ツーアウトっ!
1
ふと、めまいがして、体の力がすっと抜けた。ヤバい倒れそうと思って
私は変わらず、道路のまんなかに突っ立っていた。
対するクルミはピンピンしていて、道路に寝転びながら、
ただちょっとのあいだ、目をつむって考えごとをしていただけなはずなのに、……なんだか私は、どっと疲れていた……。
まるで、インフルエンザにかかって、ずっと寝こんでいたみたい。とくに脚がすんごいダルい。ずいぶん長いことこの場に突っ立っていたみたいに。
カラスさんのほうも
「……もしかしてわたし、立ったまま寝てた?」と私は、
「わからない。もしかするとおまえは、
「えっ、ゾンビ? ……どうしてそうすぐに、わたしを殺そうとするの……? わたしちゃんと生きてるから……。ていうかテツガク的ゾンビってなに? なんかめっちゃ頭よさそうだけど……、……あれかな、ゾンビだけど、『考える人』みたいなポーズをとってるとか?」
「ぜんぜん違う」
「そですか……。ていうかホントにわたし、どれくらい目ぇ閉じてた? もしかして一分くらい?」
「いや。一年くらい」
「……。あのさ……、カラスさんさ、……ウソへたすぎない……? もしかして、おバカ……?」
「おまえ、オレをなめているな?」
「いやぁ。なことはないよ。かわいいとは思うけどね」
「ほぅ」
なにが『ほぅ』じゃい、どんな
「ぐしゃっ! ……ぐしゃあっ!! ……はー、すっきり」
なんだかわかんないけど、くしゃみをした
「あれ、……もしかしていまの、キミがやった……?」
私の声にカラスさんは答えずに、黙ったままだった。あと、なぜだか知らないけど、信じられないものでも見るような顔をして、私のことを見ている。
「……な、なに? あんまり見られると、ちょっと
そのとき、かすかに人の声のようなものが聞こえた。
あたりをキョロキョロ見まわすけど、小さい音だったから、どこから聞こえたのかはわからなかった。
それでも私はいちおう、キョロキョロしながら一分くらい身構えていた。そのあいだ、なにも起こらなかったし、なんの物音もしなかった。
……よかったぁ、今度こそ気のせいだ……と思ってほっとため息を吐いた瞬間、またさっきの声が聞こえて……、それだけじゃなくて……その声はじょじょに大きくなっていって、……ヤバいくらいの大声になった。
まあでも、ここから少し離れたところでギャーギャー言ってるみたいだから、そこまで耳にはこないけど、それでも……きっとこの人は、全力で叫んでいるんだろうなってことはわかった。……いや、全力じゃなかったみたいだ……。声はさらに大きくなって、耳にめっちゃビンビンくるようになった。
迫力がすごい。まるであれみたい、こわい映画のケンカの声。私に
「こ、こわぁ……。こわすぎ……。こわすぎない……?」と言いながら私はカラスさんを見た。
「
「……いや、あるよ。ぜったいに。だって、やりすぎはヤバいから」と言って私は、カラスさんから目を切った。
さすがにこれだけ音が大きくなれば、どこからしているかはだいだいわかる。
私たちのいる場所から夕日に向かって
声はそのアパートからしてるっぽい。
しばらく様子をうかがっていると、急に、道のまんなかに、人がひとり飛びだしてきた。それも、大声をあげてパニックを起こしたように……。
その人は男の人で、全身真っ黒な服を着ていた。一瞬、お
スーツの人は、めちゃくちゃに腕を振りまわしながら一分くらい
かと思うと、学校の
な、なんだあれは……? ヤバすぎでしょ……。
スーツの人は同じ
最初はギャーギャー言ってるだけだったけど、それがだんだんと言葉になっていった。おんなじ言葉をくりかえしてるっていうのはなんとなくわかるけど、でっかい声で
……なんかあんまり認めたくないけど……、私は、なんて言ってるのか気になってしまって、スーツの人の声に意識を集中した。
スーツの人は、『
……どうして
……そもそも、
叫ぶうちに言いなれて舌がまわるようになったのか、スーツの人の言葉がはっきりしてきた。まあでも、思いきり叫んでるから、ときどき声が
「
……ていうかスタミナありすぎでしょ……。少しも休まず、ずーっと叫んでる。どんだけ息が続くの……。いつ
デスメタル。
友だちで、めっちゃ好きな子がいるんだよねぇ、デスメタル。その子はたまに、昼休みになるとスマホにイヤホンをつないで、好きなデスメタルを私に聞かせてくれるんだけど……、……私にはそのよさが、さっぱりわかんないんだよねぇ……。私にはまだ……はやすぎるのかも。
それで思いだしたんだけどさ、私もはやくスマホがほしいだよねぇ……。
ママは、「高校にあがったら買ってあげるから、……いまに見てなさい」って言うけど……。……うーん……。なくてもそこまで困らないんだけどさ……持ってる子がどんどん増えていくから、なんかめっちゃ
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