第4話 途轍もなくいい気分!

 おすすめコースとボトルで赤ワインをオーダーした。

ワインはフルーティーで飲みやすかった

「美味しい! このワインどんどんいけますよ」

「酔っぱらっても連れて帰らないからね。うふふ」

「は~そんのこと言っちゃいます? この間の事忘れているのかなぁ? この台詞はそのままお返ししますよ。でも俺はちゃんと連れて帰ります。爽さんが襲われたら困りますから」

「アハハそんな変人いないから、心配なし~」

 さっきから爽は、あの話の切りだし方を考え倦ねていた。

どうしよう……でもなぁ、変に構えるよりはストレートに話した方が良い。矢島はそう言うタイプだ。

爽は少し姿勢を直すと、

「ねぇ、矢島くんはさ、絵美の事で悩んでいたじゃない? あれから進展あった?」

矢島は、空を睨み暫く黙っていたが徐に、

「まぁ、アピールはしていましたが、全く興味ない! がビンビン伝わって来て、さすがに阿呆らしくなって辞めました。今考えると自分でも謎ですよ」

そっかぁ、なら敢えて、恋人がいる事を持ち出さなくても良いよね。どうする? する? しない? う~ん悩むなぁ。

「なにそんな難しい顔してるの? それより絵美さんと柴さんって付き合っていますよね。爽さんは知ってた?」

うっ、爽はワインを吹き出しそうになるのを我慢して飲み込むと、咳込みながら

「実はさ、今日昼休み絵美が口を滑らせて知った。でも何で矢島君は判ったの?」

「ああ~俺見たんです。ほらちょっと前に残業ありましたよね。

バイトも残れって。猫の手に為れって言われたときの……あの時会社から少し離れた所で、ふたりして手繋いでタクシー止めていたんですよ」 

爽は溜息をつくと、

「そっかぁ。それってやっぱりショックだったよね~」

矢島はまた空を睨み、突然笑い始めた。

呆気に取られ、ポカン口を開けっぱなしの爽を見て、

「爽さん! 口、口、空いてるよ。ったく可愛いんだから……」

爽には最後まで聞き取れなかったが、口は確かに空いていた。

慌て閉じたが、矢島はゲラゲラ笑っている。

もう~嫌だ!恥ずかしい。

爽は誤魔化すように目の前のチキンを頬ばった。

「おいひいよ、これ」

矢島も頬ばっり

「ほんほ、おいひい」

いい気分! とってもいい気分!

そっかぁ。好きじゃないんだ!

そっかぁ! やったぁ!

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