、時間が合えばその後、打ち合わせをお願いしたいとの事だった。
暫く携帯の画面を見ていた雪乃は、柴犬が了解と吠えてるスタンプをひとつ送った。
雪乃は手書きの字は上手いのだが、携帯で文字を打つのが途轍なく下手なのだ。
特にラインは入力ミスと文字変換ミスが酷く、周りからも馬鹿に為れていた。
なので出来るだけ、普段は電話かPCのメールを使っている。
ラインは仲間内のやり取りをが殆んどなので、絵文字とスタンプで済むが、仕事でスタンプは拙い。最初に断っておけば良かったと後悔しているとピコンと携帯が光る。比嘉からの返信だった。可愛いモフモフの猫ちゃんのスタンプで返信が来た。おお! 可愛いではないか! 気遣いと、乗りは悪くないんだとほっとし携帯をデスクに置き、朝一の会議から戻って来た順子と、早々に打ち合わせに入った。
「然しさぁ、凄くない? この出来映え!」
「だよね雪乃~良かったよ~こりゃひょっとして、おばちょん上手く行くかもね~
っていうか、雪平気? もろ好みでしょ。わたしゃ心配ですよ。それにあの事は簡単に話さないこと。いい?」
「判っているって。それに……最近悩んでいるんだ。今度聞いてね。さてと仕事しますよ」
「判った。では始めるか」
二人は細かな事項が列挙されているのに絶句していた。普通と言われればそうなのだが、雪乃には初めてのことで、判っていても抜け落ちている事柄だった。勉強させてもらうぞ!比嘉様! 宜しくお願い致しますね。
まず何故この時期おばちょんなのかを昨日渡した企画書から上手く拾い上げ、更に面白く解説している。そして、今から詰めて行けばハロウィーンの前に商品化できる……そのままクリスマスシーズンから年末年始に突っ込んでいけることをアピールしている。
これは見事だった。商品化の例を既存の商品と対比して説明し、手帳 ノート カード 便箋 封筒 カレンダー まだまだうちが出している商品etc.に雪乃の拙い絵を載せて見せてくれる。目新しのはライン無料スタンプ。そして有料化へと誘導していくのも可だが、無料配布が今は望ましい事。SNSで出来る事も考えいく等。これは社内から幅広くアンケートなり企画なりを公募する。この企画に協力した社員には何かしらオマケを付ける。
例えばどこかで一日休みを出すとか、キャラクターデザインも社内公募も面白いかもとか。
予算は通常この手の企画予算プラス少なく見積もってもあと500万は考えるべき。
当然外注先も視野に入れる。
例えば イラストレーター
…………先生 …………先生
漫画家
…………先生 ……先生など
早めにスケジュールを聞く事。
最短締め切り日
最長締め切り日
これでザッとだそうで……
「早め早めに動くのは判っているけど、なんせ企画が通って、チームで動くなんて初めてだから戸惑ていますよ。そうそう、順子の方は大丈夫なん?こっちに関わっていて」
「ここ暫くは大丈夫だと思うよ。今朝の会議でも部長と話したし。
どっちにしても、そっちとこっちの進み具合だよね」
雪乃と順子はそれから、比嘉が作成した企画書をひとつひとつ練りながら確認事項を出し合っていった。
結局比嘉は、5時過ぎにやっと帰社した。が、順子は別の打ち合わせで午後から出て、そのまま直帰となってしまった。
「お待たせしてすみませんでた。今日は順子さんがいらっしゃらないとなると、
打ち合わせは明日以降ですね、それじゃご飯でも如何ですか?」
「いや~そんな~うっ、嬉しい! 行きたいです! でも物凄くお腹空いてます。だからね居酒屋さんではない方向なら有り難いんですが」
「うん? 一杯食べたい? 了解しました。雪乃さんはハッキリしていて良いですね!」
「そうですか? 私の信条! 安くて美味しい、そして量は多いほど嬉し!いですから」
比嘉は、雪乃の嬉しそうに話す横顔を見つめながら、食べたいものを出し合い駅に向かって歩き出していた。
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