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これだけ
ママはそれでもいいって言う。それでもいいからパパを覚えていてって。会ったことがなくても、声を聞いたことがなくても、パパが生きていたって事実は、忘れないでいてって。
たまに仕事で失敗したりして、落ちこんでるときなんて、ママのことは忘れてもいいからパパのことは覚えていてって、そんなことまで言う。いやいや、ママのことは忘れませんけどもって私は思う。そんな悲しいことあるかいって。
だけど、ママにとってみればそれくらいに、私にしてほしいことなんだよね、パパのことを覚えているってことが。
いつだったか、ママにすごく
私を
テレビで聞いたのか誰かから聞いたのかは忘れたけど、私はあるとき、『
あたらしい言葉を覚えると、使ってみたくなるのはあるあるだよね。だから私はママに、まえから気になっていたことを、こういうふうに聞いた。「パパってさ、
それまでの私は、パパのことを、『死んじゃってる』って言ってたんだけど、覚えたての言葉を使いたいっていうのがあったし、それに、『
私には
それで私は大泣きした。
だって、なんで
よかったことに、ママはすぐにもとのママに戻った。それでママまで泣きだして、それから私を
しばらくそうして、ふたりして落ち着いたころに、ママは言った。「
それを聞いて私は、心のなかでこう思った。『いや、ママはめちゃくちゃ悪い人だ』って。
ママは続けてこう言った。「だけどね……
それを聞いて私は、心のなかで、『私もちょっと悪かったかも』って思った。
まあそんなわけで私は、自分なりにパパのことを思いつづけてきたんだけど、いまのところあんまり手ごたえはない。
私は人並みに、パパがいたらよかったのにとか、パパのいる家はうらやましいなんて思ったりすることもあるけど、そういう気持ちと、じっさいのパパへの思いとは、なんだか
思っていてと言われて思っても、自分で思ってみても、それはどこにも
追いかけても追いつけないのに、忘れちゃいそうってときには、姿をあらわして私を
いつまで
だから私は、パパと息子に使うものってことを知って、もっともっと、『ジュニア』って言葉のことを、いいな、ステキだなって思った。
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