「なぁんだ、気のせいか……いいや違うな……うんうん……そうさ。これは気のまよいってやつだな。……おおそうとも……ああおうとも……。


 ……これは……まったくどうかしてる……うーん……ううん……カラスとタンパクしつくちびるとを見間違えるなんて……疲れているのか俺は……? うーんうん……考えてもわからない、考えがまとまらない……ぬぉぉ……だめだ……だ、だ……だめだだめだだめだ……だめだ、だめだ、……だめだだめだだめだだめだだめだ………………。


 ……まあいい……とりあえずは……、疲れのとれる行動をとろうじゃないか……それが確実だ。……たとえ疲れていなくとも、がいなどいっさいないじゃ……ないかよ……??


 ああそうだ、まさにそうだ、……間違いのない行動は間違いなしじゃないか……う、う、う、う、う……ううーん……これはわれながら俺らしい行動計画こうどうけいかく……う……食材しょくざいをトリに見立て……う……冷蔵庫れいぞうこ在庫処理ざいこしょりといこうじゃないか……、……なあ……君もそれがいいと思うだろう? トマト味のトリ肉はサイコーだ……セロリ味のトリ肉も悪くない……。


 ……おい……待てよ……? トリはいろいろいるのに……我々われわれ、つまり人類じんるいみなきょうだいは……ニワトリばかりパクパクしている……。

 不公平ふこうへいというか……偏食へんしょくだとは思わんか? 不条理ふじょうりというか……好き嫌いがはげしいとは思わんか? 誰の目から見てもそうではないか?

 俯瞰ふかんし、概観がいかんし、鳥瞰ちょうかんし、あっち向いてホイをまるごと手中しゅちゅうに収めてみるがいい。そうすれば君も、その違和感いわかんにたどり着くだろう。


 バラされるニワトリをて、スズメはなにを思っているんだ?? ……なにぃ……? カモがいる……? あしとりの語感ごかんはうまそうでは、ある……だけど……君さ……ここ最近、いや……数年でもいい……なんかいカモ肉食べたよ? なあ? え? ……週一しゅういちで食べている……? ははっ……これはこれは……ぐうの音も出ない……くそ……うぐぐ……ぐう……。


 これは帰ってやけいだなぁ……ペットのピーちゃんを生きたままうのが妙手みょうしゅだ……いやなに……大丈夫問題はない……ピーちゃんはみずからの口で、百も二百も『ワタシヲ、タベテチョウダイ』と言ったのだからなぁ……ぅん……ああぁ、朝からばんまで、しつこく仕込んだかいがあったというものだ……トリカゴにおおいかぶさってひたすらひたすら……ひたすらひたすら……うん……うん……。

 うんともすんともないじゃないか、……これはいい……、……罪悪感ざいあくかんがない……倫理的りんりてきにも問題なし……俺の頭はいっとうえてえて、えわたっている……うーん……。


 しかし……話はがらりと変わり。……まったく今日は厄日やくびだ……。タンパクしつくちびる誘惑ゆうわくされてしまうなんて……末代まつだいまでのはじだ……。

 うーん……のほほんとした日々がひどくこいしい……うう、のどから手がのび、そのまま肩口かたぐちまで出そうだぁぁ……ぅ、うぅぅ……、うーん……トリを、おか青春せいしゅん……うーん……待て……待てよ……うーん、たしかに俺は……つい今しがたまで、もっと端的たんてきにいうなら、日が落ち、街がやみまれるまでは、なんの邪念じゃねんもなく、ワタリドリたちといいことしてたのだがな……うぅううぅううぅうう……うーん……。


 このけがれ、落とせるだろうか? ……うん……うーん……心機一転しんきいってんと心をえたとして、そのときの俺ははたして、ワクワクしながらドキドキしているか? ただ、しているつもりなのではないか? うーんわからぬ。


 頭のうみしんぞうを合わせてみねばならんか? うーん。このせいを受けてから、今日の夕方にいたるまでのあいだ、俺はたしかに、あいの道理に沿って生きていたはずなんだ……、……なのに……あんなにいやらしいくちびるに、……一瞬でも心をうばわれてしまうなんて……。


 あれか? 紅茶こうちゃが足りないのか? うーんうーん。コピペのコピペのコピペではだめなのか?? だしすぎたやつは水も同じだと、……そういうわけか? レンズをかいするのがそもそもの間違い? あの美しいトリたちをしんに味わうには、眼球がんきゅうで直接れねばならんのか……??


 ……うーん……頭のなかの認識にんしきにおいては……誰しも、あい理想像りそうぞうを持っている……。俺のはこうだ……あいするふたり……ひたいを融着ゆうちゃくさせ、ときたま恥ずかしそうに視線を合わせながら……世界の終わりまで……睦言むつごとわしつづける……。


 俺は感じている。この坂道を越えた夜空の向こう。そして俺の背後はいごの空のて。その両方からしんあいの気配を。

 ……こ……これは……たがいに、かぎりなく離れていながら……世界のて同士がひたいをくっつけ、あいを語り合っている……?


 で、あるとすればだ、『うしろの正面だぁれ??』とはつまり、あいのささやきなのではあるまいか?

 閉じた世界……いいや……閉じた宇宙うちゅうゆえの……だからこそつそのあいこそが……『うしろの正面』ということなのでは……『うしろの正面』とはつまり……言語的げんごてき方程式ほうていしきなのではあるまいか、……つまりだ……ひたいをくっつけ……ただそれだけで通じあうあいこそが……世界の真理しんりなのだ……? あいこそが真理しんりと? 感情かんじょうこそが真理しんりだと? ……はたしてそうか?


 ……まあいい……とにかく……覚悟かくごはできたさ……あいのためならこんな眼球がんきゅうなどくれてやる……、あとはかわいいトリをつかまえるだけだ……!」

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