第1話 和也と千早 見合い

「これで駄目なら八十三回目の悲劇ですよ。アハハ。まあまあこればかりは縁ですからね。無理しても良いことない。でねあの人たちは置いて飯行きませんか」

まあ軽い。もといなんと気さくなお方でしょう。それよりは三十三才で八十三回ってお見合い回数凄くない? どうなってるの? 紹介する方も方だけどね。本人もおかしくない? うん? 二十五才からとして年に……二回……え~判らん……まあいい。私は君で八回目、まだまだ未熟者です。

 然し、今回久々見た目ヒットしたわ。通常断る前提だから見合い写真なんてみない。だから当然、はずれもあるんだが、否、のほうが多い。

それにしても君、今どきの子だね~私は嫌いだけど、ツーブロックって奴だよねその髪型。

全体は清潔感あり、身長は私より二十センチは高い。そして細身。顔は……誰にているって叔母ちゃん云ってたっけ、反町……さん? いやいや反村ぐらいだよね。

「あのぉ、聞いてます? 俺の話」

「お~勿論。おけー私はイタリアンが食べたい」

わざと馴れ馴れしくする。何故なら食事するのに緊張したり、探りを入れたりするのは愚の骨頂なのだ。食事は素がいい。当たり前のよに気遣いが出来るか、多少の無作法は大目に見るのか、飲んでどうなるのか、大した知識も無いのに、ワインとか料理のことをベラベラ喋るのか? みるところは山ほどある。それは向こうも一緒だからおあいこ。私はやりたいようにやってそれで駄目ならお終い。

君は四才も下だしな。今更可愛い子ぶってどうする。

「では、行きますか……今十五時二十三分だから。あっ、吉祥寺で良いです? 電車で行こうと思ってるんです。ここからだと予約の時間より早めに着くから何かと良い感じ……」

「えっ? 予約入れたの?」

「勿論、今さっき」

「今さっきってさ、どっちよぉ~今なのさっきなの」

「なになに……来るな……面白い突っ込みがぁ」

「あらぁ……こんなの面白いの? 甘いねぇ」

なんか浮き立つ。丁丁発止とはいかないまでも会話のテンポはいい。

「そうそう、電車はいいね~いろんな人がいてさ。縮図だよ人生の。自分もそう思われているけど、疲れた顔……隈が酷いね~眠いよね~社畜だよね。お互い様だから、しかたない肩貸してやるよんて思いながら乗ってると楽しい。お酒臭いからあんたには肩貸さないとかね」

「ほ~」

「あのさ、そこはほ~だけじゃつまらなくない? それは変わってますね、とか、面白い乗り方だ。ぐらいほしいけどね」

「ぷっ……そこ拘るの?」

「当たり前だよ。話しに花が咲くか咲かないかって、こう言うシチュエーションじゃ大事でしょうよ。お見合い大臣さん」

「お見合い大臣? って俺?」

「そうでしょう……三十三才にして、八十三回もお見合いしてるんだから。お見合い大臣いや! お見合い王だわ。アハハ」

お見合い王は固まっている。

 さあ君! この屁理屈姉さんについて来られるかしら? どう?

老舗和菓子屋のぼんぼんさんよ!。

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