第1話 美香 惑う二十七才
『バージン』この言葉に私山田美香は女のブライドを否応なしに振り回わされた時期があった。
そう……そりゃ各々の考え方によって差はあるものの。お肌の曲がり角をとおに過ぎたら、私バージンですのよオホホ、なんて気楽には構えてはいられないのでは?
へっ? そんなことない?
ああ、あなたはそうなのか。
まあね、結婚まで操を守り抜くのも尊いが、人生で夫しか知らないのってなんか寂しいくない?
損した気分になる。
だって男性が結婚まで童貞を守り抜くって聞いたことある?
って事を自分自身に問うてみたわけ。良い恋愛してきた? それとも理想主義だったか? 否! ただ、ただ出逢いが無かった。縁が無かった。そう言い聞かせても、同期や後輩の脱バージンの話しが気になる。全てを真に受けてはいないけど、焦らないと言ったら嘘だ。
あぁ誰かぁ。と付き合いたいと悶々としていたあの頃私。
だか今なら言える! 美香よ! バージンで悪いか! バージンがどうしたってね。
美香は久しぶりに実家に帰って来た。ああ~二十七才になってしまったよ……浮いた話しはここ三年ほど殆どなし。切ない! 切なすぎる! なぜ私だけ出逢いがないのだろう? どこかに落ちてないかなぁ良い人……そんな不謹慎な事を考えながら、夏の夕暮れの風に誘われて、近所の商店街に買い物に出掛けた。
懐かしい! お菓子屋 パン屋
文房具屋、そう言えばお菓子屋で
サイコロキャラメルとか、大玉の飴買ったなあ。パン屋では肉饅 餡饅 サンドイッチ用に八枚切り二斤を食パンをカットしてもらったなあとか、そんなほんわかした思い出に浸っていると、目の前のパン屋から白衣と黒のエプロンをシュッとつけた男性が出て来たではないか。多分三十才ぐらいかな。体格も良い感じ、なんか好みかも! 目が合った。あっちから会釈してきた! 笑顔キュートっ! 思わず美香も笑顔で会釈を返していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます