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「今日は
スーツの人は、トドメの
あ、もしかして、これで終わりかな? なんて思ったけど、ぜんぜん違った。叫ぶだけじゃ気持ちを
声に比べたら、ジタンダの音は
ここは体育館とかじゃなくて、地面は
動きのわりに鳴る音はすごく小さい。
だけど、あんなことして、痛くないわけがない。あんまり
あのままだと、足がダメになっちゃうんじゃないかって思った。それに、あんなに叫んでいたら、いつかかならず
……おまわりさん呼んできたほういいのかな……?
でも……、
……うーん……いちおうスーツ着てるから……ふだんはちゃんとした人なんだと思うし……たぶんだけど……。……
こないだ見たテレビで言ってたからね、『人を見るときは、その人の
……でも……どうなんだろ……まえにママから
……よくわかんない……。
スーツの人が
きっと、こういうのを
私はあることをひらめいた。
クルミをスーツの人の足元に転がしてやれば、クルミが
……これならいけるかもしれない、いまならいけるかもしれない! ……でも、これはいけないこと……。スーツの人に、めっちゃ
……でもそれ以上に、……スーツの人はクルミを
でも私は、
私は地面に転がるクルミを
そして私は、ひとつ
とくに意識したわけでもなかったけど、私は、ボウリングの転がし方をしていた。
投げ終わりのポーズを決めたまま、私はあることに気がついた。『私、生まれてから、一度もボウリングしたことないじゃん』って。
クルミは少しカーブしながらも、まるで吸いこまれるように、ちょうどスーツの人の足元に転がっていった。
「よしっ! ツーアウトっ!」
そう言いながら私は、無意識に、空を見上げておおきくガッツポーズをしていた。バカみたいにおおげさに。
……自分の思いどおりになったのが、そんなにうれしかったんだね、私……。ていうかツーアウトじゃなくて、ホントはストライクだしさ……。
てか、ガッツポーズをしたのは、生まれて初めてかもしんない。たぶんだけど。
サイコーにうれしいとき私はいつも、
自分ではそれが普通だと思ってたんだけど……、こないだ友だちに、「なんかさ……ノノのそれって、なにかの
……あと、なんだかコゲくさい。
スーツの人を見ると、その
大きな
すごい存在感だ。まるでこっちをドヤ顔で見ているみたい。なんかもう、『クルミの食べるところの王さま』って感じ。
「やった! やったよ、カラスさん! やったねっ!」
クルミから目を切って、カラスさんのほうに振りかえろうとした瞬間、なんだかやけに
嫌な予感がして私は、またクルミのほうを見た。けど、クルミの中身が見あたらない。その代わりに、クルミの中身があった場所には、スーツの人の右足が置かれていた。なるほど。それじゃあさっきの音は、スーツの人が、クルミの中身を
「
「ああ! ちょっとやめてえ! ストップ、ストップ! やりすぎだよっ!!」
スーツの人は、どんなに私が声をかけても止まらなかった。というよりそもそも、私の存在に気がついてさえいないみたいで、ただひたすら「
「……ぅ……うわぁ……
クルミは、中身も、その
私は
気がつくと、私は知らないあいだに、その場に腰をおろしていた。ぺたんこ
日が沈みかけているとはいえ、いまは夏。それなのに、アスファルトはやけに冷たくて、まるで、真冬の体育館の
スーツの人はしばらくのあいだ、たぶん九分くらい
それからは、ずっと下を向いてうなだれて、
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