第1話 波と正樹 出逢い

 俺、立花正樹二十八才。サラリーマン。

自分でも言うのも何だが、ここから約十年ぐらいが俺の男盛だと思っている。なんたって心身共に充実している! 特に体はいけてると他画他賛されている。

その、他、が恋人……一応。三年前から付き合っている。見た目に騙されたとは言いたくは無い。が、騙された……かも。

 隣に住んでいたマシュマロちゃん。胸がデカくてポワンとしていて、ポニーテールが似合うんだ。

堪らん! お近づきなりたくて

策を巡らせど……これっと言った秘策はなく悶々としていたのだった。だが! チャンスはかもねぎで来た。

そう~あれは三年前のある夏の昼下がり。何もしたくないほど暑くて、俺は溶けそうになりながら

高校野球を見ていた。

(エアコンはガンガンにいれない。ケチだからではない! 体の為に冷えすぎに注意しているだけ)

 ピンポン~ピンポン~誰だ?

新聞の勧誘か? くそ暑くてかったるくて、玄関に行くのも面倒くせぇ。ピンポン~ピンポン~ しつこいと思いつつ、這うようにインターホンに辿り着き、不機嫌極まりない声で

「はぁい~どなた?」

「あの……隣の下田ですが、ちょっとよろしいでしょうか」

えっ!オッ!オッ!なんで!

どうした! 俺大丈夫か!

「ハッイ!ハッイ今開けます!」

開けた拍子に、勢いあまって外に飛び出してしまった。

「危ねぇ! すみません!」

「あっ! いえっ大丈夫ですか?」

気まずいのに、おかしくて

俺たちは吹きだしていた。

「ごめんなさい。突然なんですが、あの田舎からスイカを送っできたんですけど、大きすぎて食べきれないのでお裾分けしたいなあと思いまして。お嫌いですか?」

「滅相もない! 大好きです。逆に俺遠慮しませんけど、大丈夫ですか」

「はい! 遠慮しないでください」

そのスイカに目をやる。

でかっ! 半分くれるの?

「あの~エアコン壊れているんですか?」

「ヘッ?なんで?」

「開けたら、空気がもわ~ってしたから。お困りのようでしたら

いつでも涼みに来てくださいね」

「いや~まぁ~なんと言いますか……冷えすぎに注意していて」

これを聞いたマシュマロちゃんは

一瞬固まるもゲラ子に早変わりしていた。

「注意って~熱中症の間違いでしょ~面白い人」

「じゃ~今度お邪魔しようかな」

脈絡はないが、押してみたら、

なんとズズット押せた。

「う~ん、それじゃ今日夕食にいらしてくださいよ」

いや~いきなりか? それって逆に怖い気も為るけど、お断りするには勿体ない。

「はい……是非」

「じゃあ六時にいらしてくださいね」

お辞儀をしてドア閉め、思わずスイカを抱き締めている俺だった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る