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私のパパは、私が生まれるまえに死んでしまった。
だから私は、パパに一度も会ったことがない。
私にとってパパは、写真のなかの人で、ママの話してくれるお話のなかの人で、もとからいなかった人で、昔の人。
もしもパパがいなかったら、私はこの
誰かの
そういう昔の
ひどい話だなって自分でも思うけど、こういうのは自分じゃどうしようもないよ。
私がパパに
だけど、それでも、わからないものはわからないよ、感じる感じは変えられない。
私のパパは、私が生まれるまえに死んでしまった。
それも、私が生まれるちょうど一日まえに。
あともう少しってところで、私とパパは、顔を合わせることができなかった。
ママは、いつもそのことを
パパは、クルマの
でもそれは、
クルマと
ママは、私が生まれてくるのが、ものすごく不安だったらしい。初めての子どもで、ママはそれでなくても心配しいだから。
ちゃんと生まれてくれるかとか、
私からしても心配しすぎって思うくらいだから、パパはずいぶん困ったんじゃないかなぁなんて私は想像するけど、ママが言うには、パパは
ママが言うには、パパはあんまり気にしない男だったらしい。
悪くいえば
小さいころ、私はあるときテレビを見ていて、
そのときまで私は、大人はみんな
なんか、大人になるとみんな自動的に
それで私は、ふと気になって、ママに「なんでママは
そんで、ママはいろいろと長ーい話をしてくれたんだけど……、私は、ママがやたらとうれしそうに話すのが気になっちゃって、その話の内容をほとんど覚えていなかった……。
でもこの言葉は覚えてる。……なんか、言い方があれだなーって思ったから。
「あんまり
やっぱ言い方がちょっとなーって思うけど、ママがうれしそうだったから、そこまで気にならないけどね。あれかも、私もどっちかというと気にならないほうかもしれない。もしかすると私の心は、パパ似なのかも。顔はめっちゃママ似だけどね。
そんなパパだったんだけど、ママといっしょに暮らすうち、心配しいがちょっぴり移っちゃったみたい。
……私が生まれてくるってなって……、……『いないいないばあ』の
そんなわけで、ママとパパは、私が生まれてくるのを、『よしっ、もうこれで
物をそろえたり、
ママのことだから、やりすぎなくらいに、それも、先の先のことまで考えたんだろうなって思う。
そうして、これで
それはベビーカーだった。
……まあ、赤ちゃんが生まれたって、そんなにすぐお
どうしてもそれが気になって、心配になってしまった。
ママはもう、それがどうしても気になって、気になって気になってしょうがなくなっちゃったんだって。
ベビーカーを買わないと、私が生まれてこれないんじゃないか、くらいにママは思ったらしい。ほんとうに心配しすぎ。ママはお守りとか好きだから、それに近いような感じに考えていたのかもしれない。つまり、おまじないみたいに。
いまでもそうだけど、たまにママは
そしてそこで、けっこうな
そんなママだったから、ベビーカーを買わないと、すべてが台無しになってしまうような気がしたのかも。ほかが
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