第4話 流された? 否 自ら乗った!

 酔っぱらているとは言え今しがた起きたことは、紛れもなくふたりがキスを為たわけで。

それもかなりヘビーな奴を。

 お弁当のハンバーグを頬張りながら頭を整理しようと空を睨む洋子。

「う~ん……」

「何そんな怖い顔してるの? たかがキスぐらいでびくついた?」

「バカ! どってこと無いわ! あんな程度……見くびるなよ」

「へいへい。そりゃお見それしました」

それから暫くは留美香も黙ってお弁当を食べていた。

「でも……男とはかなりの違いがあるね。女性同士はこんなに優しいものなの?」

「へっ? あ、あぁ……まあそうじゃない? 言ってしまえば男は剛、女は柔だからね。なになに~良かったかい?」

「う……んまあ悪くなかったけどさ」

留美香はのそのそと四つん這いで隣に来ると今度触れるだけのキスを為てきた。

一瞬硬直した洋子だったが、

「ハンバーグの味するからね」

「私はから揚げだよ」

お互い薄笑いを浮かべ見つめあう。今度は洋子が仕掛ける。

留美香の唇に触れるだろうのキスを落とす。留美香がそのチャンスを逃すはずもなく、柔らかな舌を差し込んでくる。男の噛みつかれるようなキスも悪くはないが、愛しさが溢れるようなこのキスは癖になりそうだ。洋子はいつしか留美香の胸に顔を埋めていた

「洋子……」

洋子はコクリと頷くと肩を抱かれ寝室に向かった。

まさか女性と一線を越えるなんて考えたこともなかったけど。

ましてや留美香と関係を持つことは想像も為ていなかった。

これって本当に受け入れて良かったのか、留美香を見上げながら薄らボンヤリそんなことを考えていた。

 留美香はいつもの男ぽっさが消えて何処までも丁寧に優しく思い遣りさえ感じるような触れ方をしてくれている。鼓膜が溶けるような留美香の囁きにどぎまぎしながらも、留美香の艶めく肌に魅せられ酔わされていく自分にもう歯止めは利かない。

 朝方目を覚ますと、留美香の腕の中に抱かれていた。親友の規則正し寝息にあの熱い出来事は夢?だったのかとも思える。

 初めてだからこその感覚なのか。留美香の濃艶なテクニックに翻弄されながら、互いに貪りあった昨夜の余韻が洋子の体と心に甘い印を残している。留美香が上手いのか。此って性格でるからって誰か言ってたような気がした。 ならば、留美香は優しく過ぎるくらい優しい。自分の知っている留美香とは全く違う顔を見せてくれて、愛してくれた親友に感動すら覚えていた。

「起きたの?」

 優しい声が耳元に響く。

留美香は洋子を抱き締めながら

「ねぇ暫くこの関係続けてみようか? どう? 嫌?」

洋子は返事の代わりに留美香の唇に軽くキスをすると、また留美香に引き込まれて行く柔らかな世界。

 洋子たちは、つかの間この気持ち良い関係を続けていたが、いつの間にか元の親友に戻っていた。

 

 あの頃は互いに心も体も寂しくなる時は少なからずあって。留美香だからあの関係は上手くやれてたのだと思う。

「ねぇ。この関係は好きだけどさ。私結婚するよ! 子供欲しいし」

「別に恋人になろうなんて言ってないよ。お互い寂しいと変なのにすぐに引っかかるからさ。その防止策だと思えばよくない?」

確かに、欲求不満は色々と判断を鈍らすもの。

「好きな人が出来たらお互い早めに紹介しよう!」

「でもさ、片方だけに出来たら

この関係はどうなる?」

「その時はその時だよ」

留美香は判っていたのだ。

この関係は、あの時あの状況だったからこそ互いに必要なものだと言うことを。

 

 ふたりだけの安心感。

何でも晒していいと想える相手。

お互いに何があってもこの関係は変わらないって判っている。

 

 人生のある瞬間身も心も交わり、そして肉体は離れていく。

でもそこにはふたりだけが知る想いがあり繋がりがある。


留美香は同性婚。


洋子は異性婚 男の子一人


 今、お互い良き伴侶と巡り会っている。


「洋子……旦那が駄目になったら

いつでもどうぞ!」


「はいはい~今は間に合ってす!」

「アハハ……今はかぁ。了解!」


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