3
私は家のそばまで寄って、しゃがみこんだ。
するとその
私は、右手の人さし指の腹のところで、そっと、コンクリに触ってみた。
…………ちゃんとプルプルだ……、けっこうプルプルしてる……すごいプルプルしてる……、……見た目よりプルプルだ……、……
あヤバい、強く突っつきすぎたっ……! 私は
コンクリのかたちは
指でなぞって
それになんだか、ちょっといいかもって思ったから。この家を見るたびに、私の
めっちゃかってなことしてるし……、なんか……イヌのマーキングみたいだし……、あれだなーって思うけど……、でもなんだか、この家の人には、自然と元気にあいさつしちゃいそう。ちょっぴりの
まるでおモチを突っついてるみたいな
それを見て、なにかに似てるなーって思った。そのなにかが思いだせなくて、私は、指先を顔に近づけて、じぃーっと見た。自分でわかった、すごい寄り目になってるって、アホみたいな顔になってるって。でも私はそのまま考えつづけた。
……黒ゴマのソフトクリームだ。黒ゴマのソフトクリームだよ。
じっと見れば見るほど、だんだんとコンクリが、黒ゴマソフトに思えてくる。見えてくる。そう感じちゃう。すごいおいしそう。すごい食べたい、黒ゴマソフトが。さすがにコンクリをパクっとはしなかったけど、私の舌は完全に、黒ゴマソフトの舌になってしまった。
そうして、私はこう思った。
ひさしぶりに
あれなんだよ。よく行く
そのお店にはたくさんの種類のアイスがあって、いろいろためしてみた結果、私のなかでは黒ゴマのソフトクリームが最強になった。つまり、黒ゴマソフトは、アイスの王さま。
最初に『黒ゴマソフトクリーム』って文字を見たときは、黒ゴマってなんやねん、ふざけとんのか? って思ったけど、いまじゃそんなふうには思わない。
もしその人に会えたら、
ちなみにママは、カップに入ったイチゴ味のアイスが最強だって言ってる。確かにイチゴのアイスもおいしいけど、最強は言いすぎだって私は思う。
コーンがないのもポイント低めで、私はちょっぴり
なんかまえにいっかい……どっちがおいしいかで、ちょっとケンカっぽいことになったっけ……。でもいまじゃ、それだって楽しかった思い出だな。
でも、どうなんだろ。あんがいほかのみんなも、そんなもんなのかな? まあでも、こまかいことはいいや。いまはまた思うぞんぶん、いろんな動物を見て、黒ゴマソフトを食べてるんだし。
持っていたポケットティッシュで指をきれいにして、私はその場に立ちあがった。
それにしてもあのネコ、どうやってあそこに行ったんだろう……? ……もしかしてあのネコ……ぬいぐるみなんじゃあ……。そう思って私は、
ネコのお腹は、小さくだけど、ちゃんとふくらんだりしぼんだりしていた。ちゃんとネコだった。
ネコは突然、ムニャムニャ寝言を言いはじめた。かわいかった。……けっこうムニャムニャ言ってた。めちゃんこかわいかったっ。すんごいムニャムニャ言ってた……!
でも、そういうわけにもいかないから、私は後ろに振りかえって、前に一歩
そのとき、後ろからなにか聞こえてきた。
「……いくニャ……、……いくニャ~……、……ニャニャすぎる……」
私はくるりとターンして、またネコを見た。
「……もしかして、いま、しゃべった……? ……この子バケネコ?」
私はけっこう長いこと、ファイティングポーズのままネコをじっと見ていたけど、ネコはただ、気持ちよさそうにスースー寝息を立てるだけだった。
平和でいい感じで、なんにも問題ないはずなんだけど……私はなぜか、ちょっぴりしゅんとしちゃった。
私は構えをといて、またまた後ろに振りかえり、とぼとぼ歩きだした。
来たときには気がつかなかったけど、道と家の
でも、この家をつくっている会社の名前だけはわかった。
『たのも
……なんだか『たのも』って、『
だけど、いま思ったけど、私、『
それはいいとして、それから私は、一度家に戻った。
ちょうどお昼だったし、もう私は完全に、チューリップの家を探すのを
……そのうちひょっこり見つかるかもだし……、
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