第10話 ごめんね、嫌な気持ちになったよね。でも……
比嘉は最早諦めの境地。半ば投げやりになりながら、
「まあね。大学一年から付き合い始めて、色々有りつつも別れなくて。卒業と同時に結婚したんだ。もともと半同棲為ていたから、別に新鮮な感覚はなかったね。お互いに仕事が忙しくなり、徐々に会話レス、セックスレスになっていったね。これってありがちだろ? でもそれはそれで俺は楽だった。それが約二年間続いてさ。気が付いたらお互い、相手対してなんの興味もなくなっていた……そうなると、夫婦と言う括りは、俺たちに取って意味があるのか? そもそも結婚するべだったのかという疑問が沸いたんだよ。だから、俺の方から離婚を持ち出したんだ」
雪乃はボソッと呟く。
「えっと更年?……間違えた!なんか倦怠期の夫婦みたい。若いのになぜそんな事になるんです? それに今更そもそも論なんて」
「そもそも論か。でも、そもそもなんだよな。でっ? 倦怠期かぁ。確かにすれ違いとかマンネリ化とかね。でも十年にも満たないのに倦怠期なんてなるのかな」
「さあ、年数が関係するかは置いといて。奥さんの反応はどうでした?」
「タイミング的にはバッチリで。妻も離婚を切り出そうとしていたんだって」
「限界だった訳ですねお互い」
「そうだね。あいつは、妻は……会社の先輩と……女性なんだけどね、かなり前から付き合っていたからなぁ。その辺のことが結構関係しているかも」
「それって驚きました?」
「いや~それがそうでも無くてさ」
「普通驚きませんか? でも、奥さんはなんで結婚為たんだろう。奥さんの方はご自身のことなんとなく判っていたみたいなのに。……それってやっぱり親とか、周りのこと事考えてなんですかね? とりあえず同棲でも良かったのに。いや判りませんけどね、私は結婚の経験ないから。でもきっと薄々匂いはあったのかなぁと思ったりして……」
比嘉は怪訝な顔で雪乃の顔を見る
「匂い?」
「え~まあ匂い~自分の感覚ですけど、違和感とか、誤魔化すとかね。ほら、何でも見て見ぬ振りすると、後から結構拙い事になったりしません? 仕事とかでもありますよね。だから竜さんたちも、周りの目とか気にして、無意識に自分たちの感覚を抑え込んでしまったのかなって思ったりして」
比嘉は混乱してきていた。雪乃のこの分析はなんのため? 俺の離婚にこんなに食い下がるというか、拘ること自体わけ判らないが、ここまで話して、いい加減な所で終わらせることは出来ないような空気が……。仕方ない、行くとこまて行くしかないと腹を括り話しを続ける。
「確かに四年も付き合っていたから、親も周りも当然結婚すると思っていたし。いや自分たちが一番そう思っていた。はずなんだよ。だけど別れることになった訳で、やっぱり俺たち考えが浅はかだったなって言ったら、妻に言われたんだ。
この結婚は失敗じゃなかった。ふたりには必要な時間だったって。人を好きになるって、同性とか異性とかは関係なくて。互いに満たし合いたいっていう欲望が溢れてくる。その感情を幸せだって思える相手と大切にしていきたいって。彼女はそうやって生きて行きたいそうだ。だから今は、彼女と生きていける事がとっても幸せだって」
「う~ん、きっと人を好きになるっていう行為は、思い込みとか固定観念はどっかに飛んで行っちゃうんでしょ? じゃないと本当の事は見えないもの。だけど現実的な事が出てくると、そう簡単には行かないんですよ……まあそれも一概にはいえませんけど」
「……今は、安易にそうだねとは言えないけど。もう少し時間が経つと判るってくるんだろうな」
雪乃は肩をすくめる。
「時間が解決? それより自分自身に正直に生きないと辛いですよ。でも……良かったと思うなぁ。奥さんにとってはね。本当の人生が始まりますものね。あっ、今までも素晴らし時間だったでしょうけど。そして竜さんにも、これから運命的な出逢がありますよ。きっと」
いやいや何を正直に生きる? 俺は、結構真面目に生きてきたよ。
「だと良いなぁ。ってさ、しょうもない俺の話はもう良いから、今度は雪乃さんのトピックス話して欲しいな」
雪乃は頷きはしたが、暫く黙り込んでしまった。
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