第3話 見合は続く

 長靴下のピッピ、これは元気になるから好き。やかまし村の子供たち! 屋根の上のカールソン。

メアリポピンズは映画から入った。雰囲気が大分違っていたけど……のめり込んだ。あしながおじさんは手紙書きたくて……文通したくて幼なじみを無理矢巻き込んだし。あっ珍しい! 美しきポリーじゃない。挙げてたらきりない。ああ~でもこの美しいきポリーは、小学生三年の時、肺炎を拗らせてひと月ほど学校に行けなかったときに、例の幼なじみの由実ちゃんが、お見舞いって持ってきてくれた本で……嬉しくて、思わず手に取ると後から声が。

「捜しましたよ。わあっ! 懐かしい! 名探偵カツレくんだっ!」

「どこ? 見逃した!」

「千早さんはルパン派? ホームズ派?」

「私はホームズ派! 和也くんは?」

「俺はルパン!」

「楽し~楽し~楽し~」 

「だね。じゃ続きはお店で話そ。そろそろ時間だし、行こうか」

私たちはお店に着くまでも、その頃の話しで大いに盛り上がった。

「へえぇ私、このお店知らなかった」

「そう? 最近出来たらしいから。吉祥寺に頻繁に来る?」

「ううん、半年は来てないかな」

「俺は二年ぐらい来てないよ」

店内はカンウター六席

テーブル席が三つのこじんまりとしていた。ご夫婦でされていて、静にカンツォーネが流れる。

「私、カンツォーネ大好き!」

「良かった! さてなに食べよう」

「コースにしよう! えっと……メインは白身魚のバジルソースがけと、あっさりミートソース玄米パスタにした。和也くんは?」

「俺はチキンのトマトソース煮込み。それと俺も玄米パスタでカジキとアサリのソースにしてみる。えっとドリンクは?」

「白のスパークリングワインにしてみる?」

「辛口で良いの?」

「う~んどちらかと言うとフルーティーなのが好き」

「了解! 好きなものが良いから。最初グラスで貰う?」

「……後で変えるかもだしね」

和也は注文を終えると、

「本の話楽しかった! 今は何読むの?」

「今はって言うか、最近は余り読まない」

「なんで? 忙しい?」

「ううん。そんなことないんだけど。理由は判らないの……

気づいたら読んでなかった。和也くんは?」

「俺本の虫では無いけど、話題作は一応買うよ。積ん読くなんだけどさ」

「積ん読ってさ、初め何のことか判んなかったの。何を積んどくのって。無知でしょう?」

和也は首振りながら

「そんなことないよ。でもさ本当、言い得て妙だよな」

それからも飲み、食べ、語り、楽しい時は流れていく。心が解れていく。ゆったりと自然に。本当に自然に打ち解けていった。

食事を終えて店を出たのは8時前だった。

「少し酔った! 今日はご馳走様でした。本当楽しかったよ! じゃあこれでね」

まだ一緒にいたいなぁって思う気持ちのまま、さよならしたほうが良い。余韻に浸るのもおつだ。

ひょいと和也が腕を掴んだ。

「えっ?」

「あっ! すっ、すみません。

まだ時間大丈夫? もし良かったらもう一軒行きませんか?」

「う~んお腹いっぱいだしなあ。んじゃ少し歩こうか? 中道通りに面白いお店あったりするけど、もう閉まる時間かな」

「良いじゃないですか。腹ごなしだし、二人で歩くのが良いんだよ」

私は聞こえないふりをして、歩き出した。もう年甲斐もなくドキドキしている私。

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