第8話 どこまで行く?雪乃よ〜

 ちょっと気まずい話題から入ってしまった! この後どう話しを振るかなぁ。

それにしたって、話題って仕事以外ないし、営業の話し聞いても興味無い。

雪乃は正直に、そのままの気持ちを話した。

「今日、仕事の事はしない約束だけど、共通のお話があまりにも無いと思うんですよね~」

「そうだね……う~んじゃぁ、最近のトピックスを話そよ」

なんじやぁ? トピックスだと? なんかあったかなぁ? じゃ、とりあえず話す順番を決めよう。

「誰が先に話すか決めますよ。せぇ~のジャンケン」

「へぇ? 待って待って! ジャンケン? 暫くやってないよ! ジャンケン」

雪乃は怪訝な面持ちで、

「そうですか? ま、まさかやり方忘れた?」

「いやいや、そんなわけ無いでしょ。忘れてませんけど、ちょっと驚いただけ。じゃあ僕から話す?」

「えぇ~そんなのつまらないですよ。スリルがない!」

「スリル?かぁ。よくわからんけど、わかりました~やりましょ。ジャンケン」

雪乃は、なんだか納得が行かない。

「うちの課は良くやりますよ? 何かとジャンケンで決めてますから」

「例えば?」

「例えば、コーヒー入れるとか、お弁当買って来るとか、後上司に報告するとき、誰でも良いとき在りますよね。そんな時とか結構ジャンケンで決めます。竜さんの所は違いますか?」

比嘉は思わずコーヒーを吹き出しそうになり慌て飲み込んだ。

「アハハお腹痛いよ~ それって一番下の後輩がやらないの?」

「まぁやるときはやります。仕事覚えて貰う時とかは。でもコーヒーやお弁当とかは誰でも良いですよね」

比嘉は転がって笑っている。なぜにそんなにおかしがる? 雪乃は、はてなマークが頭の中で飛び散っている。

「それって誰が言い出したの? まさか~」

「まさかの私です!」

比嘉は涙を拭きながら座り直すと、

「雪乃さんだったら、まさかは当てはまらないなぁ。案の定とか、やっぱりとかの部類だよ」

雪乃は満更でも無い顔をしている。

「褒められたと思う?」

「はい! 思います! えっ褒めてなていの?」

比嘉は横に首を振りながら、

「褒めてるよ! 褒めてます!」

この子は真面目なの? 人を食っているの? 良く判らんな。

首を捻る比嘉を尻目に急かす雪乃。

「でっ~ジャンケンしますよ」

結果は雪乃が勝ち、先に比嘉が話すことになった。


 比嘉は一つ咳払いをすると、

「あんまり楽しい話しではないけどね、昨日僕比嘉竜は、三年連れ添った妻と正式に離婚しました! 結構ここまで来るのに手間取ってね。今はホッとしてるよ」

じっと見られてるよなぁ。確かに言わなくて良い事だったけど、雪乃の反応が見たくて、つい話してしまった。

 少しの沈黙の後、雪乃はクスッと笑った。

「おかしい?」

雪乃は大袈裟に手を振りながら、

「全然~まったく~いや~なんかすみません! 女子社員が喜ぶなぁって思って」

比嘉は苦笑いをしながら、

「なんだそりゃ~離婚して喜ばれるか? 雪乃さんも喜んでくれるのかな?」

「いえいえ、ひのと不幸は喜びませんよ! でも再出発を祝して~拍手」

どう返せば良いのか悩むわ。でも楽しい! それに感じいい。

好きだなぁ、佐々木雪乃さん!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る