家族みんなで
部屋に戻った俺は頭を抱えていた。理由はもちろんさっきあったやつ、綾乃のことだ。
さすがに度が過ぎているのではないだろうか?休日の俺の動向まで探るのはさすがに…
もう付き合いきれない。縁を切ることも頭に入れて置いた方がいいな。めちゃくちゃに取り乱しそうだが…
と、そこまで考えたところで俺の部屋の扉がノックされた。俺は椅子から立ち上がり扉を開いた。するとそこには真希さんがいた。
「あ、愛斗。今ちょっといいかしら?」
「はい、大丈夫です」
一体どうしたのだろう?
「き、今日どこかに行ってたの?」
…どうしてみんな俺の動向を知りたがるんだ。
「友達と遊園地に遊びに行ってましたけど…それがどうかしましたか?」
疑うように真希さんを見る。
「友達と遊園地…」
真希さんは小声で何かブツブツ言っている。
「そ、その、愛斗が良かったらでいいんだけど…」
なんだ?
「家族全員で今度の休み、遊園地に行かない?」
どういう風の吹き回しだ?
「…いえ、遠慮しておきます」
無理に仕事を休んで俺に構う必要も無いと思いそう言った。
「ど、どうして?」
真希さんはそう疑問を投げかけてくる。だから俺は理由を述べる。
「真希さんは仕事が大切だと思うので無理に俺のために休んでもらうのは悪いと思ったので遠慮しておきます」
まぁ誘ってもらったのは嬉しい…嬉しい?俺は嬉しかったのか?どうして今更そんな感情が…
そんなことを考えていると真希さんは慌てたように
「し、仕事なんていくらでも休むからたまには家族で遊びましょう?」
俺と真希さんが話していると奈那さんが近寄ってきた。
「お母さん、お兄ちゃん、何話してるの?」
すると真希さんはこれまでのことを話した。
「たまには家族みんなで遊園地に遊びに行かないかって愛斗に言ってたの」
すると奈那さんは目をキラキラさせて食いついてきた。
「行きたい!ねぇお兄ちゃん!行こうよ!」
…本当に最近どうしたのだろうか。前まで俺の事なんてどうでも良かったはずの家族が俺にばかり構ってくる。…気を使われているのか?そんなの嬉しいはずないだろ。
「あの」
俺がそう言うと真希さんが反応した。
「どうしたの?」
だから俺は言った。
「俺に気を使ってるんならそんなことしなくていいですよ?気を使われる方もしんどいので」
こういうことはハッキリと言った方がいいだろうと思いそう言った。
「…ごめんね、愛斗、ごめんね…」
何故か真希さんが目元を抑えながら涙を流し始めてしまった。
「お母さん…」
奈那さんはそんな真希さんを眺めていた。
なんだ?俺が悪いのか?俺が何かをしたから真希さんは泣いているのか?
「すみません。やっぱり俺が居たら空気が悪くなるみたいです。おやすみなさい」
「あ、愛斗!」
「お兄ちゃん!」
そう言って扉を閉めた。
心にしこりを残したまま。
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