13
それから私は、しばらくのあいだ泣いてすごした。
このころの
泣いて
ただ、白黒のパラパラマンガがめくれていくみたい。聞こえるか聞こえないかで、カサカサ鳴って。それも、手抜きのパラパラマンガ。場面が次々飛んで、まえとあとがつながらない。
学校の先生に
頭には残っているけど、まるで自分のことじゃないみたい。覚えてはいるけど、ちゃんとは覚えておけないって感じ。ちょうど、夢みたいに、うっすらした
ただ、これだけははっきり覚えてる。私はずるい考えに行き着いたって。
ジュニアが死んでしまった理由は、私が寝ているうちに太陽が降りてきて、窓のスダレがかかっていないところから顔を出して、部屋のなかを
それでジュニアは、暑くてたまらず、死んでしまった。
完全に私の不注意が
だけど私は、それを、太陽のせいにした。
太陽が降りてきたせいで、ジュニアは死んじゃったんだって。ずっと太陽が動かないでいれば、ジュニアは死なずにすんだのにって。
私は、自分のしたことを認めたくなかった。
自分がジュニアを死なせたなんて思うと、怖くて怖くてたまらなかった。そんなの、怖い夢だって。ただの夢だって。だけどそれは、夢なんかじゃなくて、ずっと覚めなくて、事実で、現実で、いつまでも消えないこと。
ジュニアを死なせてしまったことがショックで、いままで考えることもしなかったけど、とうとう彼女は言葉を話すことはなかった。
私は言葉を覚えてほしくて、ジュニアになんどもなんども話しかけた。だけど彼女はただ、不思議そうに首を
彼女はもとからおしゃべりが好きじゃなかったんだなって、そう決めつけちゃいそうになるけど、それは間違いなんだよね。
だって私は、彼女の鳴き声を、なんどもなんども聞いているんだから。思えば、それが彼女のほんとうの声なんだよ。誰かのまねとかじゃなくて、ほんとうの気持ちがこもった声。
ただそれに、私が耳を
もちろん、うれしそうとか、今日は少し元気がないみたいとか、そういうことは感じてた。でも、それだけ。深いところまでは知ろうとしなかった。いつか、彼女が言葉を覚えてくれてからそうしよう、なんて考えていた。
自分で自分をバカだなって思う。
言葉をいくら覚えても、それはただのまねっこでしかないのに。彼女はずっとホントの気持ちを伝えてくれていたのに。
だから、ジュニアが家にいるあいだどういう気持ちですごしたのか、もう私にはわからない。いまごろになって、それを知りたいなんて思っても、遅いよね。
でも、どうなのかな、いつかそれが知れたりするのかな。大人になったら、考えていたら、耳を
思えば最近は、まったくジュニアのお
なにやってるんだろう、私、あんなことしちゃったのに。私はなんなんだろう、あんなことしちゃったってのにさ。
私はちっとも神さまなんかじゃない。ただの
目に見えない病気みたいなもの。姿が見えないことをいいことに、ほかの誰かを
ううん。
ジュニアを死なせてしまってから、いつのまにか私は、動物をさけるようになっていた。というよりも逃げだすって感じかな。
動物が目に入ったって知らないふりをした。
動物に見られたって知らないふりをした。
動物になんかまったく
だって、そうするのが、正解なんだと思ったから。もう自分には、動物を好きでいる
でも、あのカラスさんに出会ってから、なんだかそれが
……私、どんだけ動物が好きなんだよ……ってね。
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