遊園地

遊園地に着いた俺たちは入場券を購入して遊園地に入った。

この遊園地は広大な敷地に沢山のアトラクションと何度来ても飽きないような遊園地だった。


「わぁ…」


「わぁ…」


羽田巻兄妹が辺りをキョロキョロして同じリアクションをした。本当に似てるな。仲がいいんだろうな。そう考えると少しだけ胸にぽっかりとした空洞が空いたような気持ちになった。

…なんなんだろうな、この感覚。


「どうしたんだ?二人して同じような反応して」


俺がそう聞くと二人は少しだけ恥ずかしそうに目を伏せながら言った。


「い、いや、その、今までこういう所に来たことがなかったから…」


「その、ちょっとはしゃいでしまって…」


この二人の性格からしてこういう騒がしいところにはあまり来たことがなかったのだろう。子供みたいで可愛いな。



…高校生の二人に使う言葉じゃなかったな。


「じゃあ遊ぶか」


「うん!」


「はい!」


今日の目的はここで遊ぶことだ。楽しい一日になりそうだ。



それから俺たちは色々なことをした。



まずはジェットコースターに乗った。


「ほ、ほんとに乗るの?や、やっぱりやめない?」


乗る直前になって樹がそんなことを言い出した。


「もしかして兄さん怖いんですか?」


それに反応するように奏がそう言う。


「そ、そんな訳ないでしょ!」


樹は口ではそう言っているが口から出た言葉は震えていた。


「お、おい、無理しなくていいんだぞ?」


そう言ったのだが


「む、無理なんてしてないよ!」


どうしても意地を張るようなのでこれ以上は言わないことにした。



ジェットコースターに乗り込み胸の前に安全バーが下ろされる。そしてジェットコースターはゆっくりと動き出した。



-------------------------------------------------------

「めちゃくちゃ面白かったね!愛斗!奏!」


「おう、そうだな」


ジェットコースターから降りた俺たちはそんな会話をしていた。



実際楽しかった。日常では味わうことがないような疾走感と少し傾いた時の浮遊感が楽しいと思わせる要因なのだろう。


「ねぇ!もう一回乗ろうよ!」


「俺はいいが…」


そこで言葉を区切り横に居る奏に目を向ける。


「ちょ、ちょっと待ってください…うぷっ」


横に居る奏はベンチに項垂れていた。


「あれ?どうしたの奏。さっきまで元気だったのに」


樹が意地悪な笑顔を浮かべて奏に話しかけている。


「…」


奏は悔しそうな顔をして黙っているがやはり顔色が悪く気分が悪そうだ。


「大丈夫か奏。ほら水」


俺は持っていたペットボトルの水を奏に渡した。


「ありがとうございます」


奏はお礼を言って水を一口飲んだ。


「大丈夫です。ありがとうございました」


そう言った奏はかなり顔色がよく見えた。


「あ、こ、これって…」


と思ったのだが急に顔が真っ赤になってしまった。


「ん?どうした?」


「な、なんでもないです!ほ、ほんとなんでもないですから…」


「そうか?」


「…愛斗ってそういうこと平然と出来るのがダメだよね」


「…ダメです」


「え、な、なんだ?なにかダメなことしたのか?」


本当に分からないが何かいけないことをしてしまったようだ。



それから数分してから俺たちはお化け屋敷に入った。


「ま、愛斗?ちゃんと横に居る?」


「あぁ、居るぞ」


そう言った樹は俺の腕にしがみついてブルブルと震えている。


「…兄さん。このお化け屋敷そんなに怖くないですよ」


「…まぁ、そうだな」


そう、このお化け屋敷はあまり怖くない。脅かしますよー、と見え見えの仕掛けがあったり人形がかなり明るいところに置いてあったりと初心者向けのお化け屋敷だったようだ。


「ま、まぁ?本当は怖くないけど周りが暗くて転けそうだから愛斗に捕まってるだけ」


樹が最後まで喋ろうとしていた時、横からテレビでゲストが登場する時のような白い煙が勢いよく吹いてきた。


「きゃああぁあぁ!」


「…きゃーって」


「…兄さん、はぁ」


女の子かよ。というツッコミはしないでおいた。


「な、なんだよぉ!」


樹は涙目になっていた。


「落ち着け。隣にいてやるから」


そう言って樹を落ち着かせる。


「愛斗…」


「ダメですダメです!危険です!」


いきなり奏がそう叫び出した。


「ん?何かあるのか?」


目の前に何かあるのかと思い確認してみるが何も無い。何が危険なんだ?そしてやはり樹は俺の腕にベッタリだった。


「兄さん、適度な距離を保ちましょう」


奏は真剣な顔で樹にそう言っていたがあまり意味は分からなかった。



それから何度も何度も止まりながらもようやく外に出ることが出来た。


「やっと終わった…」


樹はゼェゼェと息を切らしていた。


「ちょっと休憩するか」


「そうですね」


そう言って俺たちは近くにあるベンチに座った。


「ちょっと僕トイレに行ってくるね」


樹がそう言ってベンチから立った。


「あぁ」


「行ってらっしゃい」


俺たち二人が見送ると必然的に奏と二人きりになってしまう。…ちょって気まずいな。



だがせっかく今日は楽しみに来たのだ。こんなところでその雰囲気を壊したくないと思った俺は話しかけることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る