第11話 嘘ですか? 本当ですか? 好きですか? 嫌いですか?

「なんか甘いもの食べたくなったんだけど」

比嘉はテーブルに置いてある、

今月のお勧めと書かれたプレートを手に取った。

「苺ねぇうーん。いやーシンプルにプリンにしようかな……雪乃さんはプリン大丈夫?」

俯く顔に動く気配は無い。

比嘉は、プリンとお勧めの苺タルトを頼むつもりで、呼び出しボタンを押した。

「私もプリン食べたい」

少し小さめで可愛らし声に、

比嘉はやさしく答える。

「了解。ほら苺タルトもあるよ。メニュー見なくて良い?」

雪乃は短くプリンと答えた。

 少ししてウェイターが水を持って現れた。

「お待たせいたしました。お水失礼致します」

「プリンありましたよね?」

「はい。ございます」

「じゃあ二つお願いします」

「プリンお二つでございますね。かしこまりました。伝票失礼いたします」

立ち去るウェイターを虚ろげに見送る雪乃。

「大丈夫? トピックスね、何も無かったら無理に話さなくていいんだよ。あんな話の後じゃ考えちゃうよね。アハハ」

雪乃はそれには答えずに静かな口調で話し始めた。

「竜さん……私ってどう見えますか?」

「へぇ⁉ どうって、ハキハキしていて面白い子。それから……ごめんね、女性にこんな事言うの失礼だと思うんだけど。そこはかとなく漂う中性的な魅力が良いなぁって思っているよ。あと、と、とても可愛いよ」

順子……私比嘉さんに全て話すって決めた。腹が決まると、結構落ち着くもんだ。じゃ自分自身を見せてくるね……深呼吸をして小さく何かを呟いた雪乃は、

「そんな、竜さんに可愛いいなんて言われると、僕嬉しくて舞い上がっちゃいます」

「いや、可愛い、い……うん? 僕? 今僕って言ったよね。ね。」

雪乃が笑いながら頷く。ウエイターが絶妙なタイミングでプリン置いていった。

「大丈夫ですか? やっぱり驚きますよね。アハハハ」

笑えるのか? 此って笑って良いのか? 俺は今どんな顔をしてる? あまりじっと見ては失礼だとは思うが、視線は雪乃に釘付けだ。僕? いやいや見えないって、見れば見るほど可愛くて俺の好みなんだよ。俺の目がおかしいのか? 目の前で大口を開けて笑っているこの女性? いや男性は一体! これってドッキリかなにかなのか? 判らん! 頭が追いつかないよ。

雪乃は深々とお辞儀をすると、

「本当驚かせてすみませんでした。一旦深呼吸しましょうか。そう……どうですか? 少しは落ち着きました? 大丈夫かなぁ?

心配は心配なんだけど。取りあえず自己紹介しますね。僕は佐々木雪也二十四才。性別男性です。

あの、最初にお断りしておきますが、僕は自分の性と体は男だって認めていて、違和感ありません。そこを誤解れてしまうと、性別に悩み苦しんいる。また苦しんでいた方々に大変失礼になりますので、そこはお心にしっかりと留め置いて下さい。で、ですね。僕の話しに戻らせて頂きますと、見ても判るとおり僕は華奢で、体重も五十キロしか無いんです。食べても太れず、親からは不経済な体質だと残念がられている始末で。それに顔だって、昔から女の子顔って言われたりして、結構いじめられていました……好きでなった顔じゃないのに。4歳上の姉、二歳下の妹の間で挟まれているからなんでしょうか。母親は深い意味もなく、洋服などは、殆ど姉のお下がりで、たまに買う僕の物は、妹のことを考えて中性的なものが多ったですね。中には花柄もあったんですよ。今思えばなんだよ!って思いますけど、その頃は、カツカツの経済状態だった我が家では、それが自然だったんです。けど年頃になればら、勿論抗いました……けど、姉が振り袖着てると、自分も着たいと思ったり、妹より、可愛いいワンピが似合っちゃうと、それはそれで嬉しがる本当変な子でした。で、気づいたら好きになるのは、いつも男子なんです。それについては家族は了承しています。母親なんか、いつかお前を好きになる男の人が出てくると良いねとか言っていてますよ。全く能天気な親です」

ここまで一気に喋った雪乃は、生クリーム大好きと言いながら、プリンの上の生クリームを掬って嬉しそうに口に運ぶ。

比嘉も、思い出したようにプリンを食べる。

「ここまでて、質問ありますか? 遠慮なくどうぞ、無い? なら先行きます!」

「えっと……そうそう、無責任発言のあとからか。すみませんでした。それでね、自分の生き方はこれだ!と思えた分岐点が高校ニの文化祭でした。男子校なのに、クラスの出し物がメイドカフェで、多数決で数人メイドをやらされたんですけど。その中でもだんとつに人気があって、周りから大絶賛だったんです。文化祭の後、結構告られたんです。ほんと。でもそれよりも何よりも、僕自身の高揚感が半端なくてですね。男性としたら貧弱極まりない僕が、女性の姿になると大絶賛ですよ。これは物凄く自信になりました。それからですね、徐々に徐々に普段から女装して出かけるようになったんです。そして大学に入る頃には完全に女性の格好していました。そりゃ葛藤もありましたし、嫌な思いは数知れずしましたが、やめようとは思わなかったです。……最初の1年がきつかった! 女子の友達を作るのにマジでしんどかったから。あっ、順子はその頃友達になったんです。今では親友です。彼女のお蔭でニ年目からは噓のように快適な大学生活を過ごせました」

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