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ママは台所にいて、お昼ごはんのあとの洗い物をしていた。
私が、ねぇママ、って話しかけると、ママは、あらなに、あんなにたくさん食べたのに、まだ足りないの、なんて失礼なことを言ってきた。
ちょっとムッとしたけど、それはすぐにひっこんだ。なぜかといえば、ママの言うとおりだったから。
私はそのころ、タマゴかけごはんにドハマりしていて、いつかサイコーのタマゴかけごはんをつくってやろう、なんて
そんなわけで私は、たいしてお腹がへっていたわけでもないのに、お昼にごはんを何杯も食べていた。そのせいで眠気がしたし、それに
それはいいとして。
私はママに、ジュニアの
ママがお昼寝なんかで使うやつ。エアコンがダメなママにとっては、けっこう重要なアイテム。
窓をぜんぶ
どんなにしっかりまるめて
そうして私は部屋に戻って、窓ガラスを
次に、
トリカゴのなかは、ちょうどまんなかを
朝の世界と夜の世界。そんなふうに感じた。朝と夜が、同時にそこにある。世界がはんぶんこになったみたい。朝と夜の
いま思うとぜんぜん不思議じゃない。あたりまえだよ。そんなことしたって、夕方があらわれるわけない。
だけどさ、このときの私は、それくらい自分の想像に心をうばわれて、そのとりこになっていた。とりつかれていたといってもいいくらいに。
このときの光景が、いまでも目に焼きついてる。まるで夕日の
このときの不思議を、私はときどき思いだす。
あたりまえのことを、ほんの少しのあいだ、なぜだか、あたりまえと思えなくなるような、あのうっすらとした
頭のなかが
不思議じゃないことが、不思議に思えてしかたがなくなる、あのよくわからない気持ちを。
急に
私はそれを見て、すごくうれしくなった。そして、こうも思った。やっぱりって。やっぱり、トリは、外で暮らす生き物なんだ、って。
そのふたつの思いが
でも不思議と、ぐちゃぐちゃした感じじゃなくて、片方がもう片方のすきまに入っていくような、そんな感じだった。
あれみたいに、ぬるいお湯でつくる
スプーンでどんなにかき
おいしいココアをつくるのはあんがい
楽してはやくは、甘えんぼ。かならずひと
ふたつを追っかけると、かならずどっちかを
まるでウサギとの追いかけっこ。
だけどなぜか、突然、頭のなかのココアがとけた。ちょうどいい温度で、しっとりして、ごくごく飲めちゃう。おいしい、おいしい、ココア。
不思議な感覚だった。言葉の意味とか、あれをこうすればそうなるよねってやつとか、自分のこととか、いままでの思い出とか、そういうのがすべてとけて、なんにもわかんなくなっちゃうみたいで。
自分でもよくわかんないことがかってに進んでいくのに、なぜだか
二匹のウサギをつかまえて、
もう私は、ウサギをかわいがることしか頭になくて。不思議だらけなはずなのに、まったく不思議を感じない世界。まるで夢のなかにいるみたい。ううん、それよりも。夢がこっちに来てくれた、っていうほうがたぶんあたってる。
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