12
私は、トリカゴのなかの楽しそうなジュニアを見つめたままあとずさりして、頭の後ろに目がついているように、真後ろの
そして、
私とジュニアは
私はこれぞ
そうして私たちは、どこか知らない遠くの街をめぐったり、深い森のなかを歩いたり、小川の流れを追ったり、広い
そこは、夕方がいつまでも続く世界だった。
それに、ずっと晴れていた。
空は、ちょうどいい晴れぐあいだった。
夕日はずっと同じところに浮かんでいた。
だからどんなに歩いても、時間は少しも進まない。そのせいか、眠くならないし、疲れない。それなのに、私たちはちゃんとお腹がすいて、三食しっかり食べて、これは朝ごはん、これはお昼ごはん、これは夕ごはんってぐあいに、なぜかちゃんと
ずっと歩いて、ずっと同じようなことをして、それなのに、私は、ずっと楽しかった。
なぜか、私はトリみたいにキレイな鳴き声を出せたし、ジュニアは人みたいにじょうずにしゃべれた。
だけど私たちは、相手の言っていることがわからなかった。
人なのに、人の言葉がわからない。
トリなのに、トリの言葉がわからない。
それでも、気持ちだけは通じている気がした。
世界は、夕焼けに染まって、キレイだった。
それになんの
朝になったらどんなんかな、とか、夜になったらどんなんかな、とか。もっとキレイかな、とか、違った感じになるのかな、とか、どっこいどっこいかな、とか。そんな感じにいろいろと。
ふと、夕日に話しかけられたような気がして、私は、じっと夕日を見つめた。でも、とうぜんなにも起こらない。
夕日がしゃべるわけないよね。だけど私は、それを、すごくつまらなく感じた。なんでしゃべってくれないのって。どうしてって。
夕日からなんの反応もなかった代わりに、目に夕日の光が焼きついて、目が見えなくなった。まぶたを閉じていても
そうこうしているうち、いつのまにかジュニアがいなくなっていることに、私は気がついた。自分のことに
私がもたもたしてるから先に行ってしまったのか、それともなにかのイタズラなのか、
だけど、私はぜんぜん不安に思わなかった。歩いていれば、探していれば、いつかかならず、また会える。だって、時間は
私はそれから、ジュニアを探すために世界じゅうを歩きつづけた。
目が見えないから、とうぜん私はよくつまずいて転んだし、あちこちに頭や体をぶつけたし、
だけど、私はぜんぜんヘーキだった。
のんびり歩きながら
突然前ぶれもなく、世界が真っ黒になった。
なにがどうなったのか、私にはさっぱりわからなかった。
夕日が沈んで夜になったのか。それとも、私の感覚が死んじゃって、オレンジ色を感じられなくなってしまったのか。
なにも見えないんだから、どんなに考えてもわからない、とわかっていても、考えずにはいられなかった。
そうしていないと不安だった。
いつか夜になったらいいのにって、私はそう思っていたはずなのに。あんなに長いこと見て、
ついさっきまで、なんの
どっちに行けばいいのかわからなくて。
このまま、ここで待っていたほうがいいのか。
間違えたらどうしようって、すれ違ったらどうしようって。
もう私は、一歩も前に進めなくなっていた。
あれこれと、うんうんと考えているうち、ふと私は気がつく、なんの音もしないことに。息を思いっきり吸っても、音が鳴らない。
一瞬、頭のなかが真っ白になった。これじゃあ、ジュニアの声が聞けないじゃんって、そう思って。
それだけじゃなかった。頭が真っ白になっているあいだに、なんの感覚もなくなっていた。匂いもしない、風も感じない、熱いも寒いもない、口のなかの
突然、夕方の明るさを感じて、私は
部屋のなかには、夕暮れが
めまいでもするみたいに、頭がぼんやりしていた。
なぜか、すごく不思議に感じた、目が見えることを。ああ、寝ぼけてるな、って思って、私はそこで初めて、いつのまにか自分は眠ってしまっていたらしい、ということに気がついた。
私は
いくらなんでもヨダレ出しすぎでしょ、と自分に
部屋のなかがしんとしているから、ジュニアも気持ちよく寝てるのかな、なんて思って、私はトリカゴに近づいていって、中を
ジュニアは、トリカゴの底に横たわって、うっすらと目を開けていた。
なにかおかしいって思って、私は、トリカゴの
ジュニアの体はあったかかった。
だけど、手のひらに意識を集中させると、彼女の体のなかが冷たいのが、わかった。その瞬間、感じた、ジュニアが死んじゃってるって。
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