第12話 一応進んだのかも

 立板に水の如く喋り続ける雪乃を見つめながら、比嘉の脳みそは、右脳左脳右脳左脳を行ったり来たりとパニクっている。が、それでも一つだけ言える事は、雪乃が男だと判ってからも、前から抱いていた気持ちに変わりが無いとういことだった。それどころか、心の何処かで安堵にも似たような感情が湧いてくる。これって何? 俺どうなってる? 落ち着け、落ち着くんだ。

反応のない比嘉をチラチラ見ながら喋り続ける雪乃だが、だんだん胸に痛みを感じてきた。雪乃の心臓は頼んでもいないのに、ここぞとばかりに、近来稀に見る速さで働いているのだ。

比嘉の異常なまでの怖い顔と僕の心臓がやばすぎる。もう! 無理! 兎に角落ちだ。話しを落とさないと本当に吐くぞ。いや倒れる。

「もう〜なんかリアクションくださいよ〜 そんな怖い顔して。似合いませんよ〜 だからね気持ち悪いとか、ほら、なんかあるでしょ? そばに来るなでもいいんですよ? そうれならそうと言ください。慣れてますからね。アハハハ」

比嘉はその大きな瞳の倍は見開くと、

「そんなバカな! んな訳無だろう……男って判っても。ゲホッゲホッ、かっ か 可愛いよ……本…当に、好み……だっ」

俺は……ちゃんと考えてる。大丈夫だ。しっ、しかし、見ればみるほど可愛い。

「ホントですか? その言葉丸呑⁉ いや鵜呑だ。鵜呑みにしますよぉ~だって僕、りゅうさんがど真ん中なんですから。グイグイ行きますよ! そんな困った顔しないで。アハハ、これが佐々木雪乃のトピックスでした!

めでたしめでたしって。〜そろそろ帰りますか?」

こんな気持ちのままでお開きになんかできるか! ボケ! これはチャンスだろ。告れよ俺! 言え!言うんだ!りゅう!!

「いや!かえあん」

「はあ?なんですと?」

噛んだ〜情けないよ。

「帰さんって言ったの」

「帰さなくてどうするの?」

「あゝ、そのですね。これから告ろうと思うのです。いい?」

いい? って。りゅうさん……脳内爆発? でも、告白してくれるの?

本気? 僕、僕……信じちゃうよ。

「告白してくれるんですか? それってお付き合いすることになるかもですけど」

「かも?って? 断られる事もあるんですか?」

「絶対あり得ませんけど。一応言ってみょうかと。一瞬ドキッとしました?」

「もう! やめてくださいよ~それでなくても背負い投げ食らった状態なんですから!」

背負い投げ? 上手いこと言うね。確かに〜そりゃすまんこって〜。

「いいですか? 行きますよ!」

頷く雪乃。

「雪乃さん。俺とけつ」

「けつ? じゃない! けは! あるし、いるけど、 うん? 兎に角つからでしょ! もう なに言い出すんだか~怖いわ〜」

「そうです。つです。えっと付き合ってください。お願いします」

「はい! よろこんで! よく言えました。拍手!!」

本当陽気な人だ。先が楽しみになるよ。雪乃さん! いや……雪也くんかな。




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